第100話 勇者、寝る

 ジョージ王に領主に任命された勇者だったが。領主の座よりも興味深いアイテムに勇者の目は釘付けになった


「王様、その銅剣どこで手に入りますか?」


「これを?うむ・・・国のシンボルゆえ、大抵の雑貨屋なら扱っているであろう。この様な実物大ではなく、縮小された置物や壁掛けなど様々な・・・」


「いいえ、ミニチュアではなくちゃんとした物が欲しいんですが」


「これと同じ大きさのものをか。そうなると難しいであろうな、鉱山を魔物に押さえられている故、鉱物の価格が高騰しておるし新たに作るとなると・・・それなりの費用がかかるであろう」


「いくらぐらいになるんでしょう?」


「同じ物を注文されますと、恐らく5千ゴールドはかかるかと」


「銅の剣が5千ゴールド!?高すぎるでしょう!」


「銅の価格が特に高騰していまして」


「そんな!勇者の初期装備の値段を釣り上げるなんて・・・・森を攻略したら真っ先に鉱山の魔物を殲滅してやるッ」


 勇者は怒りに燃えている。王はそんな勇者の様子を見て質問した


「勇者殿、そんなにこの剣が欲しいのか?」


「はい」


 勇者の返事に、王は不敵な笑みをうかべた


「ふふふ・・・そうか。しかし模造品とは言えこれは王家の所有物、そう簡単には渡せないな」


「どうにかなりませんか」


 王は目を見開きニヤつきながら大声で言い放つ!


「簡単な事よ……勇者殿が王族になってしまえば良いのだ!さあ、勇者殿よ!わたくしと結婚するの・・・むぐゅ!?」


 シンシアは王の口を押え、小さな声で警告する


「外の人間に聞かれるでしょう!余計は発言は慎んでください」


「むぐっ、すまぬシンシア」


 シンシアは王から手を離し、ため息をした後に提案した


「はぁ…まったくもう。素直に銅剣を差し上げるのはいかがでしょうかジョージ王様、勇者様が王国の象徴である剣をお持ちになれば良いプロパガンダになるかと」


「そうだな、そのプロパガンダを更に強固にするために早速ドレスの用意を・・・」


「素直に渡してください!」


 王はシンシアに押されて渋々勇者に銅剣を渡した


「うん・・・わかった。勇者殿、この剣を受け取るがよい」


「はい、ありがとうございます」


 勇者は受け取った剣を頭上に掲げた


「シャキン!」


 勇者はオリハルコンソードレプリカ(銅)を手に入れた!


「勇者殿、更なる奮闘を期待するぞ」


「はい。後で武器屋に調整にしに行かないとな」


 シンシアは勇者の言葉に反応した


「勇者様、まさかそれを使って戦う気なのですか?青銅ですらないただの銅ですよ」


「青銅の剣は銅の剣を使いこなした後にします」


 シンシアは困惑している


「え、プロパガンダに使うとは言いましたがなにもそこまでしなくても・・・無理をなさらないほうが・・・」


「いいえ、無理はしてませんよ?」


 シンシアは諦めた


「そうですか。ではこれから領主になられた勇者様に知っておかねばならない事があります。お疲れでしょうが心して聞いてください」


「はい」


 勇者はシンシアからレクチャーを受けた。

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 勇者のカリスマが2上がった


「必要な事は分かりましたね?くれぐれも用心してください」


「はい」


「では今日はお休みになってください。明日から大変でしょうから」


 勇者は屋敷に帰り、寝室に向かった


「ここが僕の寝室か・・・・」


 ベットと思われる棺桶の様な物体に、屋根と蚊帳が付いた禍々しいものの前で勇者は困惑している


「本気で僕の事アンデットだと思ってるのか・・・・確かに一度死んでるんだし?間違ってはいないのかもしれないんだけど、これはなぁ」


 ロウソクの明かりのせいで余計に禍々しかった。勇者は文句を言いながらもベットの蓋を開けて寝ようとしたが


「ほっ♪」


 中にアレクシスが居た


「アレクシスさん、僕のベットで何してるんです!?」


「夜は寒いので、ユート様のベットを体温で温めておきました♪この部屋には暖炉もありませんし」


「余計な事をしないでください!!」


 勇者はアレクシスを掴み


「ほ?」


 木製の窓を開け


「ガチャ」


 アレクシスを外に投げ捨て勢いよく窓を閉めた


「のほおおぉぉぉぉ…・・・ぐぶっ!」


 アレクシスは16ダメージ受けた


「まったく・・・」


 今度こそ寝ようと思った勇者だったが、来訪者がドアをノックした


「コンコン」


「ん、誰ですか?」


「勇者殿、余だ」


「ガチャ」


 勇者はドアを開け、王を寝室に入れた


「ジョージアさん、どうしたんですか?」


「うむ、王たる者粗悪な場所では寝られんからな、勇者殿の部屋がこの辺りでは一番良いと聞いたのでこうして足を運んだのだ」


「それは、今のところはそうでしょうね・・・って事はまさか」


 王は真っ赤になった


「勇者殿・・・不束者ですが今晩はよ、よろっ…よろぴくおねしゃいしまし…・・・ひう」


 王は噛んでしまった。そんの王の背後から怒気を放つ影が王の肩を掴んだ


「ジョージ王様、こんなところにいらしたのですか」


「シンシア!?」


「さあ、テントに帰りますよ。勇者様は病み上がりなのですからあまり困らせないでください。さあ!お前達!」


「パチン」


 シンシアは指を鳴らして部下に合図した。王はメイド隊に連行されて行った


「ま、まって!一晩だけでも!!シンシァア・・・」


「では勇者様、失礼いたします」


「はい、おやすみなさい」


「バタン」


 シンシアは一礼した後ドアを閉めて去って行った

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