第111話 撃滅ゲームオーバー

 高レートスロットマシンに挑戦するも惨敗を続けた勇者だったが当たりを出し、戦況が変わった。ルビックが勇者の言葉に反応する


「覚えたって何をです?」


「スロットの絵柄です。ルーレットの円盤が大きい分、絵も多いから覚えるのが大変でしたよ」


「覚えたって・・・目で追えていたのですか!?」


「はい。でも見えてから押したのでは間に合わないので順番を憶えさせていただきました」


 勇者はそう言って多めにコインを入れてスロットを回す


「ガッ、ギャン!ギュルルル!」


 勇者はテンポよくスロットのボタンを押し、ルーレットを止めた


「カッカッカッ!」


   「ジャララララララ・・・・!」


 スロットが当たり勇者は満足そうに頷く


「よしよし、タイミングはこれで間違いなさそうだな」


 ルビックは勇者を見て ”コイツ、スロットから目を離さなかったのはそう言うわけか! だがそれだけでこの台に勝てると思うなよ” と思い見守った


「ガッ、ギャン!ギュルルル!カッカッカッ、ジャララララララ!」


「ピロロロン♪」


 勇者が10回ほど連続で勝っているとスロットから音が鳴り、ボタンの下にメーターが現れた


「なんだこれ? まあいいか」


 スロットを動かすとメーターは左右に動く


「ガッ、ギャン!ギュルルル!カッカッカッ」


 勇者はスロットを外してしまった


「あ、これもしかして」


「ガッ、ギャン!ギュルルル!」


 勇者は何か思う事が有り、再びスロットをして確認した


「カッカッカッ・・・」


「やっぱり、下のメーターはルーレットを止めるラグに関係してるんですね。真ん中で止めればぴたりと止まると・・・ボタン押そうとすると手でメーターが見えなくなる様に作ってるのがいやらしい。だけど・・・」


「ガッ、ギャン!ギュルルル!カッカッカッ、ジャララララララ!」


「こういうタイミングを合わせるゲームは何かとやって慣れてるんですよね。ちゃあ、しゅう、めんッっと」


「カッカッカッ、ジャララララララ!」


 勇者は難なくスロットを当て、その様子を見たルビックは ”クソオォォ! 少しは動揺しろよ!” と思い歯噛みした


「ジャララララララ!」


「さあ、ドンドン行きま・・・あれ?」


  順調に勝ち進んでいた勇者だったが、突然スロットが止まり奇妙な音を立てた


「ガコッ、ガキィン、ガコガコン!」


 そのスロットを見て勇者は驚きの声を上げる


「ルーレットの絵柄が入れ替わった!?」


 まるでルービックキューブの様に絵が組み変わった。ルビックは高笑いを上げて勇者に告げる


「ハハハハ!どうです! このプレイヤーを心をへし折るギミックの数々は! いかに勇者と言えど・・・」


「これは面白い台ですね」


 勇者は目を輝かせてスロットを回し続けた


「ガッ、ギャン!ギュルルル!ガッ、ギャン!ギュルルル!ガッ、ギャン!ギュルルル!」


 更なる試練を前にしたにもかかわらず、初めとはうって変わって喜々としてスロットを続ける勇者にルビックは ”無理やりにでもゲームに参加させて搾り取る算段だったが、これは流石に…” と思いながらも疑問の声を上げた


「ゆ、勇者様? 難度が上がっても賭け率が上がるわけでは・・・」


「そうみたいですね、それが何か?」


「いえ、賭け事ですので、損失が大きくなれば普通止めるのものでは」


「そんな事言ったらこれで遊べないでしょ」


「いえ、そうかもしれませんが・・・」


「ものによりますけど、難易度が上がっても必ず報酬が増えるとは限り合せん。ゲームってそういうものでは?」


「ガッ、ギャン」


 勇者はそうルビックに答えてゲームを続ける。ルビックは ”思考が全く読めん。純粋に楽しんでいるとでも言うのか?” と思いながら見守った


「ガコッ、ガキィン、ガコガコン、ガココ、ガガガ」


 しばらく回しているとスロットは絵柄を入れ替えながら回転し始めた


「また、難易度が上がったな・・・。心が折れそうだ」


 勇者は不敵な笑みを浮かべている


「そう思うのなら止めたらどうですか!?・・・・ん?」


 裏返った声を出してしまったルビックは気配を感じ後ろを振り返ってみると・・・


「おい、見えねえぞ、もう少しかがめよ」


「俺の上に乗るじゃねえ! このやろッ」


「あのスロットこんな仕掛けになったんだなぁ」


 勇者のスロットをしてる姿を見る為にギャラリーが集まっていた。ルビックは直ぐに従業員に指示を出す


「ギャラリーを下がらせろ! ゲームの邪魔をする振る舞いはご法度だぞ」


「は、はい! いい加減下がれ!出禁にするぞ貴様ら!!」


「良いじゃねえか静かに見るからさぁ」


「静かになって無いから問題なんだろうが!」


「お、おい見ろ!スロットが光り出してたぞ」


 ギャラリーの声を聞いてルビックが振り向くと


「ピカァァァ・・・」


 スロットは見たことまない姿に変形していた


「ふひひ・・・また難易度上げてきましたね。負けませんよぉ、ハハ」


 勇者はハイになり、精神はどこか遠い世界に旅立ってしまった雰囲気を出している。ルビックはその光景を見て驚愕した


「こ、これがエデン・ザ・フィーバーの最終形態!? 25年前に一度だけ発現した機構か!」


「それそれ、ドンドン行くぞ~ぉお」


「ギャアルルルルルル!」


 奇怪な音を出し、ルーレートは上下だけではなく横、斜めに動き勇者を翻弄する


「ガッガッガ」

   「ジャラララ・・・・」


 もはやスロットと呼んでいいのか分からない物体に勇者は挑んでいきついに・・・


「パララララ♪」


 スロットは音楽を鳴らして、文字を浮かび上がらせた ”楽園への門は開かれた” と


「ジャララララララ・・・」


 チップを垂れ流すスロット、そしてスロットは変形を止め元の形に戻っていた


「はぁぁぁ・・・・」


 声にならない声を出してぼぉ~っとする勇者に、ルビックはギャラリーと一緒に拍手し褒めたたえた


「「パチパチパチ!」」


「流石です勇者よ! まさかこのスロットをクリアなさるとは! このルビック完敗です! おい!誰か祝いのシャンパンを・・・」


「まだです」


 勇者はそう力強く呟くと、再びスロットを回し始めた


「ガッ、ギャン!」


「ゲームはですね、クリアしてからが本番なんですよ! くっ難度が初めに戻ったか」


 そう言って勇者はゲームを続ける。ギャラリーは再び盛り上がる


「よしいいぞ!そのまま全部搾り取っちまえ!」


「お、てことは初めから仕掛け全部見れるって事か」


 ギャラリーの歓声の中、ルビックの声が虚しくかき消えた


「もう勘弁してくれえぇぇ!」


 勇者は ”スロット中級” ”スロット上級” ”スロット名人” ”マゾゲーマー” の称号を手に入れた


 運が18上がった


 耐久力が5上がった

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