第121話 時の流れは残酷に
魔物に吹き飛ばされ、その先で洞穴を見つけたアッシュ。その洞穴に武器を落してしまったアッシュ、取りに行こうと中に入るとそこには謎の人物が待ち構えていた!
「はぁ…はぁ・・・、さっさと剣を返せ!」
「ひぃ…ふぅ・・・、嫌です!普通に訪問者を返すなど精霊の名折れ!」
アッシュと謎の人物は剣をとり合った格闘で疲弊していた。アッシュは謎の人物が言った言葉に反応する
「やっぱお前は人間じゃないな!」
「ほほほ、その通り! 私はこの土地の霊脈を治め司る大妖精スプラ! 妖精たちと共に勇者現れるのを待ち、伝説の剣を与える為!ここで剣を守護する者!!」
「伝説の剣?」
「・・・・あ」
スプラは ”しまった” と言う表情をして後退り身構えてこう言った
「秘密を知られたからにはしかたない、貴方にはここで消えてもらうしか・・・」
アッシュは怖気ずこう言った
「あまりいい加減な事言ってると脳天にこの金のガラクタを叩き返すぞ」
スプラは降参した
「分かりました落ち着きましょう人間よ。・・・霊脈が正常ならこの様な遅れは取らないと言うのにッ!」
「それは大変そうだな。じゃあオレは返るから」
アッシュはスプラが後ずさった隙に剣を取り戻し帰ろうとした
「待ちなさい!人間よ!」
スプラはアッシュを呼び止める。アッシュを怒らせた
「ああもう!しつこいと本気でぶっ叩くぞ!」
「あなた、勇者とはお知り合いなんですよね。少なくとも装備をもらえるほどの仲と」
「そうだけど! だからなに!?」
スプラは静かに語り掛けた
「ならば伝説の剣をあなたに預けましょう、そして勇者にその剣を届けてください。そして確認の為に勇者をここへ案内を、そうしたら金の剣は報酬としてあなたに差し上げます。どうです? これなら勇者に守ってもらえますから安心して金の剣を持ち帰れますし、私も大妖精としての体裁を守れます」
「うーん・・・、構わないけど。それじゃオレに伝説の剣を持ち逃げされたらどうする気だ? 大事なモノなんだろ?」
スプラはアッシュの言葉にニコリと笑ってこう答えた
「持ち逃げしたらあなたを呪います。それに私が剣と正式に契約させなければ完全な力は引き出せませんからね」
「へいよ、そういう事なら引き受けるよ。で、どっちの勇者に渡せばいい?」
「どっち?」
「勇者今二人いるんだけど・・・」
アッシュの言葉にスプラは驚いた
「先代もまだ生きておられるのですか!? もうかなりのお年のはずですが」
「いいえ、先代は現在行方不明ですし、正直生きてる可能性は・・・・。なんか国王が正式に召喚した勇者と、アマンダ様が召喚した勇者が居まして」
アッシュの言葉にスプラは小さく独り言を言って頭を押さえ考え込んだ
「アマンダのヤツめどんな手を使ったのでしょ・・・、また無茶して…」
悩んだ末、決断したスプラは大きくため息をついてアッシュに言った
「わかりました。ではどちらかに渡すかはあなたに一任します。あなたは武器に精通している様ですからどちらに相応しいか判断できるでしょう」
「へい、了解しましたよ。じゃあまず剣を見せてもらおう、鑑定するから」
「はいこれです」
スプラの周りを飛んでいた小さな妖精が集まり、光を放ったかと思うとそこに一振りの剣が現れた
「これか・・・古い作りだな」
アッシュはその剣を手に取り鑑定した
”種類は片手剣、もう現代の仕様ではほとんど見られない剣身が先端までまっすぐ伸びた、やや重心が剣身に偏った物だ。剣身の中心には幅が広い樋が通っていて軽量化されているがそれでも重いのでウェイトバランスを取る為の柄頭が大きい、現代ではスタンダード丸い円形の柄頭でなく三角形で幅が広い古い造り、まだ青銅時代の剣の造りを引きずっているな。剣身真ん中の独特な模様から、柔らかい鋼材を捻じった棒材を重ねて鍛え上げた芯金に、刃になる高度の高い鋼材で囲んでいるのだろう。この文様鍛造は現代は装飾にか使われない、鋼を量産できなかった時代の剣だ”
と考えながら鑑定しているアッシュにむかって、スプラは自慢げに言った
「どうです、これぞ魔剣スコール! 強大な魔力を宿した伝説の魔剣!」
「スコール? 伝説って言うけど聞いたこと無いな」
アッシュの言葉にスプラは動揺しこう言った
「うっ・・・それはそうでしょう。なぜか皆さん、もうオリハルコンの剣持ってるからいらないとか、俺は槍使うからとか言って受け取ってくれないんですよ!」
アッシュはその話を聞いてツッコミを入れた
「伝説になりぞこなってんじゃねえか! まあ、そいつらが受け取らなかった理由も分かるが・・・」
「どういうことです!? それは間違いなく名剣ですよ!」
スプラの質問にアッシュは淡々と答えた
「確かに質の良い剣だ、魔力量も高い。 だけどな、こんな短い鍔でどうやってバインドするんだ? 造りが古すぎて現代の剣術理論と合わねえよ。オレだってビィーキング式の剣の使い方なんて武術ギルドに軽く講習を受けた程度だぞ。いくら良い武器でも正しく使える使い手が居ないんじゃ意味ないだろ」
「そんな!? でも古いと言っても剣ですよ、そんな違うものですか!?」
「このタイプ剣が活躍していた時代の防具はチェーンメイルが主流だっから、この剣の重量を生かした斬撃も有効だった。が、プレートアーマーには歯が立たねぇ、魔物だって武具を装備する奴は居るし切先の幅が広すぎて防具の隙間から刺すのにも向いてない。重量も剣身に偏ってるっから逆持ちして柄で殴った時の効果も薄いだろう。ほぼ剣身だけで斬り合う剣術は完全に廃れちまってると言ってもいい。国外にはそんな剣術もあるだろうが、そもそも剣の造りがこれとは別物だろう」
「ええ!? じゃあこの剣を名実共に伝説にする私に夢は・・・」
「難しいだろうな」
スプラはアッシュの言葉に打ちのめされた
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