第88話 ドワーフ、エルフ、人間混合部隊、基礎戦闘マニュアル
「皆の者、よく集まってくれた!」
王は大人しく馬に乗り、出陣前の演説を行なった
「既に知っている者をおるだろうが、勇者ユートの手により、北の農村跡地、かつてコイド村と呼ばれた場所が解放された!」
「おお…」
王は演説を続ける
「しかし!現在その場所が危機に陥っている。再び魔物の手に落ちる前に、我々は速やかに農村跡地に進軍し、その脅威を排除し!北の森を攻略する足掛かりの為の前線基地を構築するのが任務となる!長年魔物に押され後退して来た我が国だが、今日それを覆す大きな一歩を歩む時が来たのだ!」
「北の森は他と比べ危険が低く、戦力を割く余裕がないために疎かにされてきた土地だが、この作戦は戦略上重要なものである。森の資源を獲得し、他の戦地への兵站を確保するのだ。この作戦の成功によって、激戦地で戦う兵士達の助け…いや、命を救うものだと知れ!」
「おぉー!」
「では皆の者、出陣だ!」
軍が北門を出て前進した。その道中の先に、勇者が突き立てた松明の明かりを遠くから見つめる魔物が居た
「おい、あの明かりは何だ?」
「さあ?人間が住んでた廃墟っぽいすけど、死霊じゃなさそうっすね」
「ほう、と言う事は生きた人間か。かなりの数だがいつの間に・・・軍か?」
「そう考えると軍靴の音がする気がするっすね」
「うむ、そうだな。まるでこちらに段々近づいているような・・・」
「……・・・ザック、ザックッ、ザク!」
そんな事を考えながら見ていると後ろから足跡が本当に聞こえ、不意に声がした
「前方に魔物を発見!大型種1体、小型種20体以上!」
その声で魔物達は後ろを振り向き
「な!?後ろか!」
救出部隊と羊型モンスターの群れが戦闘になった。群れのボスは部下に突進する様にする
「野郎共!殺れ!」
「「ういっす!」」
荒くれヒツジ達のの怒涛の突進!
「ドドドドドドドッ」
「ブローク!」
突進してくる魔物を、ドワーフ重装歩兵隊がエルフ魔導士による防御魔法で強化した盾で受け止めた
「ガツンッ!」
ドワーフ達は独特な掛け声を上げて、次々と突進して来る魔物達と押しとどめる。横並びに分厚い盾が隙間なく壁の様に並ぶ、まさに鉄壁ではあるが視界が塞がれてしまっている…だが、ドワーフは自身の特性によりある程度軽減できる。
「フォ!フォ!フォ!」
盾の弱点、それは構える事によって視界が塞がれる事であるが鉱山などの洞窟に住んでいるドワーフもこの特性を持っており、近距離なら相手の内蔵の位置まで分かると言われている。その能力を使って鉱脈を見つけたり、金属の質を音で聞き分けたりできるので、炭鉱夫や鍛冶屋として生計を立てている者が多い
「このドワーフめ、チビのクセにぃッ」
魔物の罵倒の様にドワーフは背が低い。分厚い盾はドワーフの力が強いから言う理由だけではなく、背が低い分面積が小さいからその分を厚みを上げて補っているからだ。上がガラ空きなので、盾にへばりつき上から手を突っ込んで攻撃しようとしている魔物まで居るが、上が開いているのは長所でもある
「バカッ!固まり過ぎだ!!」
大荒くれヒツジの警告が響いたが、既に遅く
「今だ!槍兵、穿てぃ!」
十分に魔物が集まった所を、ドワーフ重装歩兵の後ろからの人間の槍兵が放つ、ドワーフを避ける様にした上段の構えからの刺突が魔物を襲った
「うをぉ!?」
荒くれヒツジは何体かは、その刺突により塵となり、残りの魔物も浮足立った
「ひぃ!」
「ガラッ」
魔物が引いた所を、ドワーフ部隊は盾を斜めに構えすき間を作り、ウォーハンマーで攻撃した
「でぇい!」
「ゴツン、ゴッ、カゴン!」
「うわわ!」
焦って後退していく魔物を・・・
「放て!」
槍兵の後ろに配備したエルフ弓騎兵が短弓で射貫いていく
「ヒュパン、シュパ、シュパ」
「うがぁ…」
前衛のドワーフが魔物の敵の足を止め、人間の槍兵が攻撃し、更にエルフ弓騎兵がその後ろからの攻撃、そしてエルフ魔導士が高い視力と聴力を生かし戦況を見極め指示を出しつつ、魔法で援護する。この様な混合部隊での基本的な戦術だ
「小型種16排除!数体逃しました」
大荒くれヒツジは怒りに震えている
「貴様らよくも・・・ッ!!」
大荒くれヒツジの突進!この様な大型の魔物の突進は、本来なら槍兵が槍を突きだして止めるが、力量差があり過ぎるので止められないだろう
「フオォォォォウ!!」
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