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「三井みさと、十八歳! 幼少期より陸上をやっておりますので脚力には自信があります! 持久力もあるつもりです! 一方学力は高くありませんが誰とでも仲良くなれると自負しております! えへへ、長嶺さんは陸上はお好きですか!」

 おうおう……。

 捲し立てるような勢いの情報量が、頭を混乱させる。

 ひとまず、

「かしこまらなくて大丈夫です」

 と言ってみると、対照的に破顔するので、やられた。

「助かります!」

 緩めた頬をそのままに、結局かしこまったまま、みさとちゃんは言った。

「えーっと、陸上が、なんだって?」

「長距離走をやってます! 陸上はお好きですか!」

 おうおう……。

「えーっと、まあ、はい。速かったりはしないけど、嫌いではないです」あまり走ること自体していないから、なんとも言えなかったが、彼女が微笑んだのでよしとする。「いつからですか?」

「三歳の頃からです、逆に言うとこれしか取り柄がないと言っても過言ではないくらい熱中して取り組んできました!」

 おうおう……。

 三歳から陸上、と書き足す。

 あと、とにかく元気。

「ええと、そうだなあ」

 聞く前からいろいろと話してくれたので、何を話そうか迷ってしまった。これではどちらが受験生かわかったものではない。

 おろろろろ。

「長嶺さんは、女の子らしい方が好きですか?」

 不意にしおらしく、そんなことを言う。

 こうした爛漫な女の子がしょんぼりするのは、応える。

「いや、そんなことは……」

「よかったぁ……」

 口元に両手を添え、長く吐息を落とす。

 よく見ると震えている。強がりだった。虚栄だった。

「残り二分」

 御子野瀬さんが呟く。彼とて、彼女の様子には目がいっただろう。

「僕と結婚したら……」何してくれます?「一緒に走りましょうね」

 言って、自分で驚いた。

 あれ、と思った。

「はい!」

 にこり。

 なるほど。

 案外、こういうタイプに弱いのかもしれない。

 リラックスしたみさとちゃんは、あと少し残した試験時間も気にせず、弛緩しきっているようだった。

 ま、そもそも積極的である必要はない。たぶん、お互いに。大体が初対面から一週間後には結婚だなんて話がおかしなもので、もちろんお互いに関しては徐々に明るくなっていくのだろうけど、好みというものもあろう。全員が途端に僕を好きになるわけでもなかろうし、無理をする必要はないのだ。

 そして時間切れを迎えると、

「ありがとうございました!」

 最初のとおり元気になったみさとちゃんが、勢い良く頭を下げた。

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