第132話 それは職業なんですか?

 エイブの料理屋で、ゴードンより一足先に食事を終えた勇者


「おまちどう・・・。あれ?もう食べ終わったんですか?」


 その勇者のもとに、注文していたアップルサイダーが届いた。運んできた店員の疑問に、勇者は適当に答えながらアップルサイダーを飲む


「はい、美味しかったですよ。ゴク・・・、少し酸味が増してますね」


「味を調える為にレモンを入れましたが、よけいでしたか?」


「いいえ、とても飲みやすいですよ。ありがとうございます。ゴクゴク・・・」


 勇者はアップルサイダーを飲み干した。MPの自然回復量が上がった


「さてと・・・」


 勇者は席から立ち上がった。まだスープを食べているゴードンは勇者に語り掛けた


「どうしたんです勇者さん?」


「店の探索をしようかと」


「トイレをお探しで?」


「いいえ。アイテムはないかなぁと」


 ゴードンは勇者の言葉を聞いて慌てて止めた


「ちょっと!店を荒らさないでくださいよ!」


 勇者は面倒くさそうな顔をしている


「えー・・・、じゃあ裏口があるか確認だけでも」


「そんなの確認してどうするんです!」


「後で入る為ですけど?」


「やめてくださいよ! 勇者が不法侵入と窃盗で逮捕だなんてシャレになりません」


「そうですか? 投獄イベントなんて、わりと良くあるような気がしますけど。自由度が高いと特に」


「自由すぎです。・・・・勇者さんがマリー嬢ちゃんにさらわれた後位に、ウチの倉庫から危険物が無くなった騒ぎがあったんですが、まさか勇者さんの仕業じゃないでしょうね?」


「いいえ? 僕じゃありませんよ。真理さんじゃないですか? なんか色々持ってましたし、毒の霧を撒くアイテムとか。あ、薬草採る時に使ってた小道具とかもそうなのかな?」


「やはりヤツの仕業か・・・」


 ゴードンは頭を抱えた。勇者は不敵に笑っている


「そういえば北門の探索がまだでしたね・・・」


 ゴードンは勇者の両肩を掴んで言った


「必要な物があるなら出来る限り用意しますから、勝手に持っていかないでくださいね! 頼みますよ! ・・・・ん?」


 ゴードンと勇者はチラチラ見てくる視線に気づいた。店員が勇者達に小声で話しかける


「最近不況のせいでガラの悪い連中が増えてきてるんです。あまり変な言動をとっていると目を付けられますよ」


 ゴードンは店員の言葉を聞いて勇者を座らせ、自分も席つき料理を手早く食べ始めた


「なるほど、ゆっくりしてる場合じゃなさそうだ。ガツガツッ・・・」


「・・・・・」


 ゴードンはグヤーシュと黒パン、リンゴジュースを平げ。勇者に声をかけた


「よし! トラブルになる前に早く店を出ましょう勇者さ・・・、勇者さん!?」


 しかし勇者の姿は無かった。ゴードンが辺りを見渡すと、自らトラブルに近づく勇者の姿があった


「すみませーん、盗賊の方ですか?」


「何だテメエ? まあ、似たような者だが…」


 勇者は怪しい男に話し掛けた。怪しい男は怪訝な顔をして戸惑っている。ゴードンはその光景を見て焦った


「まさかここで不審者とやり合う気か!? 勇者さッ・・・」


 ゴードンは勇者を止めようと走った


「良ければ僕と一緒に冒険に出ませんか? 最近アイテムが入用でして・・・」


 勇者は怪しい男を勧誘した。ゴードンはずっこけた


「うっ!」


 ゴードンのタックルが勇者を襲う! 勇者は9ダメージ受けた


「痛たたた・・・・、何ですゴードンさん」


「すみません、足を滑らせて・・・。って、そうじゃなくてですね! 勇者さん何してるんですか!?」


「盗賊の方をパーティに誘っただけですけど?」


「俺の前で堂々と犯罪の疑いのある人間を勧誘しないでくださいよ!」

 

 勇者は首をかしげている


「え、職業が盗賊シーフの人ですよね。何か問題でも?」


「なにがって・・・、盗賊なんて誘ってどうする気です!?」


 勇者は当たり前のように答えた


「ダンジョンのアイテム探索やトラップの解除をお願いしたいだけなんですが」


「偵察兵として使う気だったんですか・・・」


「あ、あれ、盗賊さーん!どこです~!」


 怪しい男はそっと居なくなっていた。勇者は怪しい男を見失った


「勧誘イベントを逃しちゃったか・・・・。しかたない、また別の日に探そっと」


「探すって、諦める気ないんですね・・・・」


 勇者達はエイブの料理屋を後にした

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