第97話 片思い

 農村跡地で戦闘中は貴族二人、ガウェンとベルモッドが走り回り大型の魔物を討伐していた


「はいやぁ!」


 ガウェンは巨大なトゲの生えたカエルに戦車で突進した


「ゲゴン!」


 ガマアラシはトゲの生えていない腹部を大きく膨らませて突進を受け止めた。ダメージは無い様だ


「ああクソ、相性悪いな」


「ゲゴゲゴ!」


 ガマアラシはガウェンとベルモッドにトゲを飛ばした


「それ!」


 ベルモッドはウルミでガマアラシのトゲを切り裂いた


「ガシュン!」


 ウルミとトゲの破片を間を縫ってガウェンがガマアラシに飛び込む


「トゲ勝負だカエル野郎!」


 ガウェンのヘビーアタック!ガマアラシの眉間に長い棒の先にトゲの付いた巨大な鉄球、モーニングスターを振り下ろした


「ベキッ」


 ガマアラシに76ダメージ、ガマアラシは身体に生やした無数のトゲが抜け落ちて塵となった


「ギギィ、付き合ってられるか!敵の間を縫ってトンズラするぞ!」


 魔物達の一部が塵尻になって逃げだす


「お待ちになって、パーティはまだこれからでしてよ」


「追い払うだけでいい!深追いするなよ、ベルモッドの嬢ちゃん」


「わかっていますわガウェン卿。はぁ、殿方を振り向かせる事ができないなんてレディ失格ですわ」


 劇団の様にオーバーアクションで仮面越しに涙を見せるベルモッド、そんな彼女にガウェンは戦車に乗りながら遠慮なく思った事を口にした


「あの魔物の中の何割が殿方なのかわかったもんじゃねえし、気にすることは無ぇんじゃないか?」


「ガツン、ドカドカ!」


「ぎゃーー!」


 逃げ惑う魔物達を跳ね飛ばしながら巨大なものが通り過ぎて行った


「敵の新手か!?」


「グォオオヲヲォォォォ!」


 その巨大な植物?の尻尾の様な場所に人がしがみついていた


「うわわ!もう止まってくだっ!ぐぶっ」


 勇者は振り回され5ダメージうけた


「あれは勇者様ではなくて!?」


「そうみてぇだな。しかし何であんなとこに…え?」


 巨大な植物の後を追うように火花の様な光が走りけて行った


「おお、色とりどりの食材まものが宙を舞っている♪なんと美しい」


「うが!」


「ひえぇ!」


 光り輝く鍋を被ったメイド服の男を落下してくる魔物の中から小型の物を選びエプロンで受け止め、香辛料とワインを振りかけ臭みを消した後にまた空中に放り投げ、火炎魔法で焼き払った


「ボウリン♪」


「ブワァン!ポトリ…」


 アレクシス焼き上がった魔物を鍋を脱いでその中に入れ香りを嗅いだ。だが鍋を脱いでもアレクシスの顔は見えない、鍋の中に鍋を被っていたからだ


「良い香りです、ですが焼き加減がいまいち。即席ではこんなものですか」


 アレクシスは首切りガモの丸焼き(品質:低)を手に入れた。調理スキルが1上がった


「メイド服を着てるぞアイツ!メイド隊にあんな奴いたかぁ!?」


「落ち着きになってガウェン卿!あの声はどう聴いても男ですわ」


「何だと・・・そうか!クソ!!メイド隊の中にスパイが紛れ込んでいたのか!」


 ガウェンは混乱している


「あの走り回っている魔物の本体もヤツなのかもしれませんわね」


 ベルモッドも混乱していた


「ヤツの身柄を確保するぞ!拷問して敵の情報を聞き出すんだ!」


「了解ですわ!」


 ガウェンとベルモッドはアレクシスの元まで走った


「ほっ?何なんでしょうか、ふぇい!?」


「ジャリンッ!」


 ガウェンの投げた三又の鎖分銅、ボーラがアレクシスの足に絡みついた。アレクシスは転んでしまった


「よし、大人しくしてな変態野郎」


「ドワーフ?味方ではないですか。一体どんなごようで?」


「その格好で味方だと言い張る気かキサマ!?」


 ガウェンに取り押さえられたアレクシスを見て、ベルモッドは首をかしげて言った


「うーん、そう言えば調理器具で武装しようとした兵士が居たと…会議でゴードン伯爵がおっしゃっていたような?」


「ゴードン伯爵・・・ほっ!ゴードン隊長のおじい様ではありませんか」


 ガウェンは疑いの視線を向けながら固まった


「まじかよ・・・。なら北方警備隊所属だろお前、なんでここに居るんだ」


「ユー…勇者様の力になるべく、仲間の制止を振り切り馳せ参じたのです!」


「脱走兵かよ」


「勇者様の為なら何とでも!汚名は甘んじて受けましょう!」


「そのメイド服は?」


「メイド隊の皆さんからお借りしました」


 ガウェンがメイド隊の居る方を見るとメイド隊の一人がこちらに合図を送っていた。殺すなって事らしい


「えーぇ、どうしよう・・・」


「ガウェン卿!勇者様が大変なことになってますわ!」


 勇者は暴れるイチゴンに振り回されている。勇者に16ダメージ


「ふぐ!ぶえ!ほご!」


 アレクシスは悲痛な叫び声を上げた


「おお!ユート様がぁ!!早くユート様の元まで行かなくては」

 

 ガウェンは状況に付いて行けずキレた。ガウェンはアレクシスを掴んで振り回し投げ飛ばした


「ええい!めんどくせぇ!!お前だけで行ってこい!!!」


 見事なジャイアントスイングだ!会心の一撃


「ほぉぉぉぉおおお!」


「ガツン!」


 アレクシスが子連れイチゴンに直撃した


「グボ?グオオ!?」


 イチゴンはアレクシスを見て固まった、コイチゴン達も刃をガチガチ鳴らしながら固まっている


「止まった・・・・アレクシスさん助かりました」


「いえいえ、お気になさらず♪おや?」


「グブブッ、グブッ、ブブ」


 子連れイチゴンはアレクシスを凝視して固まっている。その脳裏のあるのは恐怖!同胞の樹液を浴び、果肉をもてあそぶ、あのいちご狩りの姿!恐怖のあまりイチゴンは動けない


「アレクシスさんを見た途端大人しくなりましたね、このイチゴ」


「おお、これはまさか・・・ボクの愛が食材に通じたのでしょうか♪」


「ガウッ!?!?!?!?」


 イチゴンの思惑も知らず、アレクシスはイチゴンの頭を撫でる様に手を添えた


「ナデナデ」


「食材と心を通わせるなど、コックにとって市場の喜び♪おお~♪今日は良き日!誠に良い日だ!!」


「グッ・・・ゥゥ」


 子連れイチゴンは恐怖のあまり66ダメージ受けた。子連れイチゴンは灰になった


「シュウゥゥゥゥ、、、..........」


「こ、これは一体!?」


 アレクシスは動揺している。その光景を見た魔物は


「アイツ手をそえただけで殺りやがった・・・」


「あの凶暴なヤツを・・・やべぇぞ」


「死神だ!死神が迎えに来たんだ!捕まる前に逃げろーーー!!」


 魔物達は一目散に逃げだした。アレクシスはそんな事も気に留めず


「食材と思いが通じたのにッ・・・・なぜだぁぁぁぁ!!!」


 アレクシスは悲しい雄たけびを上げた!その声で魔物は足早に逃げ出した

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