第95話 イチゴの勇者添え
戦いの中、暴食イチゴンは子連れイチゴンに進化した。勇者は生まれたコイチゴン達に囲まれながら一人呟く
「何と言う雑草もビックリな繁殖力。さすが異世界だなぁ」
「ピギィ!」
コイチゴンの中の一匹が勇者に跳びかかった
「おや?」
「今だ、隙あり!」
勇者がコイチゴンに気を取られている隙を狙って魔物が跳びかかってくる
「よっと」
勇者はコイチゴンを片手でキャッチし・・・
「えい」
襲って来た魔物にぶつけた
「ごもッ!?もがもが」
コイチゴンの口に顔をおおわれた魔物が引っぺがそうともがいていると、子連れイチゴンがその魔物を食べてしまった
「アーン…バクリ!」
「子供ごと食べるの!?」
「ムグムグ、ペッ!」
勇者が子連れイチゴンの様子に驚いていると、子連れイチゴンは口を器用に動かしコイチゴンを吐き出した
「ああ、良かった。使い捨てアイテムかと思いましたよ」
「ムググッ!」
おや?イチゴンの様子が・・・
「え、また?」
「グシャ!」
子連れイチゴンから四つの足が生え、咆哮を上げた!
「グオォォォォ!」
「おお、こんなに立派になって」
「勇者さん!危険ですから離れて!」
「勇者殿!」
アッシュと王の警告も聞かずに、勇者は何を考えたのか鉢植えの上に乗った
「よいしょ」
「ブオォォォォ!」
子連れイチゴンは新たな獲物を求め、勇者を乗せた鉢植えを引きずりながら走って行った。その後をコイチゴンが鴨のヒナの様に並んでついて行く
「ピギピギィ!」
「おや、意外とかわいいではないか」
王はその光景を微笑ましく見ている、そんな王にシンシアが説明した
「あれは刷り込みの影響でしょう、ジョージ王様」
「刷り込み?雛鳥が初めて見た者を親だと思うあれか」
「ええ、あのご様子だと、まずい事に勇者様を親だと思っているのでしょう」
「ん?それが何かまずいのか?」
勇者は仲間のハイエナに大声で警告した
「皆さーん!危ないですからもう下がってくださーい!」
「親分!?何ですかその奇怪な生き物は!」
「イチゴですよぉー!」
「ゴオオ!」
子連れイチゴンは前足?で魔物を攻撃した。切り裂きモモンガAとBに20ダメージ
「うばっ!」
「ハグッ!」
子連れイチゴンは切り裂きモモンガA.Bを捕食した。ハイエナ達は危機を察知して逃げ出した
「これはマズいな。ここは親分に任せて、巻き込まれない内に引くぞ!」
「「御意!」」
「グンッ!」
そのままイチゴンは尻尾の様に鉢植えをハンマーの様に振りまわした!
「ぐべ」 「にゃ!」
「うが」
鎧ヤギ、首切りガモ、邪香ネコ、そして鉢植えに乗っていた勇者に19ダメージ。ハイエナ達はスキル遠吠えを使った
「おやぶぅーん!!」
声が良く響いた、大した効果は無い様だ
「痛いですよイチゴさん」
勇者は頭から血を流している、それにつられてかコイチゴン達が勇者に噛みつこうと跳びかかった
「ピギャ!」
「なんだ!この、敵はあっちですよ!」
勇者がコイチゴン達をなんとか払って躱している。シンシアがその光景を見てため息をつく
「やっぱり・・・・・」
王はシンシアを問いただした
「あれはどういう事だ!勇者を親と刷り込まれているのではないのか!?」
「ええ、その通りです。ですがアレはイチゴであって鳥ではありません」
「と言うと?」
「イチゴンの子供は生まれてすぐ親を食らって養分とし、適当な場所まで移動して根を下ろし繁殖するのです」
「なんと!つまり勇者殿を
「その親の方も余分な栄養が有れば足を生やし移動して、獲物が多い場所を探します。地面に根を張り獲物を待つ生態から、なかなかこの様な事は起こらないのですが・・・人為的でない限り」
「まさか勇者殿は・・・この事態を打開するためにそのような危険な賭けをッ!」
「いえ、たまたまだと思いますよジョージ王様」
「グヲォォ!」
イチゴンはまた走り出した
「ふう、助かった」
「「ピギピギ!」」
鉢植えに乗っている勇者を追いかけている
「しつこいな。まあいいや、来い!」
イチゴンの前方に電撃が走る
「ライニール!」
真理の電撃魔法!魔物A・B・C・Dに25ダメージ!
「グオォオォ!」
その弱った魔物をイチゴンは捕食した。イチゴンを見た他の魔物達が恐怖し四散して逃げていく
「な、なんだこの魔物は!?」
「なんかヤベエぞ!」
「こんなとこに居られるか!オレは逃げさせてもらう」
「あ、ずりぃぞ!」
真理から罵声が飛んだ
「ちょっとゆうと!せっかく追いつめたのにバラバラになっちゃったじゃない!!それに射線上に入るな!邪魔よ」
「すみません真理さん。おっ」
イチゴンは新たな得物を求め走り出した
「ピギィ!」
何体かのコイチゴンが勇者に追いついた
「えい」
勇者は襲ってくるコイチゴンを掴み、周りに居る魔物達に投げつけた
「ほい、ほい、ほいっと」
「バクバク!」
コイチゴンを投げつけられ怯んだ隙に子連れイチゴンがその怯んだ魔物を食らう
「ポン、ポン!」
そしてその養分でコイチゴンを増やしていった。それを見た王は拳を固く握りしめ力説した
「なるほど!勇者殿はこの為に自分に刷り込みをさせたのか!これなら敵が居る限り弾は無尽蔵!まさに象の突進力と投石兵の遠距離攻撃能力を持った戦車ではないか!」
「ジョージ王様、声を小さく!こちらにあのイチゴが来たらどうするのです!」
不意に謎の人物が王に話しかけた
「おお、騒がしいと思って来てみれば・・・これはこれは国王様、ご機嫌麗しゅう」
どこからか現れた王に声をかけた人物をメイド隊が取り囲んだ
「何者だ貴様!絵に描いたような不審者め!」
「ただのコックですよ、ご心配なく♪」
「裸に長鍋を被ったコックなど居るものか!!」
メイド隊の言葉にアレクシスはやっと自身の失態に気付いた
「ほ!?私の服はどこに!?」
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