第113話 犬とクズと闘技場

 食事を終えた勇者はハイエナとポチィーを探しに地下の闘技場に来ていた


「えーとルビックさん、彼らはどこに居るんでしょうか?」


「参加者はあちらの掲示板に書いてありますが・・・名前は有りますかな?」


 勇者は掲示板を見て名前を確認し、それらしい名前を見つけた


「あ、次の試合ですね」


「もうすぐ、次の試合が始まりますが止めますか? 係りの者の話では彼の負債は勇者様の稼ぎで十分返せる額のようですが」


「いいえ。せっかくだからちょっと試合を見てみましょう、面白そうですし」


 そうこう話している中に試合が始まり、勇者のパーティー仲間の1人?が対戦相手と共に闘技場に現れる


「さーて、では次の試合です!」


 司会の男が闘技場の真ん中で話し始めると観客席から歓声が上がる


「青コーナー、鋼の肉体を持つ男バリストン!!」


「ウォー! 捻り潰してやるぜ」


「そして赤コ-ナー、飛び入り参加の闘犬ポチィー!」


「ワン!」


 ポチィが紹介された時、関係者用のセコンド席で吠える一匹の魔物が居た


「ガンバルンダゾ、ポチィ! 親分ニばれル前ニ、稼ガナイト・・・・」


 勇者はハイエナをジト目で見つめている


「居ましたね・・・あそこに入れますかルビックさん?」


「本来なら関係者しか入れないのですが、いいでしょう」


 勇者はセコンド席に入り勇者に話しかけた


「ハイエナさーん、お隣良いですか?」


「ア、ドウゾ…、ッテ!親分ンゥ!?何デ、ココニ」


「試合の調子はどうですか?」


「エット、ソノ・・・」


「試合記録によれば順調なようです」


「バレテル!? ッテ、オマエ、誰?」


「ここのオーナーだ」


「エエ!?」


 ハイエナは今一番会いたくない二人に挟まれて怯えている。そうしていると司会の男が選手の詳しい紹介を始めた


「いつも豪快なメイス裁きを見せてくれるバリストン選手ですが、今回は相手が武器を持たないのならオレも持たん!俺の肉体は獣の牙や爪に匹敵する!と豪語し素手での挑戦になります」


 司会の紹介を聞いた勇者とルビックの反応は


「確かに良いから身体してますね」


「筋力だけですべてを薙ぎ倒すのがキャッツフレーズの、うちの名物選手ですから」


 続いてポチィの紹介が始まった


「対するポチィ選手は本日初参加! 前回の戦いでは対戦相手が投げ捨てた両手剣の鞘をフリスビーを追いかける様にキャッチ! そのまま対戦相手の元まで戻って来たと思うと咥えた鞘で対戦相手の膝を砕き見事勝利を収めました! さらに試合が終わると喜ぶ飼い主に噛みついて振り回し、何度も地面に叩きつけるどう猛さを見せつけました!」


 それを聞いた勇者はハイエナに質問した


「飼い主ってハイエナさんの事ですよね。大丈夫でしたか?」


「エエ、ナントカ。回復シテ、クレタカラ・・・ウン」


 さらにポチィーの紹介は続く


「可愛らしい外見に騙されたら最後! 飼い主は魔物ですが一体どんな調教をしたのでしょうか? 本日のダークホースです!」


 ポチィの紹介を聞き終わった勇者とルビックとハイエナの反応は


「本当の飼い主は僕と真理さんなんですけどね」


「対戦記録を見るに、かなり鍛えた様ですな・・・」


「アワワ・・・」


 ハイエナは固まりオドオドしている。さらに司会が掛けの説明を始めた


「では皆さま、お手元の掛けたい選手のコーナーと同じ色のカードに記入しチップ共に係りの者に渡してください。半券は換金する際に必要になりますので無くさない様お願いします」


 賭けの説明を聞いた勇者は自分の席にもカードがあるのに気付いた


「僕も賭けていいですか?」


「もちろん。だたしセコンド席に座っている以上は相手選手に賭けないでください。セコンドが自分の負けに賭けると試合が盛り上がりませんから」


 ルビックは ”よし!そのまま破産しろ” と思いながらにこやかに勇者に説明した


「はい、ポチィにしか賭けられないんですね。ポチィーに1000ゴールドお願いします」


 勇者の声で係りの人間がカードを取りに来きて、静かにカードとチップを受けとって去って行った。そして試合のゴングが鳴る


「それでは皆さんよろしいですね? それでは試合開始です!!」


「カァン♪」


 ゴングが鳴ると共に司会が闘技場から下がって実況席に移動し、選手が睨みあう


「貴様の凶暴性は十分理解しているからな。手加減しないぞワンコロ!」


「ワン♪」


 ポチィーはバリストンの言葉に尻尾を振りながら笑う様に吠えた


「舐めやがって!」


 バリストンの攻撃! 鋼の様な拳がポチィを襲う


「アン♪」


 ポチィーはバリストンの拳を口で受け止めた。バリストンは3ダメージ受けた


「このッ!」


 バリソンは怯まず拳を押し込んだ


「クゥ~ン」


 しかしポチィーは尻尾を振っている。効果は無い様だ。その様子を見たルビックは ”あの駄犬しぶといな” と思いながらも呟く


「体重が4倍は上の相手でも全く引けを取りませんな」


「いつもは40倍以上は離れてるのを相手にしてますからね。でもポチィーってあんなに強かったっけ?」


 ハイエナは勇者の言葉に反応し口を開いた


「親分ハ、知ラナイノカ・・・」


「知らないってなんです?」


「前回ノ戦イデ、弱ッタ獲物ヲ狙ッテ止メを刺シテイタ事」


「へぇ~、そんな事してたんですか・・・」


 ポチィーはいつの間にかレベル9になっていた


「ガウゥ!」


「ポチィーのあのテンションって、やっぱ暴走気味になってるのかな?」

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