理由

クラスメイトから大山に対する質問タイムは時間いっぱい使われた。

大山は丁寧に全ての質問に答えて行ったが、大山を気に入らなかったのだろうかクラスの問題児と呼ばれる羽山はやまがこう質問した。

「何で転入してきたんですかぁ〜?」

羽山の取り巻きがくすくすと笑う。

他のクラスメイトも「確かに」とざわめいた。

「…それは、」

大山が言葉を詰まらせる。

「何か答えられない理由でもあるんですかぁ?」

「やめなさいよ」

口を開いたのは柑菜。

柑菜の優等生発言に腹を立てた羽山は柑菜に向き直った。

「黙れ、猫かぶり女が」

中学生に良くある口喧嘩。

「やめろ、羽山」

柑菜と口喧嘩になったところで羽山に勝ち目は無かった。

「お前は黙ってろ、生徒会長」

「…はぁ、カンナもやめとけよ。

大山も答えずらいなら答えなくていい」

「でも、転入理由って普通言うよね?

馬原も言ってたし」

馬原まはらは二年生の頃に転入してきた男子生徒だ。

「え、うん…

いつもそうだったし」

馬原の父親は仕事の関係上転勤が多いらしく、転入を繰り返していたらしい。

今はこの街で落ち着いているらしいが。

「…俺、」

大山が口を開いた。

先程までとは打って変わって低く暗い声だった。

「前の学校で」

「大山、言わなくても」

大山は棗の言葉を無視して言葉を続けた。

「ホモだって噂されて虐められて、それで…」

自分だけ引っ越してきた、と。

一斉に引くクラスメイト達。

「それは事実なの?」

恐る恐る柑菜が問い掛けた。

小さく頷く大山。

「気持ち悪い」

そう羽山は呟いた。

その言葉を聞いて大山は教室を飛び出して行った。

誰も追いかけようとはしなかった。

静まり返った教室に羽山の笑い声が響いた。

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