第147話 ゲーム脳はいけませんか?

 イアゾアに驚きながらもなんとか勇者の後について行ったドリス


「・・・・くそう、上から見張られてるんじゃ動けねえ」


「ナンカ、言ッタ?」


「いや、別に。オホホホ…はぁ・・・」


 領地に入ると勇者は号令を出した


「では、緑の札を持ってる方はあちらの人のところまで行ってくださーい」


 ドリスは首を傾げた


「札ぁ?札なんて貰ってねぇーぞ!」


「持ってない人はそのままついて来てくださーい」


 緑の札を持った移民達は勇者の幻影で緑にマーキングされたトーマスの元に集まった


「こっちこっち! グリーンチームは農作業に当たってもらうぞー!」


 勇者は再び号令を出した


「次、赤の札の方はあっちの人の所に向かってくださーい」


 赤の札を持った移民は勇者の幻影で赤にマーキングされた傷だらけで工具を持っているアッシュの元に集まった


「生産系のスキルが有る方は俺のところに集まってください! 足りない道具だらけだから仕事は満載だ! 今日中に寝床を作らなきゃ俺たち野宿だから早く来てくれ!」


 勇者の号令


「青の札を持った人はあちらへ」


 青の札を持った移民達は勇者の幻影で青にマーキングされたボランを見てたじろいだ


「フハハハ!良く集まったな人間共! ・・・・って、おい待て!逃げるんじゃねえ! 貴様らは戦闘要員だ! 逃げられると思うなよ!」


 青の札を持った移民達はボランと他のハイエナ達に包囲された。ドリスは怯えている


「なんか・・・、先に進むにつれて対応する人間のガラが悪くなってきているような気がするんだが」


 勇者の号令


「札を持っていない人は屋敷の中へどうぞー」


「俺達だけ屋内だと!?」


 ドリスは ”なんだ? 誰も見てない所で処刑する気か?” と怯えながらも勇者の屋敷に移動したのだが・・・


「けっ! やっとかよ」


「待たせやがって」


・・・周りの移民の態度に気づいて ”残った連中もガラが悪いなおい!?” と思いながらもドリスは屋敷で固まった。集まった移民達に勇者は言った


「よく集まってくれました。ではスキルチェック行きます」


「スキルチェック!?」


 驚いたドリスに注目が集まった


「どうしました?」


「え、えっと、スキルチェックはいいって話じゃ・・・・」


「あそこでスキルチェックを使うと記録が残り情報が筒抜けになるので、怪しくても手元に残しておきたい人物は適当な理由付けて避けてとシンシアさんに言われまして」


 ドリスは ”あのメイドか” とツイストダガーを持ち拷問を仕掛けて来たシンシアの姿を思い出していた。勇者は水晶球を取り出した


「では早速貴女から」


 勇者は怪しい笑みを浮かべている。ドリスは ”やべえ” と怯えた


「いきなり俺かッ…ですの!」


「はい、貴女のスキルが一番気になってましたから。あまり力まないでくださいね、

ちょっと良い水晶らしいので使いすぎるとその人の過去まで見えちゃうそうですから」


 ドリスは勇者の言葉を聞いて ”なおさらヤベェ” と身構えた


「いや、俺はけっこうで・・・」


「まあ、そう言わずに」


 勇者の水晶球を押し当てようとした!


「くっ!」


 だがドリスに躱された


「やりますね」


 勇者の水晶球での攻撃!


「うおぅ!」


 ドリスは勇者の攻撃を躱した


「ちっ・・・」


「今舌打ちしたろ! てか、今完全に殴りにかかって来たよな!頭を潰す気か…なんですの!?」


「はは、すみません、身のこなしが良かったのでつい。次はもう少し本気出します」


「謝るくらいなら手加減しろ!!」


 勇者のヘビーアタック! 重量を増した水晶球がドリスに襲い掛かる


「これで!」


 ドリスは勇者の腕を受け止め、水晶球を奪った


「甘いわぁあ!」


 ドリスは ”チャンス! これでこの勇者の影武者の情報を引き出してから逃走してやる!!” と判断し勇者に殴りかかった


「えい」


 勇者はドリスの腕を掴んで受け止め水晶球を奪おうとした


「ごぉ・・・のおぉお!!」


 だが力は拮抗し互いに譲らない


「なかなかやりますね」


「やられたらやり返す主義ですの、おほほ…。くたばれ!!」


 ドリスは水晶球をもぎ取り勇者から離れ、投げつけた


「ブゥン!」


 カウンター、勇者は受け止め水晶球を投げ返した


「ふん」


「せりゃ!」


 ドリスは投げ返された水晶球を受け止め投げ返す、そしてまた勇者は水晶球を受け止め投げ返しドンドン加速していく


「この程度のラリーは何度も経験済み! そう簡単に僕に勝てると・・・ぐぶ!」


 勇者は数々の事務領主になる為に受けた数々の事務作業に加え、ドリスとの過酷なキャッチボールの経験値によりレベルが上がり、勇者は18ダメージを受けた。勇者はレベル16になった


「もらったぁ!!」


 ドリスの投擲! 勇者は顔面に24ダメージを受け倒れた


「うぐぅ・・・」


 ドリスは倒れた勇者に近づき水晶球を使って記憶を読み取った


「フハハ!手間取らせやがって! さあみせてみろ貴様の正体を!」


 ドリスが読み取った物は・・・・


”ロードする項目を選んでください”


「って、なんじゃたこりゃ!? なんで記憶が区分けされてんだ? どんだけ几帳面な精神構造してんだコイツ。・・・取りあえず一つ見てみるか」


・・・ドリスは出た項目を適当に選んでみた


”ゆうとくん! 一緒に帰ろ!”


>”ああ、一緒に帰ろう!”

 ”ごめん!妹と約束が有るんだ!”


 読み取った情報を見たドリスは吠えた


「なんで記憶なのに選択肢がでるんだよ! どっちかの情報はダミーかぁ・・・。つかなんだこの女? 髪の色は派手だしスカートも短けえしよ。これは無しにして戻って別の項目を!」


 ドリスは戻るを選択し勇者の記憶をまたロードしようとすると・・・・


”おきのどくですが ぼうけんのきろくは きえました”


 ・・・・とのメッセージが不吉な音楽と共に水晶球に現れた


「記憶が消えたぁ!?!? どうすりゃいいんだよコレ!!」


 勇者はムクリと起き上がり、水晶球ごしに頭突きを入れた。ドリスに17ダメージ


「音楽が鳴り終わる前に電源を消せばチャンスはありますよ」


「お、おまえ・・・」


「ではスキルを拝見」


 ドリスは離れようとしたが、勇者に身体を掴まれて動けない


「いや!見ないで! 手を放して! いやあああああ!」


 勇者はドリスのスキルを読み取った。ドリスは初めて違和感のない女性らしい声を出せた

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る