第145話 ドリスの面接奮闘記

 勇者と対面したドッペル改めドリス・ドルベリの面接が始まった


「ではドリスさん、戦闘経験はありますか?」


 ドリスは ”さて、どう答えるか…” と悩んでいると勇者は続けて言った


「狩猟経験とかでもいいのですが」


 ドリスは ”じいさんの回答が良かったのかどうかもわからない状態、・・・ここは中間あたりで攻めてみるか” と判断し回答を決めた


「野鼠を食らい泥水を啜り生き延びて来ました、わ」


 ドリスの答えに勇者の反応は


「序盤だと十分なアイテムが手に入らないしでそうなりますよね」


 ”共感された!?” とドリスは狼狽えた


「えっと…、引かないんですこと?」


「僕だってゴキやらハエやら相手にしてたら、地面から飛び出してくるネズミがご馳走に見えますもん」


 ”この勇者、召喚される前はどんな食生活してたんだ”


「地面から飛び出す? あの、巣穴からとか?」


「いいえ、豚くらいの大きさのネズミが、何も無い地面から飛び出して群れで囲んでくるんですよ。いい素材になるんですが欲しい時に限って出てこないんですよね。この辺りにいないかなぁ」


 ドリスは ”俺の知ってるネズミじゃねえ。それにそんなモンいねえ” と頭を抱えた


「それはまあ・・・、そんなモンを相手にしていたら野鼠なんて可愛い物ですわよぜ」


「はい・・・。そう思って油断してたら危うく蚊に殺されるところでした」


「蚊ぁ!?」


 ”なんだ? 病を振りまくとかそういうことか?” とドリスは考えたが、勇者の言葉を聞いて改めた


「牛の死骸を貪っている時点で危険だと気付くべきでしたよ。まったく、世紀末は地獄です」


 ドリスは ”世紀末? 世界救うどころか、既に世界が滅びた世界で生きてたのかこの勇者?” と考え思わず思った事を口にした


「生まれる時代を間違えたんだな」


「はい。僕がやったのは3からなんですが、追加コンテンツパックが発売された後で完全に流行に乗り遅れてしまいましたよ」


「え、んん?」


 ドリスは ”追加の娯楽情報が詰め合わせで…、なんだって?” と困っていると勇者はドリス別の質問をした


「で、その後はどんな感じだったんです」


「どんな感じと言われても・・・。え、あ、いや! 民家に侵入し物資を窃盗を繰り返してました」


 ドリスは ”こうなったらヤケだ! ひたすら悪徳走った話をでっち上げてやる!” と考え話を続けた。勇者の反応はいまいちだった


「はい」


「それだけではありませねぇ! スリを働き!財布の代わりにゴミクズを放り込んでなぁ…でしてよ!」


「爆弾じゃなんですか?」


「スリを働く底辺の貧乏人が、そんな上等なもん持ってるわけねえだろ!!!」


 勇者の言葉に思わず怒鳴ってしまい ”しまった! 怪しまれたか?” とドリス固まっていると後ろの神父に話し掛けれた


「過酷くな境遇で罪を犯し、ご苦労された様ですね。微力ですが、あなたが正しい道に進めるよう祈りを捧げましょう」


 神父の祈りによりドリスが祝福された。神の愛によりドリスに2ダメージ。ドリスは怒りに震えている


「祈んな! 懺悔室じゃねえんだ、神父が人の個人情報に聞き耳起ててんじゃねえ!」


「これは大変失礼しました」


 ドリスと神父が話してるところに勇者は割り込み・・・


「じゃあドリスさんは合格と言う事で、あっちに進んでください」


 ・・・合格通知を叩きつけた。ドリスは動揺している


「合格ぅ!?今ので!? スキル調査は・・・」


「野鼠と戦って、スリでアイテム稼いでる初心者のスキルをチェックするだけ野暮でしょう」


「な、なるほど?」


「次のかた~」


 ドリスは合格者の集まる場所にむかいながら ”最悪の事態は避けられたが、どういう判断基準だ? 悪辣な環境でも生き残る生存能力でも見てんのか?” と考えていると


「おやまあ、みんなお揃いかい」


「おや、婆さんもかあ」


 集合場所にご近所の皆さんが居た。それを見たドリスは ”ジジババ全員合格かよ! こいつら全員どんな過去がもってんだ!” と動揺していた


「これも垣見お導きかねぇ」


「神に感謝の祈りを捧げようか」


「そうだね」


 ご近所の皆さんは祈りをささげた。とばっちりでドリスは神の愛を受け5ダメージ受けた


「お前らもかぁー!!!」


 ドリスは思わず叫んでしまい、それを聞いたご近所さんに見つかった


「あら、アンタも合格できたんだね」


「あ、ああ。なんとか合格出来たわですぜ・・・」


 ドリスは思わず後退りすると勇者の面接を受けている神父が目に入った


「戦闘経験は?」


「昔はクルセイダーとして戦場に出ていましたが・・・」


「膝に矢を?」


「いえ、内蔵を潰された後遺症で引退せざる負えなくなりまして」


「そうだったんですか。なにか武器はお持ちでしょうか」


「これを・・・」


 ドリスは神父の武器を見て ”あ、あれは!? 悪霊を退けるホワイトアッシュのメイスに、聖人を埋葬した棺桶の釘を打ち込んだ対アンデット用の!!” と動揺した。勇者も固まってる


「釘バットですか?」


「聖戦士時代に使っていたホーリーネイルウッドメイスです」


「すまり聖なる釘バットですね」


 神父を見たドリスは ”やべえ、後戻りっで来ねえ” そして再びご近所さん達に視線を戻すと・・・


「今まで日影を生きてきたが、この年になってようやく日の当たる場所で生きられそうだねぇ」


「イヒヒヒヒ!」


「フヘヘヘ!」


 ・・・得物を構え、怪しい笑みを浮かべていた。それを見てドリスは ”こいつら本当に何者だぁ!? 確かにスラム街に住んでるような連中だけども!” と動揺し


「はっ! まさか」


 ドリスはあらぬ誤解をし ”こいつら、まさか勇者が召喚される前から俺を見張っていたのか? 神父グルか。あの話し掛けて来た貴族も俺がすでにこいつ等に見張られている事に気付いて引いたのか!?” と思い


「どうしたらいいってんだ・・・」


 ドッペルは神の愛無しに精神に15ダメージを受けた

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