第2話 大塚さん語る! 編集長しゃべる! 沢木さん焦る!

 会場入りすると、そこは非常に綺麗なオフィスでした。

 まずは座席確保をして、腰を落ち着けると入口付近で参加者の皆さんが列を作って何やら書面に記入を行っています。

 どうやら第二部で行われるユーザー交流会で題材として扱われる、参加者個々のカクヨムにおけるお気に入りの作品を記入しているようです。


(※交流会でのテーマとなりますので、1人1作品、カクヨムでお気に入りの作品タイトルを考えて、ご参加ください)


 それが今回の当選メールに記載されていた参加者へのいわゆる宿題でした。

 もちろん私も事前に用意していたホラー・ランキング上位の某作品を記入。

 それから席に着こうとしたところ、入口付近の大きなテーブルに、何やら文庫本や新書サイズの書籍が置かれています。

 んん?

 何だろか?

 そう思ってテーブルに目を落とすと、それらはカクヨムで書籍化された作品群でした。

 おおお。

 非常に気になる。

 手に取りたい。

 パラパラとページをめくりたい。

 だけど勝手に読んだら怒られるだろうか。

 チラッとその場にいるスタッフに目を向けると、彼らの顔にはこう書いてありました。


「お手を触れないで下さい(ニコッ)」


 すみません。

 私のただの思い込みです。

 そんなことスタッフの皆さんはカケラも思ってないと思います。 

 とりあえずその場では手を触れずにおきました。

 まあ、買えよって話ですね。

 


 その後、席についた私は開始時刻の午後2時までの数分間、最初にカクヨムボールペンや水と一緒に手渡されたアンケート用紙にシコシコ記入をして時間を過ごしました。

 こういうのって先に書けるところは書いておかないと、後で書く時間なくなるのは目に見えてるもんね。

 そう思いながら、ある程度記入をしてふと顔を上げると、参加者の皆さんもほぼ出揃いまして、席は埋まりつつありました。

 さっき受付で参加名簿をチラリと見たところ、数名の方が欠席の届出をされていたようですが、それでもザッと見たところ30名以上の方がいらっしゃいましたね。

 女性の方が5~6名くらいで、あとは男性の方でしたね。

 年齢層は20~40代くらいでしょうか。

 私はオールドグループのほうでした。



 そしていよいよ午後2時を迎え、ミーティングがスタート。

 司会進行役の女性・沢木さん(仮名)がマイクを持ちまして本日のトークショーをしていただくお二方をご紹介下さいました。

 第一部のトークショーでお話しいただくのは営業の大塚さんとカクヨム編集長の萩原さんのお二人でした。

 非常に軽妙なトークを繰り広げるお二人。

 まずはご自身の経歴や今まで担当した作品などをご紹介されていました。

 ちなみに大塚さんは元書店員さんで、「日本一ラノベを売る男」と呼ばれた豪傑です。

 やがて大塚さんは「世界一ラノベを売る男」に昇格し、最終的には「宇宙一ラノベを売る男」にまで上り詰めたそうです。

 すげえ。

 宇宙一って。

 フリーザ様かよ。

 そのフリーザ様、じゃなくて大塚さんの言葉がとても印象深かったです。


「読者は書店に【買わない理由】を探しに来ている」


 これ、まさに私です。

 本屋さん好きなのに、見るだけ見て結局なにも買わないで出て来ること多いですし。

 書店を回ってると気になる本はたくさんあるけれど、それを全部買うなんて無理ですし、とても読み切れません。

 だから「ああ。この本は少し気になるけど、この箇所が好みじゃないから買わなくて正解だな」って自分に言い聞かせて、あきらめる作業を無意識にやってるんですよね。



 こういう私みたいなお客にどう本を手に取ってもらい、どう買ってもらうかということで、編集側はとにかくタイトル、表紙(絵)、帯のキャッチコピーに頭を悩ませ、書店側はPOP(Pop Of Purchase)に力を入れる、という話が展開されていきました。



 なるほど。

 これはカクヨムにも言えることだな。

 萩原編集長も仰ってましたが、カクヨムの場合、本と違って絵がないため、キャッチコピーとタイトルでまずは読者にクリックしてもらい、それからあらすじを見て何か引っかかりを持たせることに注力すると良いとのこと。

 これを聞いてもう一度自分の作品のキャッチコピーやあらすじを見直してみようという気になりました。



 ここではカクヨムのレビュー機能の話は出なかったのですが、レビュー機能にも重要な役割があると思います。

 たとえば私、本屋で見つけた本を、第一印象のみを頼りにその場で買うことはしません。

 気になる印象のものがあれば、その日は帰り、ネットでその作品情報をリサーチします。

 最初の印象だけで決めるのはリスキーですし、それによって後に味わう「失敗したなぁ」のガッカリ感は半端じゃないですからね。

 旅先で出会った女は綺麗に見えるもんなんだよ(何の話だ)。



 まあ冗談はさておき、たとえば本に限らず物を買うときに事前リサーチをする人は少なくないと思います。

 ネットの口コミなんかを複数の角度から見て、自分なりの事前評価を決めておく。

 そしてとにかく買うと決めたら迷わず買う。

 だから実際に買うときはアレコレ迷わずに済むし、仮にそれで失敗だったとしても「あれだけ吟味したんだから仕方ない」とあきらめがつきます。

 カクヨムでそうした事前リサーチのために必要ないわゆる「売り手(書き手)ではない他者の声」がレビューにあたるわけで、このレビューをもっと積極的に書いてもらえるような仕組み作りが欲しいです。

 そうした観点から今後もカクヨムの機能を強化していっていただけたらありがたいですね。



 ちなみに萩原編集長は作家さんに対して「【この作品はここが面白い!】ということを売りにして進めていきたいので、そのポイントだけは外さないで下さい。後は好きに書いて下さい」ということを伝えることがあるそうです。

【ここが面白い!】ということを端的に伝えられる作品はキャッチコピーもつけやすく、必然的に面白さも伝わりやすい。

 逆にそこがボヤッとしていると作品全体がボヤッとしてしまうとのこと。

 納得です。



 このように話が盛り上がっていき、参加者さんの笑い声も巻き起こるなど楽しい時間でした。

 しかしこの場においてただ一人、時計の針を気にしながらヤキモキされている女性がいらっしゃいました。

 司会進行役の沢木(仮名)さんです。


「ちょっとアンタたち。盛り上がってるのは結構ですけど、時間は無限じゃないのよ? いい加減にその辺をアタマに入れて喋りなさいよね!」


 とばかりにタイムキーパー役の沢木さん(仮名)が無言のプレッシャーをかけてきます。

(セリフは私の妄想であって実際の発言とは何ら関係ありません)



 沢木さん(仮名)のむち入れによってスケジュールは進み、その後の質疑応答を経て第一部は5~10分押しほどで時間終了となりました。

 質疑応答も参加者の皆さんより積極的に手が上がり、私はノロノロと質問を頭の中でまとめているうちに時間切れとなりました。



 う~む。

 楽しい時間ほど早く過ぎ去るのは世の常か。

 ただ、今回は実際の書店において本を手に取ってもらう話がメインでした。

 私としてはもう少し話をカクヨムに絞って、どのように読んでもらうか、実際にPVが増えた事例なども具体的に聞きたかったので、その辺りは少々残念でした。


 第二部へ続く。

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