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 十人の女の子は、それぞれに宛がわれたらしい机の前に立っていた。前で手を組むもの、直立不動のもの、すでに悩殺ものの笑顔をくれるもの。十人十色とはまさにこのこと、きらびやかな世界に足を踏み込んだような至福の一瞬を、今まさに手にした。そんな浮ついた心地。

 御子野瀬さんと小路さんから、これからの簡単な説明がもたらされるが、頭に入らない。

 女の子たちの顔を直視することもできず、あたふた視線をさ迷わせていると、

「じゃあ、長嶺くん、自己紹介」

 すっかり話し終わったのか、先生のような口調でそう言われる。

 慌てて、

「長嶺零斗です。おにゃがいしゃしゅ!」

 宣言する。

 が。

 うーん、駄目だこれは。

 思いつつもまた一方では、でも、だって、女の子とまともに話すなんて、そんな、恐ろしく、ふしだらな……、ね、仕方ないですよ、ねえ……。

 と、脳内で言い訳を続けていた。

 沈黙。

「うん。はい、それじゃあ、長嶺くんはそこの、一番前の席に座って」そう言って示されたのは、五つずつに二列並んだ女生徒用の机からひとつ抜きん出た位置にあるものだ。「みんなも、座って」

 がたがたと椅子が鳴り、高校生は高校生らしく着席する。

「じゃあ、そんなわけで、これから一週間を予定した卒業認定試験を始めます。みんなは長嶺くんに選ばれるよう、惜しみなく精一杯の努力をしてください」

 御子野瀬さんの視線は、娘を持つ親のものらしく、少々哀れみを含んでいるように見えた。そう見えただけで、若輩者の僕にはそこに含まれる真意はわからない。

 背後で、わっと闘志が燃えるような気配が起こる。

 十人の女の子から、僕が卒業できる唯一の人物を選ぶ。

 その事実を、改めて考えてみる。

 そうですね、胃が捩れそう。

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