「立場」5話

 次の瞬間。


 彼女の希望は絶望に、王子の喜びは落胆へと変った。


 「この人に間違いない。」王子は確信していた。


 「そうよ王子様、私なの。」シンデレラはソレを証明しようとした。


 しかし、シンデレラは「硝子の靴」を履く事が出来なかった。


 王子もシンデレラも唖然とした。


 シンデレラの足は、腫れ、ムクんでいた。


 昨晩、階段を駆け下りる時。靴が脱げた時、少し挫いてしまった。


 長時間、列に並んでいたので更に足に負担が掛かった。


 その結果、彼女の足は「硝子の靴」に合わなくなっていた。


 元々はオーダーメイド。少しだけ無理をすれば、履けなくもなかった。


 しかし、審査は厳格に行われていた。宰相に国軍騎士団長、国教大司祭が立ち会っていた。

 コレまでも、微妙な判定が幾つかあった。際どいモノがあった。並んだ列から見ていて、シンデレラ自身、ハラハラした。


 だが審査は厳格に行われた、気立ての良い娘は何人も居た、容姿の綺麗な娘も。

 王子も迷った様子が見て取れたが、最後は靴が決め手となった。


 もはや、私事で物事を押し通せる状態ではなかった。


 現状では国の重鎮達、そして、この広場に集まった女性達全てが納得しないだろう。

 

 日が暮れ、その日のシンデレラ探しは終わった。


 広場に集まった多くの女性、家族が不満げに家路に着いた。


 シンデレラはただ独り、涙を堪え拳を握り締め最後まで王子の馬車の列を見送った。

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