第144話 ドッペル、勇者の前に立つ
逃亡を図る為に、よりにもよって勇者の領地への面接に並んでしまったドッペルは狼狽えていた
「次の方~」
ドッペルは ”やべえ、もうすぐ前の爺さんの番じゃねえか” と思いながら前の様子をうかがっていると
「お爺さん、お名前は?」
「トール・リードと申します」
前のお爺さんの面接が始まりドッペルは ”そうだ! 適当な事散々並べてわざと面接から落ちちまえばいい! そうすれば少なくとも勇者からは離れられるだろう・・・” と考えた
「リードさん戦闘経験はありますか?」
「いえ、色々ありまして従軍経験は無く・・・」
リードは暗い顔をしている。勇者は構わず質問を続けた
「軍での経験じゃなくてもいいので、魔物と戦った事は?」
「いいえ」
「では人との戦いは? 狩猟経験でもいいのですけど」
ドッペルは ”戦闘経験を重視してるのか? ならその逆の答えで攻めてみるか” と考えていたのだが、リードの答えを聞いて狼狽えた
「恐らく24人程・・・、確実に殺めたのは16人でしょうか」
ドッペルは ”おい! このじいさん殺人を自供し始めたぞ!” と狼狽えた。ドッペルは精神に1ダメージ受けた。勇者は気にしていなかった
「詳しく聞かせてもらえますか」
「昔…、小さな商社を経営していたのですが、ライバルの商人に濡れ衣を着されまして。商社は倒産、その復讐に3人始末し貧民街に身を潜めていたのですが、日銭を稼ぐために用心棒などを引き受けそのまま何人か・・・・」
ドッペルは ”とんでもねえ経歴をよくもまあスラスラと話すなこの爺さん。生い先短いから腹くくってるのか?” と思っていたが、勇者は驚く様子もなくこう言い放った
「24人ですか、少ないですね」
ドッペルは思わず ”少ない!?” と声に出してしまいそうになったが耐えた
「ユート様も人を殺めたご経験が?」
「多分1憶は越えてるんじゃないでしょうか? FPSやってると一戦で20人は殺りますし。この世界に来てからは人とまともに戦闘してませんけどね」
ドッペルは ”銃撃戦で1憶…、どんだけ殺ってんだよ。この世界でやったら史上最も多くの人命を奪った個人になれるんじゃねえか? ・・・ん?一戦20人で1憶だと?” と、首を傾げながら見ていると、勇者は水晶版を取り出して言った
「ではこの水晶に手を触れてください。スキルを調べますから」
「わかった」
ドッペルは ”スキル検査だと!? そんなもんチェックされたらすぐばれるじゃねえか!” とオドオドしている。勇者は気づかなかった
「やっぱり高齢者の方がスキル多いですね」
「人生経験が違いますから。でも身体の方がもたないので」
「ふーん、スキルはそのままでも、ステータスは下がってるんですね」
ドツペルは ”どうするどうする!” と焦っていると後ろの神父に話し掛けられた
「どうかされましたか?」
「い、いえ!なんでもありませんことよだ!」
ドッペルは ”逃げ場が無え…、いや違う!しまった! 体調が悪いフリして抜ければよかった!” と後悔していると
「次の方~!」
「あ、はい!?」
ドッペルは勇者に呼ばれ ”もう俺の番!? 爺さんは?合格したのか!?” と混乱しながらもドッペルは勇者の前に進んだ
「お名前は?」
「な、名前ぇ!? ド・・・」
「ド?」
ドッペルは勇者に名前を聞かれ ”ああもう!本名はマズイ! 何か適当な名前を・・・” と
考え
「ドリス・ドルベリと申しますだぜ!」
ドッペルは改名した
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