3
「それじゃあさっそく、最初の試験内容の説明を始めるわね」
御子野瀬さんと立ち位置を代わって、又野さんが教師らしく教壇から声を投げる。
僕は後ろを振り返って女の子たちを観察できるわけもなく、緊張で膨れ上がる吐き気を何とか抑えようと必死だった。
「まずはみんなには、試験として長嶺くんと会話をしてもらいます。そこで自己紹介を行ってもらう形ね。いや、しなくてもいいけど、必然とそうなると思う。制限時間は五分間、その間なら何を話してもいいわ。家族のこと、趣味のこと、理想とか、将来のこと……。ともかく自分を存分にアピールしてちょうだいね」
又野さんが言葉を区切り、首を傾げるようにして微笑んだ。
一方僕は、緊張により頭がろくに機能せず、混乱している。
会話?
話すだけ?
確かに僕は今のところ彼女たちについて何も情報がない。十八歳、高校三年生の、女の子。それくらいしか知らない。
と言っても、話すだけ?
試験というからもっと仰々しい、例えば「長嶺くんのいいところを一時間以内に四百字詰め原稿用紙四枚のレポートとして提出」とかそんな、もっと、こう、僕がフィーチャーされるような、そんな……。
などと考えていると、
「長嶺くんにはその五分間の会話から判断してもらって、今いる十人を、七人に選別してもらいます。つまりこの最初の試験、五掛ける十のたった五十分で、三人とはお別れです」
又野さんはさらりと言った。
梅酒よりさらりとしてる。飲んだことないけれど。
しかし、えー。
たった五分間の会話で、七人に?
ええー。
「長嶺くん。ここに来たからには、よろしくね。君の判断を私たちに覆すことは出来ないけど、せめて納得できるように」
背後からメラメラと火が飛んできそうな重圧。
えええー。
とても振り向けない。
こんなもので三人も不合格にしなければならないなんて。
うええええー。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます