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『ちょっと、ゆきも羊介くん狙いなのぉ?』

『そ。でも、らむもでしょ? この子に決めたって聞こえてたし』

『え、聞こえてた?』

『ってか、聞こえてなくても、あの三人なら羊介しかないっしょ。今日はあの子で決まり』

『えー。まぁ、いっかぁ。ゆきとも初めてってわけじゃないし』

 席替えの前に行った手洗い会議で、らむとは既に話を付けてある。今日は合同戦だ。

「今度らむを連れて行って欲しいなぁ」

「え、う、うん。いいよ」

「えー私も行きたいし! ね、良いでしょ?」

 疑問形で覗き込みながら、自然に胸を寄せていっそう谷間を深くする。狙った男は逃さない、Hカップ魔法の谷間だ。

「う、うううん」

 ぷしゅぅ、と音がしそうなくらい顔を赤くすると、羊介は照れ隠しのように皿の上に置いてあったチキン南蛮を口に放り込んだ。

「あ」

 急いで入れたそれに付いていた白濁のソースが、羊介の唇を汚した。

「仕方ないね」

 それを拭ってやると、これ見よがしに目の前で汚れた指を舐めてやった。本当はそのまま食ってやっても良かったんだけれど。

 そのあと少しだけ不機嫌そうに、らむが羊介の唇を紙ナプキンで拭いてやっていた。


「それじゃぁ、この後は各自自由ってことで」

 山元くんがみんなに声を掛けると、「じゃ、行こうか」と頭を掻きながら傍で囁いてくれた。今日の合コンは大成功だ。初めて取引先で見掛けてから、こうして傍で歩くことを夢見ていた。どうにか合コンまでこぎつけて、絶対に山元くんが見初めないであろう人物をピックアップして、大切にしていた勝負下着を身に着けてきた。ありがとうビッチ共。そっちはそっちで二人とも上手く行ったみたいだし、良かったよね。誤算だったのは野村くんが一人さみしく駅へ向かった事だろうか。二人に見向きもされてなかったし。

「この後、どうする?」

「ん…もう少しだけ、飲みたいかな」

「今日、時間は大丈夫?」

 山元くんはいつだって紳士だ。いつもそうやって相手のことを気にかけてくれる優しい人だ。

 でも、その答えはずっと前から決まっている。

「朝まで、大丈夫だから…」

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