転入生

暫く棗を眺めていると始業のベルが校内に鳴り響いた。

ガタガタ、と音を立てて皆が席に着く。

全員が席に着いたと同時に古い扉が開く。

いつも通りのやる気のなさが感じられる担任が教室へ足を踏み入れた。

皆の視線は担任の後ろに着いて入ってくる見たこともない制服に身を包んだ少年に釘付けだ。

ふと前を見ると柑菜もその一人だった。

「おーし、転入生だ」

担任の一声に転入生は笑った。

「転入してきました、大山南朋おおやまなおです。

よろしくお願いします」

大山南朋と名乗った転入生は世間に言う美少年。

「んじゃー、親睦を深める為に質問タイム。

一限丸々やっから勝手にしろ。

んで、今日の連絡は……」

そんな担任の話なんて誰も聞いてやしない。

そんなことよりも転入生だ、と皆の目が語っている。

担任も呆れたように溜息を吐いた。

「大山の席は笹倉の隣。

笹倉手ぇあげろ」

俺か、そう思い手を挙げた。

「これは全部ユウに押し付けるチャンス…?」

後ろから聞こえた棗の声に小さく「ばあか」と。

棗は ちぇ、と不貞腐ふてくされた。

「ええと…笹倉くん?

よろしくね」

そう笑う転入生、いや、大山。

「よろしく。

笹倉で良いよ」

転入理由は知らされなかった。

何があったのだろうか。まぁ、そういう詮索は良くない。

「笹倉…、うん。

俺のことも大山って呼んでね」

取り敢えず大山の第一印象はイケメンで、人懐こい印象だった。

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