第134話 守備範囲外から勇者ですか?
村まで帰る道を
「む~」
「機嫌を直してくださいよ、ユート様」
不貞腐れる勇者と、その仲間達が進んでいた
「だって、はじめての仲間モンスターの進化イベント飛ばされるとは思ってませんでしたもん。と言うか進化する事すら知りませんでしたもん! これはアレですか?後でダウンロードコンテンツでシナリオ追加されるまで分からない落ちですか? 完全版とかいいですから、ちゃんと完成品にしてから発売しようよ!」
イアゾアは勇者の声を聞きながら首をかしげた
「親分、言葉、ドウシタ? ナンカ、変ダゾ。何カ、アッタ?」
「ちょっと食事中にレベルアップしちゃいましたけど、何か変ですかね僕?」
「マタ、ムリシテ・・・・」
勇者はふとあり疑問を思い出しアレクシスに尋ねた
「そう言えば、アレクシスさんは何でイアゾアさんをちゃんづけで呼んでるんです?」
「ほ、それはですね…。あ、もう村につきましか」
勇者達は立ち止まり、目に入った農村跡地の砦を眺め、各々感想を述べた
「着きましたね。王国兵士の人達も元気そうで何よりです」
「これは料理を振る舞って、労わないといけませんね。食材もいっぱいありますし」
「ソダナ・・・。デモ、濃イ味ハ、カンベン」
「ワン!」
農村跡地は王国兵士達の元気のよい雄叫びが響き渡っていた
「隊列を崩すな!なんとしてもこの防衛ラインを死守せよ!」
「「了解!」」
「分隊長! 背後の地面からイチゴが生えました!」
「背水の陣だ。兵士達が引かぬよう、あえて残せ!」
「りょ、了解」
「地下ダンジョンは無事か!?」
「ハイエナ共が出入り口を塞いで立てこもっている為、正確な情報は分かりませんが、ドワーフ偵察隊の耳によると恐らく無事だと・・・」
「エルフ隊から報告! 新たな群れが接近! 3分後に接触すると予想されます!」
村は勇者達の留守を狙い、魔物達に襲撃されていた。それを見守っていた勇者達は草場に隠れ雑談していた
「僕も手伝った方がいいんですかねアレ?」
「それはそうでしょう。今こそユート様の領主としての威厳を示さなくては♪」
「でも他のパーティが戦っているのを横取りするのはマナー違反ですし・・・。取りあえず屋敷に帰ってから考えますか」
「ほほっ、帰ろうにも近づけないのでは?」
話している勇者とアレクシスに割り込んで、イアゾアが提案した
「帰ルナラ、邪魔ナ、イチゴドカソウ。鍋ニンゲン、任セタ」
「いいですがどうやって?・・・・、ほッ!?」
イアゾアはアレクシスを掴んで袋の中に押し込んだ
「トリニナッテコイ!」
イアゾアは袋をグルグルと回し放り投げた!
「ほほほほ~ぉぉぉぉおお!!」
「ビューゥン・・・…」
袋の中のアレクシスは袋から飛び出し
「ほ!危なッ!」
「ギュ」
袋の口を両手で掴んで耐えた。そして中に空気の入った袋はパラシュートの様に膨らみ、中に入った物がこぼれ落ちた
「ああ! 集めた食材がァ!!」
こぼれた食材は下に生えているイチゴ達のエサになった
「パクパク!」
「バク!」
「誰だ!イチゴにエサやってるバカは!!」
「デカくなったらどうする!」
その様子を見た兵士の怒声もアレクシスの耳に届いていたが、彼はそれどころでは無かった
「っほおぉ!? このままでは調理する前にボクが食材の食材にぃ!?!?」
落ちるアレクシスは ”なんとか飛距離を伸ばさなくては!” と考え、出した結論は
「ボウリン!」
アレクシスは頭の上に炎を作り出し、温められ上に上った空気を袋の中で受け止めた。飛距離が少し伸び、落下速度も下がった
「気球のおもちゃで遊んだ思い出が、こんな所で役に立つとは・・・・・、熱いあちぢあぢちいいぃぃいぃ!?」
炎の熱でアレクシスに6ダメージ。アレクシスはイチゴンの背後の着地した
「あちちっと!」
アレクシスは熱せられた頭に装備した長鍋を冷やそうと転げまわった後、適当な物に押し付けた。香ばしい甘い香りと共に水分の蒸発する音が聞こえる
「グオオオ!?」
イチゴンは3ダメージを受けた
「ほっ!? これをすみません!取り乱してしまいまして!」
「グルゥ!?」
アレクシスとイチゴンは目が合った。イチゴンの脳裏をよぎるのは、アレクシスが手を触れただけで塵となった親の姿・・・・
「グルゥ・・・」
イチゴンは首を垂れアレクシスに服従した。他のイチゴもアレクシスに服従する
「ほっ!やっと食材と気持ちを通じ合わせる事が!うう!」
アレクシスは感動で涙した。それを当目で見ていたイアゾアと、そのイアゾアの頭の上に乗った勇者
「セイコウ」
「これでイチゴはどうにかなりましたね。僕達はどうします?」
「親分、抱エテ、ツッコム。 親分見セレバ、兵士、道アケル」
「強行突破ですか。でも魔物と兵士が固まり過ぎですから、こちらに気をそらしましょう。ふん!」
勇者はブーメランを投げた
「クルクル・・・」
「ワン!」
しかしポチィーにキャッチされた。ポチィーはブーメランを咥え、勇者のもとに尻尾を振りながら戻ってくる
「ハァハァ」
「別に取ってくる様にと遊んでるわけじゃ・・・。こうなったら取られない速度でッ」
勇者のヘビーアタック発動! ブーメランは勢いよく飛んでいく
「ブゥン・・・ッ」
「ワン!」
しかし、またポチィーにキャッチされた
「これもキャッチされるだと!?」
「ヘッヘッ」
勇者は戻って来たポチィーからブーメランを受け取り、覚悟を決めた
「もうこうなったら・・・。イアゾアさん!もう本気で投げちゃいますから、僕の代わりに戻って来るブーメランを受け止めてください! 僕でも受け止めきれない威力になると思うので」
「ワカッタ」
勇者は力をためている
「これが僕の今のレベルでの・・・・・全力だああああ!」
渾身の力を込めたヘビーアタックでブーメランが放たれた! 勇者はMPが急激に減った事により、めまいがした
「ワウンッ!」
しかしポチィーにキャッチされた
「なにぃ!?」
だが!ポチィーに咥えられたにもかかわらず、ブーメランはポチィーと共に回転しながら屋敷の方へと飛んで行った
「ワウルルルルルゥゥゥ・・・・‥……」
それを見た勇者は呟いた
「えぇ~・・・・・。レベルアップの結果をこんな形で見せられてもなぁ・・・・」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます