第98話 戦の終わり、新たな試練

 大量に攻めて来た魔物と戦闘していた勇者達だったがイチゴの巨大化と繁殖、そしてアレクシスの暴走により魔物達は退散した


「全軍前進!急ぎ王の元まで行くのだ!」


 王国軍が魔物をかき分ける様に農村跡地に入って来た。ガウェンは前進して来る軍の中にルーファを見つけて話しかけに行った


「お、来たなルーファ。早かったじゃねえの」


「魔物が四散しながら逃げて行ったのでね。どんな策を使ったのだガウェン?」


「策なんてない、魔物共はアイツ見て逃げちまった」


「アイツとは?」


「はむ…、あっち」


 ガウェンが陶器製のパイプをケースから取り出しながら親指で指差した。ガウェンがタバコを吸うのはこの辺りはもう安全だと彼が判断したという合図みたいなものだった。ガウェンが指した方向にはイチゴを追いかけるメイド服の男の姿があった


「せめて、このイチゴだけでもおぉ!」


「ピギィ!」


 コイチゴンに飛びつこうとしたアレクシス、だがコイチゴン達は次々と地面に潜って行ってしまった


「ガサガサガサガサ」


「おおーぅ!ボクの一体何が不満だというのかぁ!しくしく・・・」


「そりゃあ、イチゴだって捕食される側になりたくないでしょうし・・・・。泣かないでくださいよアレクシスさん」


 勇者はアレクシスをなだめようと近づいた


「うおおぅ!ユート様ぁあ!」


「うわ、やめて!くっ付かないでください!!」


 アレクシスの抱き着き!勇者は引きはがそうともがいている。それを見てルーファが叫んだが


「おい!勇者が襲われ・・・いや、どっちが勇者だ?」


 二人とも鍋を被っていたのでルーファは混乱した。混乱するルーファにガウェンは先端に着火剤をしみこませた紙に火打石で火をつけ、その紙でタバコに火をつけながら答えた


「抱き着かれてるちっちゃい鍋を被ってるのが勇者だ」


「止めなくていいのか?」


「敵じゃ無いらしいぜ、とりあえず」


「ふむ。なら、お前もドワーフ隊の指揮に戻ってくれ。今のウチに防御を固めなければ」


「はいよ、じゃあ行ってくらぁ…ハイヤー!!」


 ルーファは耳を塞いでガウェンに怒鳴った


「急に大声を上げるな!」


「悪りぃ!」


 その頃、ジョージ王達の方は王国軍と合流し、エドワルズとゴードン伯爵に


「ジョージ王様ご無事ですか」


「うむ、大丈夫だ。エドワルズ卿、ゴードン伯爵、そちらも大変であったろう大事ないか?」


「死傷者なし、幸い軽いケガをした者が数人で済んでおります。大快挙ですな」


「よし、では予定道理に防御を固めつつ陣地を・・・」


「待て!ッ痛てて」


 話を進めようとした王達の話にボランが割り込んだ。シンシアが王とボランの間に入り警戒しながらボランに聞いた


「何か問題が?」


「前線基地を作るって言うのはユートから聞いてる。が、先にこっちに話を通すのが筋じゃないか?」


「そうよねぇ~、ここを制圧したのは私達なんだから当然よねぇ。よいっと」


 真理がボランの背中に飛び乗っって言った


「え~と・・・出来ればこの地図の外でやって欲しいんだけど」


 真理はボランの身体をすべる様に下りて、地図を見せた。エドワルズが割って入り地図を確認する


「どれどれ、ふむ、規模がこちらが想定していたものより小さいですな」


「これより大きくすると守りが薄くなるでしょ。一体どんな規模の基地作ろうとしてたのよ」


「これです」


 エドワルズは真理に自分の描いた地図を見せた


「大き過ぎでしょ!城でも建てる気!?」


「あながち間違ってもいませんな。新兵の訓練施設をこちらに移設して、より良い環境で兵士の能力を向上させ兵力の増強をし。農地の開拓による兵糧の確保および失業者に職を与えることによる生産性の向上を目的としています。もちろん前線基地ですので作戦地域に向かう際の中継地として軍が休めるスペースが必要になりますのでどうしてもこの規模の施設は必要かと」


「失業者ってこっちに問題押し付ける気?こんな環境に放り込んだら反乱でも起こされるんじゃないの!?」


「民を受け入れる事に何か問題でも?、何でも勇者殿は町を作りたいとか」


「うわ、そこを利用するか」


 戸惑う真理に笑顔でエドワルズは続けて言った


「ははは、そう悪い様にしませんよ。入植者の選抜は勇者殿にお任せし、私もふくめて投資したい貴族らの支援の取り付けました。勇者殿には領主の地位を与える予定です」


「それってあたしも入ってる?」


「いえ、ユート様だけです」


 真理は悪態をついた後、小声で何かを呟いた


「ちぇ、つまんない。まあいいわ、自力でそのへんどうにでも・・・・」


「マリー様どうかされましたか?」


「いえ、なんでも取り合えずゆうと呼んでくるわね」


 もう興味ないといった様子で、この場を去ろうとする真理をボランが呼び止めた


「おい、こいつらはどうすんだ!?」


「今日の所は柵を直させて、その中で適当にキャンプさせればいいじゃない?あんま資材持って来てないみたいだし、もとからそのつもりだったんでしょう。ね?そこのお爺さん」


 エドワルズが真理に答える


「ええ、おしゃっる通りです。では作業を続けてもよろしいか?」


「いいんじゃなぁ~い」


 真理の答えを聞いてエドワルズは指示を出した


「予定道理に作業を続けるぞ!」

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