第129話 勇者、料理屋へ行く

 道具屋をあとにした勇者達は、北門に向かい。勇者はゴードンに話しかけた


「ゴードンさーん」


「お、勇者さん。・・・って、その杖はどうしたんです、もしかして足を?」


「いいえ、武器を調整しだしたら親方が護身用に貸してくれたんです。ゴードンさん今時間ありますか?」


「ええ、アレを何とかしてくれれば少し時間を作れますけど・・・」


 ゴードンは北門の外にいるアレクシスに見て言った。アレクシスが勇者に気付いて話しかける


「ユート様♥ お帰りなさい」


「アレクシスさん、そこで何してるんです?」


「暇なので、近くの適当な野草や食肉を捕まえて料理の練習をしてですね。兵士達がこの実験作が欲しいと言うので振る舞っているのですよ、有料で☆」


 ゴードンは頭を押さえて勇者に言った


「そのせいで兵士達の士気が乱れて大変なんですよ。勇者さんからもやめる様に言ってくれませんか。集団食中毒でも起されたら私の責任になってしまうんで・・・」


「あー・・・、なるほど。アレクシスさーん、スキル上げは帰ってからにしましょう。素材アイテムの確保に専念してください」


 イアゾアが鼻を鳴らし、アレクシスの方に歩み寄って言った


「くんくん・・・。ニク、ノ、ニオイ」


「ほっ、もう肉はあまり残ってませんが、余ってるのは骨くらいですよ」


「骨食ウ、ヨコセ」


「骨? おお!齧りたいのですね! さすがは犬!」


「犬ト一緒ニ、スルナ! 噛ミ砕ケル。ハイエナニトッテハ、食料。親分、オレ、ココデ、分カレル」


 そう勇者に言って、イアゾアはアレクシスのもとまで歩いて行ってしまった


「あれ、イアゾアさんは一緒に行かなくていいんですか?」


「人間ノ飯、イヤ。甘ク、辛ク、ショッパイ。余計ナ事スル」


 イアゾアの言葉を聞いてアレクシスは首をかしげた


「あの・・・、どういうことです?」


 勇者は素っ気なく答えた


「これから昼食を取ろうかと思いまして、ゴードンさんに適当なお店を案内してもらおうかと思ってまして。いいですかゴードンさん? 僕が奢りますので」


「え、ええ。アレクシスが悪さしなければ構いませんよ」


「コイツ、ガ、他ノ人間ニ手出シシナイ、様ニ、見レバイイ? ナラ、オレニ任セル」


 アレクシスは混乱状態になった


「そんな!ボクの料理は!?」


「また次の機会に。アレクシスさんの料理は屋敷に帰ればいつでも食べれますからね」


「ええ!? そんな薄情な! 何時でもユート様のお腹をボクの料理で満たしてもらいたいと言うのにぃい!」


 勇者に駆け寄ろうとするアレクシスを、イアゾアが掴んで止めて引きずって行った


「コラ、食糧探スゾ人間。オマエ、タブン飯探ス感ガ、俺ヨリ良イ、飯探ス。ソレニ、オマエハ、入ッチャダメ」


「くうっ! こうなればアナタにボクの料理を食べてもらますよ!」


「イヤ、俺、人間ノ飯ハ、キラ・・・・」


「それは容認できません! このボクの溢れる憤りを!行き場の無い愛を! その身に受けてもらいましからね!」


 イアゾアが足を止めた隙に、逆にアレクシスはイアゾアを鎖で巻きつけて森へと去って行った


「じゃあ、ゴードンさん、行きましょうか」


「ええ、正直まだ不安なんですが・・・・、行きましょうか勇者さん。持ち合わせはどれ位ですかい? それに合わせた飯屋を・・・」


「7000ゴールドちょっとです」


 そう言って勇者は金貨の入った袋を取り出した。ゴードンは困惑している


「えっと、そんな大金を持ち歩くのは危ないんで・・・、ああそうだ! 渡した鍵で箱を使ってください。それから行きましょう、その間に俺は部隊のスケジュールを調整しますんで」


「はい。それじゃあ、お言葉に甘えて行ってきます」


 勇者は兵舎に自分の部屋に行って箱を開けた


「ガチャ」


「お、開いた。う~ん、これくらい持って行けばいいかな?」


 勇者は5000ゴールドを箱に入れて外に出た。しかしそこにゴードンの姿は無く、勇者はしばらく待っていると鎧を脱いだゴードンが現れた


「お、勇者さん、早いですね」


「ゴードンさん鎧脱いじゃったんですか」


「そりゃ、公務でもないのに兵士が街中を完全装備でうろついたら、住人に怖がれますから、それに脱いだ方が楽でしょう。あれ?勇者さん荷物は置いて来なかったんですか?」


「箱にちゃんと金貨を預けましたよ。手持ちは2000ゴールドです」


「いや、そっちじゃなくて・・・・。護身用とは言えなんでブーメランまで? 街中じゃ扱い難いですし、必要ないんじゃ・・・、窮屈じゃありませんか?」


「ははは、何言ってるんですゴードンさん。飯屋に行くだけですから装備を軽くする必要は無いでしょう。アイテムを買い足す予定はないですし身軽にならなくても」


「え? それじゃあ常に完全装備で?」


「はい。勇者たるもの、アイテム欄がいっぱいになるか、重量制限が迫ってる場合を省いて常に完全装備でしょう」


「それじゃ重くて疲れるんじゃ・・・・」


「装備下手に預けると、必要になっと時に取りに戻って二度手間になるでしょう。戦闘イベントが急に始まる可能性だってありますし」


「常に戦闘に備えてると!? 一応聞きますが、本当に飯を食いに行きたいだけなんですよね?」


「はい」


 ゴードンは混乱している。そんなゴードンに兵士の1人が話しかけた


「隊長、部隊の調整が終わりました! 勇者に備え、担架の用意し衛生兵を待機させています!」


「ごうろう。用意が良いなお前ら・・・。じゃあ後は頼むぞ」


「はっ!ご武運をゴードン隊長! どうか隊長だけはご無事で」


「あ、ああ、行ってくる」


 ゴードンは敬礼する部下に見送られ、勇者達と飯屋に向かおうとした


「ワン!」


 しかしポチィーは兵士に止められた


「勇者様!よろしければ犬はこちらでお預かりします!」


「あ、じゃあお願いします。ペット入店禁止の店もあるでしょうからね」


「ワウ?」


 ポチィーは北門兵士に預けられた。ゴードンは頭を押さえてぼやいた


「久し振りにマトモな飯が食えるって言うのに、無性に不安なのは何故なんだ・・・・」


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