第86話 ジョージアご乱心
クプウルム城、ジョージ王寝室
「やっと会議が終わったわ・・・。はぁ…出陣は明日、ユート様ご無事だといいのですけれど。明日に備えて早く休みませんと」
ジョージアが眠ろうとベットに入ろうとしていたその時、寝室のドアを叩く音が響いた
「コンコンッ」
「ジョージ王様、お休みの所を申し訳ございません」
「シンシアか、入れ」
ジョージアが声を作りシンシアを招き入れると、他のメイド達も中に入ってきて王の着替えの準備を始めた。
「北門の偵察兵から報告が入りました、緊急事態の可能性があるため至急会議を開きますのでご支度を」
ジョージアは無言でメイド達に身を任せ寝巻から王の衣装に着替え始め、シンシアの話を聞いた
「ユート様の身に何か!?」
「農村跡で不審な動きがあったようです、詳しくは会議の席でお話しします」
ジョージアの着替えが終わり、ジョージアは王としての振る舞いになった
「うむ、勇者殿に危険が迫った・・・可能性がある、と言う事か。腰の重い者達を焚きつける良い口実になると?」
「はい。会議には緊急事に備え城にお泊りいただていた、エドワルズ卿、ゴードン伯爵、ベルモッド嬢、ルーファ卿、ガウェン卿、計5名の貴族の方達を参加させる予定です」
「わかった、では向かうとしよう」
会議室に一番早くたどり着いた王は貴族達の到着を待った
「国王様、シェリー・ベルモッド参りましたわ」
「アルヴィン・ゴードン、参上いたしました」
「イセル・ルーファ、参上した」
「ジン・アドレイ・エドワルズ参上いたしました」
「ラーズ・ガウェン参りましたぞ!」
貴族達が到着したのを確認し、シンシアが話を切り出した
「皆様ようこそおいで下さいました。それでは会議を始めたいと思います」
「これで全員か、アマンダ様は?」
「アマンダ様は現在ゴーレム部隊を操作し、東の沼地の調査及び戦闘部隊の掩護をおこなっておられます、ルーファ様」
「そうか、お忙しいのだな。会議中もずっと何かしていたご様子、数的劣勢をどうにか埋めねばなりませんからな」
「ガハハ!まあ、勇者の数で言ったらこっちは2人…、いや、例のゴーレムを入れれば3人居るんだ!そう気負ことも無いでしょうルーファ卿」
エルフの貴族ルーファはドワーフの貴族ガウェンの様子を見て疑いの視線を送った
「ガウェン卿、まさか酒を飲んでいたのではあるまいな?」
「まさか、寝ていた所を起こされて少し寝ぼけているくらいですぞ。生卵に酢とコショウをぶち込んだものを酒だと言われれば話は別ですが、ガハハ!」
「寝つきが良いのは何時もの事だとして・・・、それは酔い覚ましのカクテルではないか!」
「ガハハ、最近アレを寝起きに一杯飲まないと酒飲んでなくても目覚めが悪ッ…ヒック!おっと失礼」
ルーファはガウェンのしゃっくりを聞いて睨んだ
「おい」
「うーむ、酢とアルコールを間違えたかな?」
シンシアは注意を促した
「お二方、話を本題に移しますよ!」
「これは失礼した」
「おう、例の報告とやらを聞かせてくれ」
「では。北門の偵察兵の報告によりますと・・・」
シンシアは報告書を読み上げ・・・そして
「勇者殿が大量の魔物と一緒に巨大土鍋で煮込まれているだと!?!?」
王は混乱した
「いえ、まだ鍋を被った人間が勇者だと決まったわけでは・・・」
ゴードン伯爵が混乱する王をなだめる様に発言した
「先日脱走した例の兵士達の中に調理器具を装備した者がおりましたから、その者では?」
「だとしても身元不明の人間が数人、魔物と一緒に煮込まれているのには変わりないわ!それを勇者が見過ごすと言うのか!」
「ま、まあ、非常事態には変わりませんが」
「それにだ、どういう事だ農村跡地の周りを大量の松明が囲んでいるとは!敵の気配が無かったと言うのは誠であろうな!?東の沼地から隠密に長けるアンデットが回り込んでいたとすると一大事だぞ!」
ルーファも王をなだめる様に発言した
「魔力の変化に敏感なエルフがアンデットを見逃すとは考えられないかと・・・」
「では何だと言うのだ!獣避けの火だとしても度が過ぎるわ!あと、その周辺で小規模な山火事があったが直ぐ鎮火した、とはなんだ!その時点でおかしいであろう!もっと早く報告を上げさせぬか!!」
「は、はは!その部隊には良く言い聞かせ、偵察内容の見直します!」
王は更に声を荒げた
「土鍋に入れられた人間が脱出を試みた所を謎の閃光が・・・と言うのは分かり切っているな」
シンシアもさすがにこの意見には賛同した
「マリー様ですね、報告にあった長髪の少年と思われる人影がそうでしょう」
「だとしたら今回の騒ぎはヤツが原因か!?あの泥棒ネコやはり野放しにしておけんぞ!すでに前科があるのだからな!もしやまた勇者の身にッッ」
ベルモッドが疑問を口にした
「泥棒ネコねぇ…。その娘、少年に見えるくらい?」
シンシアは胸の高さに上げた手をスゥっと真っ直ぐ下ろしジェスチャーしながら答えた
「ええ、非常に慎ましいです」
「あら、可哀そう。でも需要はありますのよね・・・」
何故かルーファが異様に反応した
「胸なんぞ弓を射るのに邪魔なだけだ!我が愛しの妹も、もっと胸が慎ましかったのならッ・・・アーチャーになる夢をあきらめずに済んだと言うのに!もし叶うなら世界から巨乳という悲劇を撲滅してくれるッ!」
「ルーファ卿、妹さんをウチのサロンに呼ぶというお話もう一度考えてくれません?もちろん、おさわり禁止にいたしますわ」
「その話は何度もお断りしているはずですッ!ベルモッド嬢!!」
エドワルズ卿が少し呆れた様子で発言した
「ミル・ルーファ嬢の話はおいておくとして。我々の考えが及ばない事態が勇者の周辺で起こっているのは確かでしょう、直ぐに部隊を向かわせるべきだと思いますが」
王はエドワルズの話に大きく頷き命令を出した
「うむ、当然だ!皆の者!戦の準備をせい!異論は無いな?」
「「はは!御意のままに」」
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