その6 ちゃっくんぽっぷ

1985年に69タイトル、1986年に86タイトルを発売したファミコン。おもちゃ屋がゲーム機の販売に俄然力を入れだしたのに少し遅れ、私の街にも中古ファミコンショップ(または中古取り扱いコーナー)ができ始め、いよいよ私のゲームライフも花開こうとしていた。


ファミコン版の『ちゃっくんぽっぷ』はタイトーから1985年5月24日に発売されたが、私は翌年にプレイした。これは中古屋で手に入れた。


当時の中古ショップはまだ販売タイトルがそこまで多くないせいか、独特の販売体制を持つ店があった。中でも記憶に残っているのが交換制である。ゲームにAからEくらいまでのランクがついており、手持ちタイトルより下のランクのソフトなら在庫があれば追加金なしで交換可能、同じランクならいくらかお金を足すことで交換可能、上のランクならさらにお金を積むかソフトをもう1本足す……というような仕組みである。これなら店の在庫本数自体は減らないので、なかなか面白いシステムだ。もちろんお金だけでも売ってくれたが。


この仕組みは私の地域では80年代のうちに綺麗さっぱり消え去った。発売タイトルが増え、単にお金でやり取りするほうが儲かったのだろう。もしまだやっている店があったら教えてほしい。


さて、そんな仕組みを利用してなぜだか『ちゃっくんぽっぷ』を手に入れてしまった(何を差し出したか覚えていないが)。しかしこれもまたアーケード発祥(1984年)のやや地味なゲームであり、私はあまりやり込まなかった。ただ、このタイトルだ。当時としては異色だろう。ネットもない時代、一体何者なのかやらなきゃわからないのなら、中古でならやってみるか、という気にもなるだろう?


「ちゃっくん」「もんすた」「まいた」というネーミング、そして丸っこいフォルムとポップな色使い。どこかバブル時代(の少し前)のセンスをゲームに投影した、今思えばそんな香りがするように思う。


ちゃっくんぽっぷは、小さく狭い空間で天井に張り付いて跳んだり歩いたりしつつちまちまと動いて、爆弾(正しくはその爆煙)を使ってもんすたを排除したり牢屋に囚われているハート(本当にただのハートマーク)を開放していく。するとハートが煉瓦の壁を壊してくれるので、出口が時間経過で塞がれる前に画面上部に脱出するとステージクリアというルールだ。


私は当時はいまいちよくわからないゲームだなと思っていた。いやだってさ、爆弾で壁壊すんじゃなくて、ハートを爆煙で助けて(?)それが壁を壊すんですよ。何言ってるかわかんないでしょ。さすがの私も想像力が追いつかない。


当時の固定画面のアクションゲームは重力があるなしの概念がバラバラで、このゲームはある系。何しろ、ちゃっくんは天井に貼り付けるのだから(すごく狭いので天井という感じはあまりしないが、とにかく逆向きになれる)。似たような固定画面系で、『クルクルランド』『倉庫番』は縦横無尽に動ける。『フラッピー』は押して動かす石には重力があるが主人公は障害物さえなければ上下左右どこにでも動ける、と中途半端でフラッピーはなんか苦手だった。


と考えれば、『スーパーマリオブラザーズ』はどんどんスクロールするし、重力的な辻褄もうまく表現できているし、そりゃ広く受け入れられますよね、という感じがする。マリオがキノコを投げて牢屋の星印を救助してその星が壁を壊すことでゴールに進めるというゲームでなくて本当に良かった。

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