第105話 勇者達、道具屋へ行く

 街に着いた勇者達はまず道具屋に向かった。


「いらっしゃい・・・って、お前か」


 中に入ると、道具屋の店主が挨拶して来たが勇者の顔を見るなり疲れた表情になった。勇者は構わず挨拶をして中に行った。ほかの面々も


「おはようございます、道具屋のオジサン」


「ドウモ」


「ワン!」


 店主は勇者のパーティを見て頭を抱えている


「ついに、連れてる連中が人間ですらなくなりやがった・・・」


「そんな事よりオジサン、薬草を売りに来たのですが」


 勇者は店主に薬草の入った袋を渡した


「ん、あのお嬢ちゃんからか? 魔法使ってもこんな短期間じゃ育たないだろ」


「道中に色々拾ってましたから、その時の物かと」


「まあいい、取りあえず見せてみな」


 店主は一束づつ丁寧に品質を確かめてた


「ふむ・・・ちゃんとまとめられているな・・・・・品質も問題なさそうだ。よし、こんなもんでどうだ?」


 勇者は486ゴールド手に入れた


「鑑定早いですね」


「同種、同品質の物でまとめてくれてたからな。あの嬢ちゃんに礼を言っといてくれ、医薬品は何かと入用だからこれからもよろしくと」


「はい、伝えておきます。傷薬の補給もお願いします」


「はいよ。またほとんど空になってるじゃないか、無茶するなよ」


 勇者は30ゴールドを払い傷薬を補給した


「これでよし、他には?」


「MPを回復させるアイテムはありませんか?戦闘中に切れて苦労することが何かと多いので」


 勇者の注文に店主は困った顔で答えた


「魔力の回復を早める香草はあるが・・・戦闘中に補充できる様なものは無いな」


 店主の答えに勇者は動揺した


「無いんですか!?」


「ああ、魔術師なんかは前もって自分の魔力を魔具に溜めておいて、不足したら補充できるらしいが、そう言う特殊なもんはウチには無い」


「げぇ!MPがそんな貴重なものだったなんて・・・・とりあえずその魔力の回復を早める香草と言うのを見せてください」


「はいよ」


「コトンッ」


 店主は品物をバーに並べて説明を始めた


「これなんかどうだ?このパイプに葉を入れて火をつけて吸引するタイプの物だ。もっとも普及しているタイプで吸うのにコツがいるが、安く済むし長く吸える。じっくり精神を安定させたい時はもってこいだ」


「へー・・・なんかこの香草の匂い嗅いだことあるような気が」


 勇者は首をかしげている


「魔力の回復目的じゃなくても嗜好品として吸ってる奴は多いからな、それをどっかで嗅いだんだろ。パイプを使わず香草自体を巻いて棒状した物や、紙で巻いた物もあるぞ、これは値段が張るがな」

 

「とう言うかオジサン」


「なんだ?」


 勇者はこの見覚えがあるアイテムの名前を言った


「これタバコですよね?」


「なんだ知ってるのか」


 勇者は ”やっぱりそうか。それとも翻訳スキルで訳されただけで別物かな?” などと考えながら答えた


「僕の世界にもありましたから・・・」


「ほぉ、異世界由来の植物だと聞いていたがお前の世界の物だったのか!それじゃあアレか?天井に穴の開いたテントの中で仲間と回しながら吸ったりしてたのか?煙と一緒に天へ願いを届かせるとか・・・羽飾りを付けて」


「いいえ、それは僕が住んでた国の風習は無いですね・・・・」


「何だそうなのか」


 勇者は ”話から察するにインディアン事かな?インディアンが勇者として召喚されたのか、タバコを持って?僕全裸で召喚されたのに・・・日本人以外にも召喚されてるんだなぁ” と考えていると店主が別の商品をすすめて来た


「タバコ意外だと乳香なんかのインセンスがあるが、直接吸うタイプじゃなく香にして焚くものだから旅では使いづらいな」


 ハイエナがその商品を見て勇者に言った


「ソレ、ウチに有ル、今補給シナクテモ、ダイジョブ」


「ああ・・・魔王ごっこで焚いてたアレか。それなら買わなくてもいいですね」


 勇者はあの時の光景を思い出して遠い目をしている。店主は勇者に話しかけた


「じゃあ、どうする?今日の所はこのまま帰るか?」


「あっ、待ってください、このハイエナさんに傷薬を・・・・」


 ハイエナは首を振った


「オレ無理、フタ開ケラレナイ、塗ルノモ、爪ガジャマ」


「そうですか、じゃあ今日はこれで帰ります」


 勇者の言葉に少し嬉しそうに店主は言った


「お、そうか、じゃあな。入用な物が出来たらまた来な」


「はい、また来ます」


「バタン」


 勇者達は道具屋を後にした


「ふうぅ~・・・…帰ったか」

 

 店主は大きくため息をついて安堵したが、すぐに気を引き締めた


「待てよ、また勇者が帰った後に変な客が来ないだろうな!?ん?ん!」


 店主はそっと外の様背をうかがい、客が来ないのを確認した


「よし、今度こそ大丈夫だ。やれやれ・・・」


 店主は椅子に座って背筋を伸ばす。目の前には勇者にすすめたタバコがあった。それを見た店主は


「久し振りに吸ってみるか。薬草も仕入れらたし、薬にして売ればいい稼ぎになるだろうし・・・前祝いだ」


 店主は葉巻にランプで火を付けてひと息ついた


「ふぅー・・・・平和だ」


「ワン!」


 店主の言葉に答えるかのように、ポチィーは元気よく吠えた


「・・・・・・・はぁ!?」


 店主はポチィーを抱え、店を飛び出した


「おいぃ!!犬忘れてんぞ!いぬぅうぅぅうぅ!!」

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