第115話 もう一つの戦い

 勇者に命名され、闘技場で戦うことになったイアゾアは・・・


「イヤァー!」


 ・・・闘技場を逃げ回っていた


「大人しく我が剣技を受けるが良い!」


 対戦相手イリアのスキル”蛇道線ジャドウセン” 空間を歪め、蛇の様に起動を変えたレイピアの突きがイアゾアを襲う


「フゥン!」


 イアゾアはスキル”ハヤブサ”を使用し機動力を上げて躱した


「ちっ! 中々しぶとい・・・」


 ルビックは対戦相手側のセコンド席で舌打ちした。それが目に入ったイアゾアが勇者に叫ぶ


「ウワー! 殺ス気ダ! 絶対アイツ俺ヲ殺ス気ダ! 助ケテ親分!」


 しかし勇者の耳には届いていない様だ


「イアゾアさんがんばって―」


 勇者は手を振っている


「コノ・・・アマリ舐メルナヨ…クソアマガァ!!」


 イアゾアは魔物を本性をむき出しにした!


「ガァアアア!!」


 「ヒュン!」


 イアゾアはレイピアの攻撃を掻い潜りふところにもぐりこんだが・・・


「ガシィ!」


 ・・・だが無意味だった。イリアはふところに入り込んだイアゾアをレイピアのハンドガードで殴りつける


「グゲ!」


 イアゾアに16ダメージ


「ウグゥ・・・」


 イアゾアは倒れた。司会がイリアの勝利を宣言し、救護班がイアゾアを運んで行く


「イアゾア選手ダウン! 勝者、イリア選手!」


「ホイニール!」


 イアゾアとイリアは全回復した。4回目の試合が終わり、係りの人間とルビックが相談していた


「オーナー、この様な試合結果がこれ以上つづくと賭け率に影響します。少し選手のレベルを落とされては?」


「うむ…、勇者を負かしても全体で見れば利益は下がるか・・・。仕方ない、次は適当なヤツを当ててやれ。アレでも勝てそうな奴をな」


「かしこまりました、その様に」


「しかしあの勇者、負け続けてるのに全く悔しがってる様子は無いな。メモを取っているようだが・・・」


 ルビックの向かい側のセコンド席に座っている勇者は探検の書を取り出してメモしていた


「いやぁ、他の人の戦いを見るのも参考になるな。下手にレイピアの懐に入るのは危険っと・・・・。最近はネットに攻略情報が直ぐに出ちゃうから、自分で攻略本書くなんて何年ぶりだろ」


「ワン!」


 ポチィーの鳴き声に反応して後ろを見ると、治療を終えたイアゾアが戻って来ていた


「タダイマ・・・」


「お疲れ様ですイアゾアさん。次も頑張ってくださいね」


 イアゾアは勇者の探検の書を何となく覗いてこう言った


「本書イテルノ親分? 絵上手イネ」


「友人の同人誌制作を手伝ったりしてましたから。・・・しかし、さっきの女の人はなんで連続突きとか使わなかったんだろ? そうすればイアゾアさんが入り込めなかったでしょうに。それに突きが思ったよりも重い感じが・・・、レイピアって思ったよりも重いのかな?」


「オレ、人間ノ武器、ワカンナイ」


「うーん、アッシュさんが居たら教えてもらえたかな? シンシアさんが言うにはこの世界の武器屋って凄いみたいだし・・・って、国外追放だから街に入れないか」


 シンシアの授業の内容を思い出しながら悩んでいる勇者に、イアゾアは質問した


「親分、次ハ、ドウ立チ回レバイイ?」


「そうですね。次は守りを大事にからドンドン行こうぜに切り替えるのではなく、好きにやってみてください。イアゾアさんの性格や立ち回りも把握したいので」


「ワカッタ」


 勇者はふと真理達の事を思い出し呟いた


「そういえば真理さん達は頑張ってるかな?」


           ・

           ・

           ・

           ・


 時間を少しさかのぼり、勇者が街につく少し前のこと


「着いたわね」


「ああ、そうだな」


 目的地に到着した真理とボランは泉を見てぼやいている。泉の様子を見てボランがぼやいた


「だが、一歩遅かったみたいだな」


   「「ヒャッハー!」」

       「「くたばりやがれぇえ!」」

「「シネェ!死ねえぇえ!!」」


 泉には多種多様な魔物が戦闘しひしめき合って戦闘している。その光景を見た真理が呆れたように言う


「そりゃ、ボスと主戦力が居なくなれば他の勢力に攻められるわよね」


 戦闘地帯から少し離れた場所から状況を確認し、ボランと真理は話し合いを始める


「ずいぶん長い間戦闘してたみたいだな。王国軍の奴らも気づいてるんじゃないのか?」


「多分ね。でも軍からしてみれば敵性勢力同士が勝手に潰し合ってるんだから、頃合いを見て漁夫の利を得ようとしてるんじゃないのぉ?」


「弱った所を一網打尽ってか? やれやれ、嫌だね人間は。戦った後の利益ばかり考えて戦いその物を楽しまねぇ」


「今回はその意見にさんせぇーい。祭りを楽しんで景品もあたし達で総取りよ! 総員戦闘準備!」


 真理の指令にハイエナ達が吠えて応えた


「「ウオォォウゥゥ!!」」


「あたしがライニールで範囲攻撃を撃ち込んで敵を弱らせるわ! 敵がこちらに来るまで手を出しちゃダメよぉ、戦力を分断させたいもんね。モブ共は合図を出したら突撃!」


「了解っす!」


「トーマス、アッシュはモブの後方に待機して抜けて来た奴らを叩いて! 装備が貧弱だからって弱気にならないでよ。その借り物の装備をぶっ壊す勢いで殺っちゃって! ゆうともあたしも怒らないわ!」


「へい!」 「了解です!」


「ボランは前に出ると邪魔だからここであたしの櫓がわりね」


「おい! オレにも戦わせろ!」


 反論するボランに真理は強く命令した


「ボスクラスが特攻して来たら他の奴らには押さえられないでしょ! 切り札なんだからここで待機!」


「ちぇッ、わかったよ畜生・・・・」


 ボランは渋々了承すると真理は続けて周りに指令を出す


「乱戦になったらライニンのピンポイント攻撃と回復魔法で支援するけどあまり期待しないでね♪ それじゃあデカいの一発かますわよ!!」


 「バチィッ、バチバチ、バチン・・・・」


 真理の身体の周りの空気がが魔力で歪み、真理は渾身の電撃魔法を放たれる!


「ラァイニィィィィルゥウ!!」


「バチバチバチバチバチバチバチバチバチバチバチバチバチバチバチバチィ!!!」

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