第104話 勇者、街に戻る

「ツンツン・・・」


 殺気立つボラン達を見送った勇者は不意にアレクシスに肩を叩かれて後ろを振り向いた


「さあ、ユート様スープをどうぞ、出汁とりが不十分ですが味を調えました」


「ありがとうございます。ゴクゴク・・・・」


 勇者は亀出汁野菜スープを飲んだ。体力が一時的に上がった


「うん…下級兵のスープと違って味が整っていておいしいですよ」


「おお!お褒め言葉ありがとうございます」


 勇者は ”そういえば、この世界に来てから初めてまともな料理を食べた気が・・・でも出汁が魔物だしなぁ、これもまともとは言い難いか?” と考えているとハイエナの一人が勇者に話しかけた


「オヤブン、オヤブン。コレ、まりカラ、ワタシテクレって」


「あ、どうも」


 勇者は各種薬草の入った袋を受け取った。中の薬草は乾燥されていて一束づつ丁寧にまとめられている


「道具屋ニ、売ッテクレ、ダッテ」


「ありがとうごさいます、前に渡しておいたアイテムと合わせたら良い値段になるでしょうからこれで皆の装備を・・・・」


「ア、ソレ、使ッチャッタって」


「え?」


「必要ナ道具ソロエル、ノニ使ッタッテ。ソノ薬草デ取リアエズ、ドウニカシテッテ、言ッテタ」


「なんだって!?・・・はっ!」


 当然ながら真理はボラン達と一緒に出発したためもう居なかった


「どさくさに紛れて逃げたな真理さん・・・・」


「後デ、返スって」


「まあ、いいか・・・・薬草畑があるとこの先便利でしょうし」


 真理の事を諦めて出発しようとした勇者の前ににアレクシスが立ちふさがった


「ユート様、街に行かれるのでしたらボクもご一緒に」


「いえいえ、アレクシスさんも追放されてるでしょう!街に入れないですよ」


「いやいやいやぁ!しかし護衛が居ませんと、ユート様の身の安全がッ」


 勇者は迷ったが、アレクシスの提案を渋々受け入れた


「う、う~ん・・・じゃあ北門の外で待ってもらう事になりますが、頼めますか?」


「はい喜んで♪」


 カタゴトハイエナと他一匹も勇者に声をかけた


「オヤブン、オレモ行ク」


「ワン!」


「ハイエナとポチィーも付いてくるんですか?。別にいいか、よろしくお願いします」


「では出発しましょう♪」


 勇者一行は街に出発し・・・


「テクテク・・・」


「大分歩きましたが魔物が出ませんねぇ・・・」


「地面の様子を見るに、王国軍の輸送隊が定期的に通っているせいでしょう。それでも気話抜いてはいけませんよ!ユート様」


「テキ、警戒シテルダケ、ニオイスル」


「ガルルル・・・ワン!」


 ・・・・道中何もなく勇者達は北門にたどり着いた。すると門の前で馴染みの顔が勇者を出迎えた


「勇者さん、おかえりなさい」


「ゴードンさんお久しぶりです」


 ポチィーはゴードンに元気良く吠えて尻尾を振っている


「ワン!」


「お、マリー嬢ちゃんが連れてたワンコロだな。よしよーし」


 ゴードンはポチィを撫でまわしている。ポチィは気持ちよさそうだ


「ア、オレモ」


「お、なんだ、もう一匹いたのか。よしよし」


 ゴードンはつられて、ポチィの隣に座った毛の生えた物体を撫でた。その感触にゴードンは首を傾げた


「ん…ずいぶんとガタイの良い犬だな」


「犬チガウ、オレ、はいえな」


 カタコトのハイエナの言葉に、やっとゴードンは自分が撫でてる物体の正体に気付いた


「て!魔物じゃないか!」


 動揺するゴードンに勇者は素っ気なく聞いた


「ゴードンさん、ハイエナさんと一緒に入っていいですか?」


「えっ、あ、はい、構いませんよ。ですが絶対にお連れの魔物から離れないでください、不審者と思われたら事ですから。こちらの書類にサインをお願いします」


「はい。えーと・・・従者一匹っと。これでいいですか?」


「・・・はい、いいですよ。」


 勇者はゴードンに言われるまま書類にサインし、後ろのアレクシスに声をかけた


「はい。じゃあアレクシスさん、いつ戻るか分かりませんしもう帰っても・・・」


「いえ!待たせてもらいますよ。野宿が出来る分の装備は持っていますので、ボクの事は気にせず御用を済ませて来てください」


 勇者が後ろを見た時にはすでにアレクシスはテントを張っていた


「そ、そうですか?じゃあ遠慮なく・・・・」


 ゴードンは渋い顔をしている


「一応罪人がこんなに堂々と門の前に居られると・・・いや、中に入れなきゃいいんだからギリギリセーフか?」


 勇者は悩むゴードンに再び声をかける


「じゃあゴードンさん、僕達は行きますね」


「あ、はい。これ持って行ってください、兵舎の箱の鍵です。あの部屋は引き続き自由に使ってもらって構いませんので」


 勇者はゴードンから鍵を受け取った


「はい、ありがとうございます」


「じゃあ勇者さん、お互い時間がある時にまた一緒に飯でも食いましょうや」


「はい、じゃあ行ってきます」


 勇者達は街の方へ歩いて行った。その道中、勇者は受け取った鍵を見ながら呟く


「ゲームに出る鍵と一緒で大きいな・・・昔の鍵って皆これくらいなのか?魔法陣みたいな模様も彫ってあるし」


 勇者は魔法の箱マジックボックスの鍵を手に入れた

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