第93話 ギロチンよりはマシ?

「うぐぐぐ・・・。勇者殿、ご無事ですか」


 地面に叩きつけられた王は立ち上がって、屋根から飛び降りてくる勇者に話しかけた


「はい、お久しぶりです王様」


「はは、まだ数日しかたっておらぬではないか」


「あ、そうでしたね。色々ありましたから随分長く時間がたった気がして」


 ボランは今のやり取りを聞き、勇者に尋ねた


「王様?つまりお前の上司って事になるのか?」


「はい、そうなりますね」


「こんな弱そうな奴がねぇ・・・。このまま殺っちまって下剋上しちまうか?」


「ザザザザ・・・・っ!」


「いいえ、ダメですよボランさん。あ、シンシアさんもお久しぶりです」


 勇者は殺気を纏いボランに駆け寄る謎の影に挨拶した


「んぅ?一体誰に話しかけて・・・」


「シュ!」


 シンシアの攻撃!ボランは紙一重で首を狙った斬撃を避けた


「うわ!?な、なんだコイツ!」


「ちっ、外したか。勘の良い駄犬だこと・・・」


「誰が駄犬だ!俺は犬じゃなくてハイエナ・・・」


「ふん!」


 シンシアの連続攻撃!ボランは器用に避け逃亡した


       「ザンッ」

           「/うわ!」

   「シュパン」

「とっと!/」

      「ビュン」

          「/くそっ」


「お待ちなさい!ジョージ王様を傷つけた罪は重いですよ!」


 ボランは逃げながら勇者に叫んだ


「ユート!コイツも味方なんだよな!?殺っちゃダメなんだよな!?コイツ止めてくれ!」


「勇者殿、まずは辺りの魔物共を始末しようぞ」


「はい。でも僕今調子悪くて戦えないんです」


「なんと、やはりまだ後遺症が残って…」


 勇者は王と話をしていて聞いていなかった


「聞いてねえ!?おい誰か・・・」


 ボランは勇者達にゆっくりと違づく人影を発見した


「戦えない?じゃあ前に出ても大丈夫なんかね?」


「ジョージ王様、お戯れが過ぎましてよ」


 勇者の前に戦車に乗るずんぐりとした小柄な男と、鉄仮面の派手な女性が現れた


「王様この人達は?」


「この者たちはガウェンとベルモッドだ。勇者殿の救出に賛同して馳せ参じてくれた貴族達よ」


「ラーズ・ガウェン、ドワーフだ!ゴブリンと勘違いすんな!魔物じゃねぇぞ」


「はい、よろしくお願いします」


 ガウェンは小さく呟いた


「ふぅ・・・多少アレな性格だと聞いていたが、まともに話が出来て良かったぜ」


「シェリー・ベルモッドですわ、以後お見知りおきを。サロンを経営しておりますわ。お暇な時に是非いらしてくださいね」


「営業してる場合じゃないだろ、その前に辺りの魔物を片付けようや」


「味方には矢印をつけてますから狙わない様にお願いします」


「あいよ!大物は任せな!ハイヤーァ!」


「あ、お待ちになって!レディを置いていく気ですの!」


 ガウェンとベルモッドは敵に突っ込んで行った。取り残された勇者は腕を組んで何やら悩んでいた


「さて僕はどうしよう、いつもは他の人に戦いを任せていたんですが」


 ボランは勇者に叫んだ


「俺だ、俺ッ!何時もオレに任せてただろうが!!ん?」


 ボランはアッシュと目が合った


「あ!あれは!?」


「どうしたのアッシュ?」


「ああ、アッシュさんも居たんですね」


 アッシュの声に勇者と真理が反応した、それを見たボランは


「おお!新人の人間!俺に気付いたか!さあ、早く俺を助ける様に・・・」


 アッシュはそんなボランの思いを知らず声を上げた


「あれはツイストダガー!?とある武器屋が自分の店の宣伝の為に作った悲劇の珍品!まさか現物を見られるとは!!」


「ああ、シンシアが振り回してるアレ?」


「そんな珍しいレアアイテムなんですか、一体どんな効果があるんですアッシュさん?」


「いえ、斬り付けた傷が酷くなるくらいで、重いわりに強度が無いとかで実用性はあまり・・・」


 ボランは絶望叫びをあげた


「おいぃぃ!!このクソ武器オタクがぁぁぁ!…いで!」


 シンシアの攻撃!ボランに攻撃がかすり9ダメージ


「てか、その口ぶりだと、お前ら俺に気付いてたんだろ!早く助けろよ!」


 ボランの訴えに勇者達は素っ気なく答えた


「いや、だってあたしが切りかかれた時と比べれば全然本気じゃないし」


「僕を井戸から引き上げた時の勢いがありませんし、手加減してるでしょうから大丈夫ですよ」


 ボランは混乱した


「斬り付けた!?勢いがない!?これで手加減だと!?」


「しゅぅぅぅぅ!さあ大人しく肉を削ぎ落されてくださいな…駄犬ぅ~ん!」


 シンシアは暴走している!がギリギリの理性で力を抑えていた。ボランはシンシアに恐怖している


「あ、悪魔だ…コイツ悪魔だ・・・。意地でもこの女を止めてもらうぞぉ!」

  

 ボランは勇者達に向かって突進したが


「ジョージ王様、お召し物が汚れていますわ」


「身だしなみを整えませんと」


「うむ、任せたぞお前達」


「王の警護は私共が引き受けます、勇者様はご自分の戦いに集中を」


「はい」


 どこからか現れたメイド達が王の周りを囲んだ。それを見たボランは動揺した


「増えた・・・だと。あの王とやら悪魔をあんなに飼っているのか・・・」


「きぃぃぃぃぃい!」


 ボランが走る速度を緩めた隙にシンシアが追いついてしまった


「しまった!?うぎゃあああ!」


 シンシアのスキル鬼人斬り!目にも止まらぬ斬撃がボランに46ダメージをあたえた、ボランはひんしになった


「さすがユートのボス…飼ってる手駒の強さが半端じゃ・・・・ガク」

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