第135話 勇者達の帰宅

 ブーメランと共に飛んで行ったポチィーを見守っていた勇者達


「ビュウウウウウウウウン・・・・・」

「ワウウウウウウンンンン・・・・・」


 風切り音とうめき声と共に、高速で飛ぶ謎の飛行物体を見て動揺する王国軍兵士達、魔物双方に混乱をあたえた


「なんだ今のは!?」

 「獣の雄叫びがしたぞ!魔物だ!」

   「射ち落せ!侵入を許してはならん!」


 エルフ弓兵の攻撃!


「ワフ!」


 しかしポチィーの振り回す尻尾に矢は弾かれた


「なんだあの奇行物体は!? 矢を弾いたぞ!」


 ポチィーはブーメランを放して飛んだ


「ワウ!」


 飛んだポチィーは王国軍司令官の頭に着地した。王国軍は混乱した


「ワンワン!」


「なんだこの犬!放せ!」

 「隊長落ち着いてください!それ確か勇者の犬ですよ!」

  「射つな!隊長に当たるぞ!」


 その光景を見たイアゾアは、自分の頭の上の勇者と雑談した


「回転シナガラ、矢、弾ク。器用ナ、ヤツ」


「あれ? 回転で飛び道具を弾くキャラっていないんですかイアゾアさん?」


「見タコト、無イ。素直ニ、避ケル。回ルト、飛ンデクルモノ、見エナイ」


「それもそうか・・・、なんか残念だな。後で練習がてら…で遊ぼうと思ってたのに」


 勇者は残念そうに小さく呟いた。そんな勇者にイアゾアは質問する


「モシ、ソンナ奴、居タラ、親分ドウスル?」


「立って回転する相手なら、足下を狙ってしゃがみキック!・・・は、後のウリアッ上で対策されちゃいましたから」


 勇者は一部翻訳に失敗した。イアゾアは少し困惑する


「・・・・何ノ呪文?」


「う~ん、無難に跳ね返せない質量の物体を投げつけてやるか、壁に誘導して衝突させるのがいいですかね」


「ソレガ、無難カ。モウ行ク、親分?」


「はい」


 勇者は幻影スキルを使ってイアゾアを幻惑した。


「オオ! 敵ノ薄イ場所、見エル」


「このルートにそって進んでください。僕の見える範囲で左下のミニマップに敵の位置を表示させますから」


「ギョイ!」


 頭の上の勇者の指示に従ってイアゾアは敵を蹴散らしながら進んだ


「フン!」


 イアゾアの払いのける攻撃! マシュマロサボテンAからDに17ダメージ


「ぴぎゃ」 「ぴち」

   「にゃあ!」  「ぷち」


 払いのけられ飛んで行ったマシュマロサボテンが、トゲをまき散らしながら無差別の攻撃する


「なんだ!?」 「痛ててッ」

   「鬱陶しい!」


 魔物達の隊列が乱れた。その隙にイアゾアが突き進む


「ドンナモンダ」


「あのサボテン面白いですね。次に見つけたら僕も使ってみよっと」


 目の前にスケイルゴートが立ちふさがった

 

「グハハ、抜け駆けしようなんざ許さね・・・」


「ワウ」


 ポチィーは王国軍司令官の首を捻り、勇者の方に顔を向けさせた


「うぐわぁ!・・・あっ!勇者を援護しろ!魔物に乗ってこっちに向かってくるぞ!」


「了解!」


 王国軍兵士達はスケイルゴートの動きを止める為、スケイルゴートの膝に槍を突き立てた


「うぐッ!」


 スケイルゴートに21ダメージ、スケイルゴートは膝を着く


「イアゾアさん、足場が出来ましたよ」


「ウン、ワカッタ」


 イアゾアは勇者の指示でスケイルゴートを踏み台にして飛んだ


「ガスン!」

    「あんが!」


 イアゾアの踏みつけ攻撃によりスケイルゴートは18ダメージを受けた。スケイルゴートは頭から塵となっていった


「ああ・・・・」


「ドスン」


 イアゾアは着地し勇者達はの農村跡地に帰還した。そこに副司令官が勇者の元まで駆け寄って来た

 

「勇者様!よく戻って来てくださいました。共にこの地を汚そうとす不届き者を一掃し・・・」


「あ、僕のパーティーは今戦える状態じゃないので皆さんで頑張ってください」


「え」


 副司令官は混乱している。勇者はイチゴを撫でているアレクシスの方にむいて言った


「アレクシスさんならまだ大丈夫だと思いますけど」


「ほ?ボクですか? 料理人として戦闘にはあまり加わりたくなないのですが」


「ん~・・・あ、じゃあたぶんお腹を空かせてる人を呼ぶので、調理しててください」


 イアゾアが首をかしげる


「オ腹、空カセテル? 誰?」


「とりあえず、屋敷に帰りましょう。じゃあよろしくお願いしますね」


「え、お待っッ!」


「バタン」


 勇者はそう副司令官に言って屋敷の中に帰ってしまった


「ほ、本当に帰ってしまった。この状況で・・・・」


「・・・・ッ・・・・ッッ!」


「なんだこの物音は?」


 副司令官は屋敷からする物音に耳をすましていると


「…ッ・・・ッ・・・・ズンズン!」


「何か来る!ッッ!」


 副司令官が危険を感じ、急いでその場を離れる。それと同時に屋敷の扉を蹴破り、大型の魔物が姿を現した


「ガハハハ! やっと脱獄できたぜ! ババル様ふっかぁあつ! しかし人間臭せえな」


 スッポン・ババルが現れた


「まったく! 飯抜きで放置された時は、いよいよ臭みぬかれて食われるかと思ったぜ。さあ、クソ鍋人間はどこ行きやがっ・・・・た?」


ババルは幻覚に囚われている。ババルは多数の大小様々な勇者を目にし困惑した


「ヤロウまたやりやがったな! どれが本物・・・ッ、どうだっていい!もう全員かたっぱしから食いついてやる!!」


 ババルは勇者に攻撃した! 切り裂きモモンガに25ダメージ


「みぎゃ!」


「こいつもハイエナの手先か!?」


 魔物達はババルを襲った。王国軍の兵士達は困惑している


「ヤツも仲間なのか?」


「隊長、あれを」


「ん」


 本物の勇者は物陰から顔を出し、王国軍兵士達にこっちに来る様にゼスチャーした


「クイクイ・・・」


「あの魔物には構うな! 後退し本陣の防御を固めろ!」


「了解!」

   「陣形は崩すなよ!」

 

 王国軍兵士はババルを無視し後退した。その頃、アレクシスはイチゴを撫で


「ほほほ、生きの良い食材ですねぇ」


「ミーミー」


「ガシュ!」

    「ミッ・・・・」


「ほほ、良い果肉だ」


 アレクシスは手ごろな大きさのイチゴの首を切り落として袋に詰めていた


「さてさて、こちらも調理を開始いたしましょうか。みんな美味しくなっていただきますよ♪」

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