第110話 ゲーム・マシン

 カジノに行った勇者は、スロットで遊んでそこそこ勝ったので帰ろうとしたのだが。ルビックにすすめられ高レートのスロットマシンに案内された。その名も・・・・


「よくぞ、わたくしの挑戦を受けてくださいました勇者様! 我がウィルソンカジノの目玉ゲームの1つ! エデン・ザ・フィーバーです!」


 宝石と黄金が輝き、台に仕込まれているであろうオルゴールが鳴り響く大きなスロットマシンを見た勇者は、素直な感想をのべた


「おー、いかがわしさ全開のデザインですね」


 勇者の言葉でルビックは精神に1ダメージ受けた


「うっ…、正直わたくしも思いますが職人の趣味でらしくて」


「職人?」


「ええ、腕は良いのですが変わり者で。これでも大分ましになっているのですよ」


「こうなる前はどんな感じだったんですか?」


「初期型は椅子にトゲがついていて、スロットを失敗するたびに使用者の血液を吸血するギミックがあり・・・」


「死のゲームですか!?」


 スロットの席に座ってしまった勇者は青ざめた表情でルビックに言った。ルビックは作り笑いで答える


「いえいえ、負けが続いて出血量が致死量一歩手前に達すると強制的にマシンがストップしゲームオーバーになる安全装置がついてました、一応。この台は安全ですのでご心配なく」


「ご心配なくと言われても・・・。今初期型って言いましたよね? そんなのが他にもあるんですか」


「ええ、吸血の代わりに椅子の温度がドンドン上がったり、電撃が流れる様になってたり・・・どれも似たようなもんです。これでも一部の熱狂的なマニアがついてる名台なんですよ」


 勇者はルビックの説明に頭を抱えている


「一体何を思って作ったんですか、そんなもん」


「本人いわく… ”俺の台に勝負しに来るヤツは歓迎だか。ダラダラ遊びに来る奴はお断りだ” だそうで」


「やるなら全力で来いと?」


「ですから勇者様に是非挑んでいただきたいのです。なかなか面白い台でしょう?」


 ルビックは ”この台を制覇した人間は過去1人も居ながな!今稼いだ金をすべて溶かすが良い!” と思いながら笑顔で勇者に言った


「ふ~ん、まあ取りあえずやってみます。使い方は基本的には変わらないんですよね?」


「はい、一般的な台との違いはプレイして確かめてください」


「ガッ、ギャン!」


「ギュルルル!」


 スロットは高速回転しで勇者の目を翻弄する


「早っ!? 取りあえず止めるか」


「カッカッカッ」


 絵柄はそろわず、勇者は悔しそうに台を見つめた。ルビックは不敵に笑い勇者に言った


「どうです、なかなか難しいでしょう」


 勇者は台を見つめながらルビックに言った


「スロットが回転する速度が速いだけじゃありませんね。ボタンごとのルーレットを止めるラグもバラバラなってますし」


 ルビックは ”鋭い…こいつ、スロットの設定をばらしてイカサマだと騒ぐ気ではあるまいな” と思い勇者に聞いた


「台にご不満があるのでしたら、別の高レート台に行きますか?」


「いいえ、このまま行きます」


「ガッ、ギャン!」


 勇者はスロットを回す最低額のチップを入れて回し続けた。だが一回も絵柄話そろう事もなくどんどんチップが減って行く


「カッカッカッ・・・・・ガッ、ギャン!ギュルルル!カッカッカッ・・・」


 ルビックはその様子を見て ”ふへへ、下手な強がりをした罰よ。そのまま負けつ続ければいい! ついでに私に借金でもしてくれれば万々歳だ” と思っていたが


「ピロリン♪」

   「ジャララ」


 絵柄が揃っって少額を吐き出すスロット、その様子を見た勇者は


「コレは音なるんですね」


「おめでとうございます勇者様」


「いいえ、偶然そろっただけですよルビックさん」


「え・・・あ」


「ガッ、ギャン!」


 勇者はスロットから目を離さなかった。何て事もない様にルビックにそう言って、勇者は再びスロットを回すのだった




「ギュルルル!カッカッカッ、ガッ、ギャン!ギュルルル!カッカッカッ、ガッ、ギャン!ギュルルル!カッカッカッ、ガッ、ギャン!ギュルルル!カッカッカッ、ガッ、ギャン!ギュルルル!カッカッカッ・・・・」




 たまに偶然そろう事もあるが、勇者は眉一つ動かさず喜んでいる様子は無い。魂の無いガラスの様な瞳で、負けて負けても淡々と続ける勇者を見て流石に不安になったルビックは勇者に話しかけた


「あの、勇者様? コインを多く入れれば中心線だけではなく、上下線や斜めでも当たりますので試されてみては」


「いいえ。知ってますがこのままでいいんです今は、もうすぐ済みますから」


「え?」


 ルビックが勇者の言葉に混乱していると―――


   「カッカッカッ!」


   「ジャララララララ・・・・!」


 ――――スロットはチップを勢いよく吐き出した。勇者はふっとひと息ついて呟いた


「ふう・・・やっと覚えたぞ。・・・・彼女なら仕込んでる気がしましたよ」


”スロットを100回まわしました。称号、スロット初級”


 勇者の運が1上がった

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