【三題噺】そうしょく? にくしょく?

カゲトモ

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「ねーぇ、今日ってどんな男の子がくるのぉ?」

 寒々しい冬の夜空の下、ファーのついたコートの下はVネックがざっくりとあられもなく開いた桃色のセーターに、短いフレアのスカートから艶めかしい薄手のタイツを纏ったやや肉付きのよい脚を伸ばして、ふわふわとしたロングヘアーを靡かせながら日辻ひつじ らむが訊いた。

「久しぶりに梨香りかから連絡が来たんだもん。驚いちゃった」

 丸い瞳をさらに開いて、らむは驚いたかのように見せた。

 合コンだって言ったらすぐに飛んできたくせに。表情にはおくびにも出さず、らむを呼び寄せた合コン主催者の梨香は心の中でベッと舌を出した。

「本当本当。でも友達の梨香の頼みなら来ないわけないよね」

 落ち着いた声が、らむとは逆の方から聞こえてきた。

「ごめんね、急に連絡して」

「いいって、どうせ暇してるし」

 短くて艶のある黒髪の八木やぎ ゆきだ。らむとは正反対のボーイッシュな姿だが、モスグリーンのコートの下はピッタリとした素材の洋服で、スレンダーな身体のラインに似合わない大きなバストを強調している。合皮素材のショートパンツからは醜くなり過ぎない網目のタイツに、切れ長な瞳と唇に引いた真っ赤なリップが良く似合う。

「来てくれてありがとう」

 普遍的なヘアスタイル、普遍的なボディ、普遍的なファッション。清楚系の膝丈ワンピースを揺らして微笑んだ。この二人より突起しているものは無いとしても、普遍的な良さが自分にはあるはずだと、梨香は思っていた。

 だからこそ、今日この二人を呼んだのだ。今日の合コン、必ず成功して見せる!

 梨香は白い息を吐いて二人の腕を抱くと、勢いよく足を踏み出した。


「それじゃぁかんぱーい」

 男性の主催者がグラスを掲げて音頭を取った。彼は山元やまもとと言うらしい。入店の時からの梨香の表情や態度を見ると、梨香も山元もお互い気があるようだ。どうやら、今回の合コンは本当に人数合わせだったらしい。お互いに気があるなら、こんな遠回りをしないで勝手に連絡を取ればいいのに。もしかしたら私たちがちょっかいを出すかもしれないとは考えなかったのだろうか。まぁ、山元みたいなのは面倒くさそうだからいいんだけど。

 らむはじぃっと山元を見ると、他人が分かるかどうかの皮肉を込めた笑みを零した。

 山元はどこにでもいるような、普通の感じの良い青年だ。短い髪も、人当たりの良い話し方や笑い方も。そして、梨香に微笑まれて照れるその表情も。普通過ぎて面白くない。

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