―――敵意まみれの勇者の休日―――
第108話 がんばれ!勇者対策委員会
窓を閉め切った薄暗い部屋の一室で、下級貴族達が机を囲む秘密の会合が開かれていた
「皆、集まったな。では始めるとしよう」
この会合に集まった者達の目的
「では議論しようではないか…。あの勇者を、どうするべきかを!」
勇者ゆうとを秘密裏にどう扱うか話し合う為だった
「あの勇者が…ユートとか言ったかな? 彼が貴族になったと言うのは本当かね?」
「ああ、どうやら間違いない様だ。テント内で王と誓いを立てた所を、私の密偵が確認している」
「正式な発表はいつだ?」
「分からん。だが、士気向上の為に大々的に行うはず。となると」
「北に前線基地構築した事を国民に発表すると同時に行う・・・か」
「だろうな。その発表がある前に我々もどう動くか決めねばならん」
「勇者に取り入り生き延びるか、排除し地位を守るかですな」
下級貴族の全員が押し黙って考え込んでしまった。しばらくしてその中の1人が考えを整理する為、独り言の様に語った
「・・・魔物を倒し名誉と力を得た戦士達。その中のもっとも英雄的な者が王となり、その下に力ある者が貴族として集まり国を作った。力なき民衆を守ると言う条件で」
彼に続いて他のメンバーも一人一人と口を開き始めた
「そう我々の先祖が作り出した貴族社会の原型・・・。民衆を守ると言う名目で魔物を狩りさらに力と支配力を高め、民衆は安全を保障される代わりに貴族に奉仕する。その代わり平民は
「ライバルの発生を抑止しつつ自らの地位を維持するいい体制だ。だがそれでも力を付けるものが出てくるのは避けられん、そう言った者は貴族に迎えられる。今回の勇者の様にな」
勇者と言う言葉に反応し、1人が声を荒げて発言した
「その勇者、貴族に迎えられる程の力はないのではないか? 功績はあっても戦闘するたびに死にかけてると言う話じゃないか!忌々しい!!」
「しかしだ、我々には決定権が無い。新たな貴族を迎えるには、王と上級貴族の4名以上の承認が必要だ」
「クプウルム王国建国時の5人パーティーの頃からの法律ですな」
「ゴードン、ベルモッド、ルーファ、ガウェン、エドワルズ…。抜け駆けした貴族はほぼ賛成派だったと言う事かッ!クソッ!」
怒る者をなだめる様に強く発言した
「落ち着け!そうだ、確かに勇者には本来貴族になるほどの力は無い! だがな!魔物が優勢になり民衆を危険にさらし、貴族社会は崩壊しかかっている! 勇者を貴族にしたのは民衆を落ち着かせる為のパフォーマンスだ!」
他のメンバーも静かになり、話に耳を傾けた
「それに合わせて、民を守れなかった咎で貴族の身分をはく奪される家が出てくるだろう。恐らくこの中から、もしくは全員とも考えられる! 我々が街になだれ込んで平民の仕事を奪ってしまった為に不満が溜まっているからな」
他者をただめるはずが、この発言をしている者も熱が入ってしまい熱く語った
「我々の身分を守る為!この忌々しい勇者をどうするか!その為の会合だろう!さあ、皆の意見を聞かせ・・・・」
「コンコンコンッ」
そんな中、突然響いたドアをノックする音で話は中断された
「なんだ?」
ドアについた拡声器から使用人が会合に集まった者たちに告げた
「お話の途中に失礼します。このカジノに勇者が現れました」
使用人に話を聞いて下級貴族達が声を殺しながら騒ぎ始めた
「なんだと!?」
「まさか感ずかれたのでは!?」
皆が騒ぐ中、使用人が尋ねる
「追い返しますか?」
「いや、私が直々に会いに行く。皆は裏口から外へ」
「わかった!」
このカジノのオーナーを残し、会合に集まった下級貴族達は去って行った・・・・
「へー、色んなゲームがあるんですね。あ、スロットもある」
勇者がカジノの中をうろついていると、派手な格好をした貴族が勇者に話しかけて来た
「これはこれは勇者様、よくお越しくださいました」
「誰です?」
「わたくしはこのカジノのオーナーのルビック・ウィルソンと申します。以後お見知りおきを」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます