第114話 戦えポチィー

 闘技場で牙と拳を合わせたまま睨み合うポチィーとバリストン


「ちい!」


 バリストンは ”このままじゃらちが明かない” と判断しポチィーの口から拳を引き間合いを取った


「ワンワン♪」


 ポチィはまるで飼い主を追いかける様に元気よく、離れたバリストンに近づいた


「追ってきやがったか!」


 バリストンの攻撃! 姿勢を落とし横に薙ぎ払う様に蹴りをなった


「ワン!」


 しかしポチィーはジャンプして躱す


「ふん!」


 バリストンは首を噛まれまいと腕で防御したが


「ピョン」


 ポチィーはその腕に足を置いて飛び越えて行ってしまった


「このぉ・・・」


 バリストンは頭上を飛び越えて行くポチィーを睨みながら ”このワンコロめ、腕に食いついたらそのまま地面に叩きつけてやったものをっ!” と考えている


「ワォン?」


 着地したポチィーは振り向いて、バリストンの強張った顔を見て首をかしげている


「くっ」


 バリストンは ”機動力じゃ犬に敵わねえ。いつものメイスじゃ躱されると思ってあえて素手で挑んだが、自慢の剛腕も口で簡単に防がれるし、空中に飛んだ所を狙って叩き落とすのも無理そうだ。あとは足だの尻尾だの弱い場所を掴んで優位に立たないと・・・” と思考を巡らせ


「クゥン・・・」


 バリストンはポチィーのつぶらな瞳を見て ”そうだ! ヤツはしょせん飼い犬、ただじゃれてるつもりかもしれない。なら望み道り遊んでやろうじゃないか” と考え


「お手」


 バリストンのお手!効果は抜群だ!


「ワン♪」


 バリストンがお手を待つ姿勢を取るとポチィーは喜んで前足を置いた


「かかった!!」


 バリストンは ”今だ! このまま場外まで放り投げて・・・” と考えながらポチィーの前足を掴んで投げようとした瞬間


「ワン!」


 ポチィーのスキル”小さな巨人”発動


「んぐう!?!?」


 ポチィーはスキルの効果により筋力と重量が上がった。バリストンの手はポチィーの前足により踏み潰される。バリストンは19ダメージ受けた


「ベキベキベキベキペキィン」


「がぁ!あがぁあ!!こ、降参だもう勘弁してくれ!」


 バリストンは腕を潰されて降参し、司会の男がポチィーの勝利を宣言した


「バリストン選手リタイア! 勝者ポチィー!」


「ワオン♪」


 勇者はポチィーが対戦相手から退く様子が無いので呼び寄せた


「ポチィー!こっちおいでー」


「ワンワン!」


 ポチィーは勇者の元まで駆け寄って飛びついた


「お」


 勇者は腕を広げてポチィーを胸で受け止めたが


「よしよぉ・・・・んぐ!?」


 スキルの効果が残っていたポチィーに押しつぶされる。勇者は6ダメージ受けた


「オヤブゥン! コラ、離レロ!」


「グルルル・・・・ガウゥ!」


 ハイエナの声に反応してポチィーはハイエナに噛みついた


「アバババ!」


 ハイエナに13ダメージ


「救護班!」


 ルビックがひと声で救護班を呼ぶと、救護班がポチィーを引きつけ、その間に勇者とハイエナを回復した


「ほ~ら、こっちおいで。お肉だよ~」


「ホイニール!」


 救護班の範囲回復魔法、勇者とハイエナは全回復した。対戦相手のバリストンも別の救護班に回復され運ばれて行った。それを見た勇者はルビックに確認する


「戦闘後に回復してくれるんですね」


「ええ、危険なときは審判が止めに入りますので死亡率は0.01%ほどに押さえられています」


「死ぬときは死ぬんですね」


「どんなに対策を施しても、完全に死亡事故を防止できませんからな。今後さらに改善したいところですが・・・。次もその犬を対戦させますかな?」


「いいえ。流石にこれ以上レベルアップさせて暴走されるとまずいですし」


「そうですか・・・・」


 ルビックは ”ちっ! 強いヤツとぶつけてやろうと思ったのに” と思っていたところ、勇者が口を開いた


「そう言えばハイエナさん、今更ですが名前は何ていうんですか?」


「ナマエ? ナイヨ」


「無い?」


「直グ死ヌ奴ノ、名前ナンテ、覚エルダケ無駄デショ。兄弟ダト、生マレタ順番デ、呼ビ合ウケド」


 勇者はハイエナに言葉に動揺している


「ゲームだと雑魚モンスターってAとかBって表示されるけど、同じ魔物でもそれくらいの認識しかないのか・・・。でもそれだと不便ですし名前つけましょうか」


「ナマエ、クレルノ?」


 勇者は腕を組んでしばらく考え・・・ひらめいた!


「じゃあ・・・イヤゾアと名付けましょう」


「イャゾァ? ドンナ意味??」


「意味はありません! しかし、もう真面な遊びでは満足できない人の夢と希望が詰まってます。本来は違う読み方なんですが発音不可能なのでイヤゾアとします!」


「発音デキナイノヲ、ドウシテ名前ニ・・・。出世デキタシ、マァ、イイヤ。有リ難ク、名乗ラセテイタダキマス、親分!」


 カタコトハイエナはイヤゾアと名づけられた。名前が付いたことでモブからネームドに出世した


「では早速なのですがイヤゾアさん」


「ハイ、何デショ、親分!」


「ちょっと闘技場で戦って来てください、レベル上げて戦力アップさせたいので」


「エ?」


 ルビックは勇者の話を聞いて、係りの人間に合図した


「ほう、では協力いたしましょう。おい、このイアゾアを選手に登録しろ」


「かしこまりました」


 イアゾアは係りの人間に掴まれて連れられて行った


「エ、チョット! オヤブーン! 勝手ニぽちぃー使ッタ事、怒ッテルデスカ!?」


 勇者は笑顔でイアゾアを送り出した


「いってらっしゃーいイアゾアさーん。良い闘技場ですね、仲間の鍛練にここを使っていいですかルビックさん」


「いいですとも。ハハハハ」


 ルビックは ”フェアに戦わせる気は無いがな” と考えながら不敵な笑みを浮かべている


「ア!」


 イアゾアはルビックの悪意に気付いた


「親分! ソイツ怪シイゾ! 信用スルナ!」


 しかしイアゾアの声は勇者に届かなかった


「頑張ってくださいねー」


 ルビックはまだ不敵な笑みを浮かべている


「0.01%に入らないと良いですな。ハハハハ! では私は仕事がありますのでこれで」


「オヤブゥーン!」

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