第22話 魅了……
「……これで全部か?」
「ええ……そのようです」
「うん! もう匂いしない!!」
「よし……」
俺達はあの隊がこの村に到達した痕跡を消していた。
こういう時魔法って便利だな……
いや、リプスの魔法が便利と修正しておこう。
死体は勿論のこと、装備品から、辺りに飛び散った血など諸々……
跡形もなく燃やし尽くすことができるのだから。
あのクズが言っていたように、この村に調査の手が伸びてきたとしても、
痕跡が見つけられない以上、
この村には到達していないという事で落ち着くはずだ。
匂いだってイヴの鼻で捕らえられないんだ。
元の世界でいう警察犬のような存在がいるとしても、無意味だろう。
「レオン様?」
「ん? どうした??」
俺が最終確認のために辺りを見渡していると、リプスから声をかけられた。
見るとなぜかモジモジと身をくねらせながら、頬をほんのり染め近づいてくる。
「その……掃討……終わりましたので……」
「あ……ああ……終わったな?」
リプスがどんどん近づいてくるので、俺は少しのけぞりながら返事をする。
しかし、そんな俺にお構いなしに、リプスは近づくのをやめようとしない。
ジリジリと後退している俺と、それを追従してくるリプス。
ついには、家の壁際に追いやられてしまった……
「御約束通り……褒めていただきたいのですが……」
これ以上後ろに下がることができなくなった俺の胸元に、リプスが
ドンッ!
と飛び込んできた。
これも壁ドンっていうんだろうか?
いや……そんな場合じゃない!
ゼロ距離の位置でリプスが目を艶っぽくウルつかせながら、
期待の眼差しで見上げている。
御約束通り?
そんなこと言ったか……?
言ったなぁ……
確かに言った……俺の記憶にもしっかりと刻まれていた。
ついこの前、リプスもイヴの様に撫でられるようになったと言ったな?
あれはウソだ。
いや……時と場合によると修正しよう。
こんな色気全開で迫られてきて、普通に頭を撫でれるはずがない……
しかし、褒めると宣言した手前やらなければならない。
リプスだって勿論イヴと同様に褒められる働きをしたのだから。
「わ……わかった」
声がひっくり返る自分が情けない……
俺はゼロ距離のリプスの頭上にゆっくりと手をもっていく。
しかし、なぜかリプスはゆっくりと目を閉じた……
…………え?
時が止まる。
頭撫でるんじゃないの?
なんで目を閉じる?
そして、あろうことかリプスはクイッと顎を上げ、
リプスより身長の高い俺に配慮して……って!
これは……”アレ”を期待してんだよな??
俺は自分の頬がヒクヒクと引きつるのがわかった。
その整いすぎた顔や、透き通るような肌……まるで美術品。
フワリと香水のような香りまで漂わせる。
そんな女性が色気全開で俺に”アレ”を望んでいる……
見上げるリプスから視線を逸らすことができない……
魅了の魔法って存在しているんだろうか?
存在しているのであれば……きっとこんな感じで引き込まれていくに違いない……
そして俺の視線はリプスの唇をとらえた。
リップでも塗っているのだろうか?
艶っぽく、淡いピンク色の唇は重なる先を求めている。
もうこのまま……
俺の身体は自然に傾き……リプスの唇を目掛けて……
「――――!!」
「キャッ!!」
まさしく唇と唇が触れ合う寸前の所で俺は気を取り直し、
リプスの両脇に手を入れ込み抱き上げる。
「さ……流石はリプスだな!! よくやったぞ!!!」
自分でも逆に惚れ惚れしてしまいそうなほどの棒読みだ……
それでも俺はお構いなしに、
イヴにした時のように、そのままクルクルと回りながらリプスを褒め称える。
しかし、リプスの表情は、
嬉しさ全開でニコニコと笑っていたイヴの物とは180度違い、
ぶすーっとしながら唇を尖らせている。
「あと少しでしたのに……」
何か聞こえたが、無視しよう……
イヴは勿論だが、リプスをこうやって抱えてみて改めて思うのだが、
女性って軽いよな。
俺の筋力がズバ抜けているというのを抜きにしてもだ。
それにこの両手から伝わる柔らかさ……
女性って柔らかいんだな~……
ん?
柔らかい?
俺は自分の両手を確認する。
”アレ”を回避するためにとっさにイヴの様にリプスを抱き上げたが、
リプスにはイヴとは比べ物にならないほどボリュームのあるおっぱいがある……
結果……俺の両手はサイドから
リプスのおっぱいをモロに持ち上げるようなことになってしまっていた。
ゴクリッ……
思わずのどが鳴った……
なんだこれ!? なんて柔らかい……それでいて弾力があり、
俺の手を押し返そうともする……
俺はいつの間にかその一点に集中してしまい、フニフニと感触を楽しむ。
ハッ!
だめだ!! 今俺完全にリプスのおっぱいに魅了されてしまっていた!!
慌ててリプスの表情に視線を送る。
遅かった……
そこには適度に紅潮し、先程とは打って変わって至福の表情をしたリプスがいた……
しかも、なんだかしてやったりといった表情にも見て取れる……
「レオン様? どうかレオン様の御気が済むまで……そのまま……」
「い……いや……もう結構です……」
俺はひどく丁寧な言葉遣いになりながら、ゆっくりとリプスを降ろす。
「まぁ……もっと触ってくださってよかったですのに……それで?」
「それで?」
「どうでしたか?」
リプスの表情は完全に勝ち誇っている……
どうでしかた? だと??
何がだ?
…………わかりきっているさ。
俺は負けたんだ……いや……勝てる男などいようはずもない……
「結構な御点前でした……」
「フフッ。 レオン様の物ですよ?」
そう言い放つリプスの表情は先程の勝ち誇ったものではない。
少し小首をかしげながら、恥ずかしそうに頬を染め……
嬉しそうに微笑みながら、
くるりと後ろを向くとスタスタとイヴの方へと歩いて行ってしまった。
かなわないな……
イヴにしてもリプスにしても……とても魅力的だ。
それぞれ全く別の魅力を持った2人。
改めて俺のパートナーがこの2人で良かったなと、心からそう思えた。
「レオン様~」
「レオン様!」
村の広場の中心で2人が嬉しそうに俺を呼んでいる。
「ああ! 今行く!!」
さて……村の皆に声かけてやらないとな。
俺は2人へとゆっくりと歩みを進めるのだった。
――――――――――
あとがき
お待たせしました。
不定期更新のため、お待たせする場合も多いと思います。
何卒御容赦ください。
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