第15話 コーヒーブレイク
コポコポコポコポ…………
サイフォンから発せられる優しい音と、コーヒーの香りが心をリラックスさせてくれる。
そう、ここはリリスの店だ。
俺はカウンターに腰かけてコーヒーが出てくるのを待っている。
後ろに目をやると、リプスとイヴは疲れたようで、クラシカルなソファに座り、
お互いにもたれあいスウスウと寝息を立てていた。
「剣と銃も疲れて眠るんだな……」
俺がボソリともらしたこの呟きはリリスの耳に届いたらしい。
「本当にね……もう2人はウチにある商品達の枠を超えて、本当の意味で”2人”になってる。私の知識ですら、もう計ることが出来ないのかもしれないね」
そう話すリリスの表情は、嬉しそうでもあり、どこか寂しそうな……
母親や姉……そんな温かみのある表情を2人に向けている……
わずかだが、俺にはそう感じとることが出来た。
「レオン君は疲れて眠くなったりはしてないのかい?」
「ん?」
そう言いながらリリスはあの見事なカップを俺の目の前に置き、
出来上がったコーヒーをカップに注いでくれる。
俺はそのカップを一度顔に近づけて香りを楽しむ。
「良い香りだ」
「それはどうも」
リリスは自分の分も入れ終ると、俺の横の席へと腰かける。
「今の所、疲労感や、眠気……そんな物は感じないな……」
俺はコーヒーを口に含む。
この前とまた違う豆か? 鼻に抜けてくる香りの強さがまえと違う気がする。
「焙煎のやり方をちょっと変えてみたんだ」
俺の反応から推測したリリスが前かがみになりながら俺の顔を真横から覗き込んで来た。
………美人だよな……本当に。
それなのにカワイイしぐさって反則じゃないか?
昔の俺ならば、ここで赤面してしどろもどろになっただろうが、
ゲーム内のレオンと融合した今の俺はこの程度で動じることはない様だ。
「色々奥が深いんだな……これも美味しいよ」
「フフッ。 ありがとう。 励みになるよ」
俺の感想を聞き、リリスはご満悦だ。
「レオン君の今の身体は……神と悪魔の混血だったっけ?」
「そうらしいな……」
俺は”ルクスオブダーク”のプロローグの文章を思い出す。
「本当に大層な身体になったもんだ……」
「眠るって……どんな感じなんだろうね」
「なんだ? リリスは眠らないのか?」
「ん~……なんていうのかな……目をつぶって意識が無い時間はあるんだけど……その間も休んでいるって感覚がなくてね……ごめんよ。 あんまりうまく説明できそうにない」
明確な言葉が見つからずリリスはやきもきしている。
そして俺も”眠る”ことを明確に表現できる自信がなく、お互いに黙ってしまった。
「ごめんごめん。私の話ばかりになってしまって」
リリスはあのお決まりのポーズを俺に向けている。
「それで? こんなにも早くここに戻ってきてくれて……いや、いいんだけどね? コーヒー飲みに来るだけでもうれしいけど。なにかあったのかい? 顔を見るのはもう少し先かな? と勝手に思ってたものだから」
俺はその言葉に促され、アレアと別れた後のことをリリスに向かって話し始めるのだった。
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