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 チェリーでも遊び人でもなさそうな山元を、らむはターゲットから外した。

 残るは二人。ゆきの正面に座る野村のむらと名乗ったのは、日サロにでも通っているのか冬なのに焼けた肌を白いVネックのシャツから覗かせている、遊び人風の男だった。ビールを力強く煽り、「オレ、イケてるだろ!」とでも言いたげにドヤ顔で話してくる。正直タイプじゃない。遊び人は後腐れなく出来るけど、こーゆータイプはダメだ。一回ヤッたくらいで彼氏面してくるタイプだ。

「こいつもないなぁ」

 小さく零すと、らむは正面の男に視線を戻した。シャツをしっかり上まで留めて、落ち着いたブルーのカーディガンを羽織っている、丸メガネの男だ。おとなしそうで、いかにもチェリーくさい。確か名前は黒山くろやま 羊介ようすけ。なかなかに良い。“羊介”と言う名前も、らむと言う自分の名前に同じようなものを感じる。

「この子に決めた」

 にっこりと笑うと、膝に肘を置いて腕を組むようにして少し屈んで羊介を見上げた。少し低めの机は、自らの武器を使うにはもってこいだ。この角度なら、羊介には最高の眺めを提供できているだろう。見るがいい、このFカップの谷間最高の眺めを。

「ねーえ、羊介くんはぁ、いつもお休みの日は何してるのぉ?」

 おっとりとした話し方は元々だ。鈍間だとバカにされることもあるが、男には効果抜群だ。

「え、ええ、えと、映画を見たり、買い物に行ったりかな」

「へぇ~、らむも映画とか好きなんだぁ」

 羊介は顔をほのかに赤らめると、視線を逸らしてビールを煽った。

キタ。

 らむはここぞとばかりに鍛え上げてきた可愛い表情をして

「最近は何が面白かったのぉ? らむ、お話聞きたいなぁ」

 と舌足らずに話した。


「へぇ、あそこにあの店移転したんだ」

 席替えをチャンスとばかりに、急いで羊介の横に滑り込んだ。目の前に座っていた野村は、目に見えて残念そうな顔をしたが、仕方ないお前はお呼びじゃないんだ。

「うん。八木さんもあの店好きなんだね」

 今だ目のやり場に困っているようにキョロキョロと視線を泳がす羊介は、なかなかに可愛い。ぴったりとくっ付いたわけではないが、自信のある大きな胸はすりすりと羊介の腕に当たる距離に座っている。もちろん、膝は常時羊介の太ももに当たる様に座っているが。

「らむ、そのお店分かんなぁい」

 ゆきとは正反対のように、らむは惜しげもなく武器の谷間を羊介に見せびらかしている。らむとは羊介を挟むようにして席に着いた。

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