第103話 食べ物で遊ばないように!

 トーマスとアッシュの様子を見るついでに食事を取ろうと屋敷を出た勇者達


「あ、居た。トーマス!アッシュ!まだ落ち込んでるのぉ?」


 真理に声をかけられた地面に座っていた二人は、声にゆっくりと反応し立ち上がった


「ああ、マリー隊長おはようございます。ご心配おかけしました」


「まっ、追放処分って事でショックではありましたが。まあ生まれ変わったつもりで一から頑張ろうと二人で話していた所です」


 真理はアッシュの言葉を聞いて笑って答えた


「はは!過ぎ去った過去に戻りたいと思う時もあるけど。何もかもかなぐり捨ててがむしゃらにやればどうにかなっちゃうもんよ、あたしが保証するわ」


 真理に続いて勇者も口を開いた


「そうだな・・・そうかもしれませんね。これは勇者が二人増えたことになるんでしょうか?」


 勇者の言葉を聞いて二人は笑った


「ははは!勘弁してくださいよ」


「流石にお二人ほどやれる自信は無いです」


 二人の返事を聞いて勇者も笑った


「ははは、それは残念です。ん?トーマスさん装備はどうしたんですか?」


「没収されました。流石に正規兵の格好をしたままうろつかれたら困るそうで」


「装備を取られなかったのは、ほとんど自前の装備だったアレクシスくらいですよ」


 アッシュの言葉を聞いて考えた後に質問した


「装備をどうにかそろえないといけませんね。そう言えばそのアレクシスさんは?」


「あっち、でなんかもめてますよ」


 トーマスの指差す方向を見た勇者の目に映ったものは・・・・


「待ちなさいボラン!それはまだ生ですよ!」


「放せ鍋野郎!ちょっとこいつらに聞きたい事があるんだ、邪魔すんじゃねえ!」


「ぐわ!ブクブク・・・ぐわっ!」


 新しい大きな土器の中のカメを取り合うアレクシスとボランの姿だった。二人の間で引っ張られている亀の魔物は、拷問の様に自らのダシが染み出たスープに顔を何度も沈められている


「ブグブグ・・・・ぷはっ!殺すんなら殺せ!ふざけッブクブク…」


「ちょっとアレクシスさん」


「おお!ユート様、少々お待ちを!スムーズに調理が進めば30分程度で・・・」


「いいえ、放してもらえませんかアレクシスさん、朝食はもっと別の物でお願いします」


「そうユート様がおっしゃるのでしたら」


 アレクシスは掴んでいた亀の首を離した


「ぶはぅい!ふぅ~・・・助かった」


「助かるかどうかは、キサマの返事次第だ」


「ひえ!ボラン」


 スープから解放されてひと息ついた亀をボランは睨みつけた


「ちょいと水が必要でな、真水がある場所を吐け!亀なら水場に住んでんだろ!」


「仲間の居場所を吐けってのか!死んでもお断りだ」


「ほう、じゃあ言いたくなるほど痛い目に・・・いや、まてよ…そう言う事か」


 ボランは何か考えている。不安になった亀はボランを問いただした


「なんだ、何を考えている!?」


「おい、縄張りの場所を素直に吐け。今人間共の軍の連中が水源を求めて探し回ってる、奴らに見つかったらキサマの群れは壊滅させられるだろう」


 亀はボランの話を聞いて、王国軍のテントをちらっと見て動揺している


「くっ!だがお前らに見つかっても同じことだろうが!」


「いや、俺達のボスは仲間になりそうなら仲間にしろと言っている。抵抗すれば速惨殺だが人間共に見つかるよりましだろう」


「な、貴様らを信用しろと?」


 ボランは不敵な笑みを浮かべながら聞いた


「ババルは一度お前らの所へ帰ったじゃないか。どっちがいい?可能性のある方を選んだ方が利口だと思うがなぁ」


「くッ・・・他の仲間と相談を…」


 弱気になる亀を更にボランは威圧した


「ダメだね。もう軍の連中は偵察隊を出してる、のんびり相談してたら先越されちまうぜ」


「うっ…うう・・・…わかった、案内する」


 ボランは亀の返事を聞いて仲間に号令を発した


「よーし野郎共!40秒で出発の準備をしろ!」


「「ヒャッハー!」」


 ハイエナ達は雄たけびを上げた!だがボランは続いてこうも言った


「あ、雑用がある奴は残れ」


「「ええー!?」」


 一部のハイエナ達からブーイングがあがった。その声に負けない様に真理が声を上げた


「はーい!あたしも行くわよー!」


 勇者は不貞腐れている


「真理さんも行くんですか、僕も行きたかったなぁ」


「はは、忙しいから無理でしょ、ゆうとは」


「シュミレーションゲームは得意じゃないんだけどなぁ」


「あ、それっほい。90%が当たらない!とか言いながらコントローラー投げちゃいそう」


 勇者は嫌な事を思い出したのか、暗い顔をしてぼやいた


「ははは・・・・必中の心と閃きを常備したいですよ本当に。それはともかく行ってらっしゃい」


「はーい、行ってきます。ほらあんた達も来るのよ!」


 真理はトーマスとアッシュの襟首をつかんで引っ張った、二人は抵抗してもがいている


「え!?俺達も!?」


「ろくなな装備もないんですよオレ達!」


 真理はなんでもない様に答えた


「石でも拾って投げればいいでしょ。不安がある時はとにかく動いてスッキリさせる!」


「「そんな!」」


 勇者は二人を引きずる真理を止めた


「装備が無いのは流石にまずいでしょう、手持ちの装備でどうにか補強しましょうか。はいトーマスさん」


 勇者はトーマスにバーバリアンクラブと鍋を装備させた


「それもそうね、じゃああたしからは…はい」


 真理はアッシュに棒を装備させた


「じゃあついでに」


 勇者は鍋の蓋をアッシュに装備させた


「これで良し、じゃあ改めて行ってらっしゃい」


「もう丸腰じゃないんだから文句ないでしょ?しゅっぱーつ♪」


 真理は二人を引っ張って行った。二人は混乱している


「え?俺の棍棒はともかく・・・え?」


「マジでこんな装備で戦うのかぁーーー!?」


 アッシュの叫び声が虚しく響いた

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