第83話 さらばトーマス・・・え?

「うんしょっと・・・ふぅ。植え替えは取りあえずこんなもんかな」


 トーマスは畑仕事を終え、手拭いで汗を拭きとっていた。そんなトーマスの後ろから声をかけた人間が居た


「おやおや、お疲れ様ですねトーマス。甘い物などいかがですか?イチゴジャムを作ってみたのですよ」


「お、ありがとなアレクシス・・・ってなんじゃその格好は!?」


 トーマスが後ろを向くと赤い粘液まみれののアレクシスが居た


「生きの良い食材だったので少々手間取ってしまいまして」


「生きの良いって・・・」


「そんな事より、はいどうぞ♪」


 アレクシスはジャムが入った鍋を差し出した、トーマスは少し動揺している


「えぇー…、見た目は普通だな……、パンは無いのか?」


「軍から支給された携行食のビスケットは持ってないのですか?見たところ完全装備のままのようですが」


「そういやポーチに入れっぱなしだったけな。固くって食いにくいんだよなぁコレ、まっ、有難くいただくわ」


「どうぞ♪」


 トーマスはポーチから防水加工された紙で密封されたビスケットを取り出し、紙袋を破いて取り出したビスケットでジャムをすくい取って食べた


「ガシュガシュ・・・なんか繊維質なジャムだな、けど美味いなコレ、あのスープとは段違いだ」


「それは良かった。試した甲斐がありましたよ」


「そういえば勇者さんは?一緒に居たんじゃなかったのか?」


「ユート様なら、完全に暗くなる前に湧き潰しをするとかで・・・あ、恐らくあの明かりです」


 勇者は大量の松明を持ち、ハイエナ達と火をつけた松明を地面に突き刺していた


「よいしょ、うんしょっと」


「親分、ホントにこれで敵が寄ってこないんですか?」


「はい、クラフトマンの常識です。開放感の匠なんて来られたら嫌ですからね、念入りにっと」


「むしろ明かりで寄ってきそう・・・なんだけど、この数ならなぁ…軍隊が居ると思って寄り付か無いか?」


 遠くで作業している勇者を見て、ト―マスは困惑している


「一体、何の儀式なんだ・・・」


「作った家が無事に夜を越せる様にする為の儀式らしいですよ。アレが無いと悪霊に家を爆破されるとか」


「へぇ・・・炎崇拝の一種なのかね。むしろ松明が原因で火事になりそうなもんだが」


「ユート様の世界の家は1メートルの立方体のブロックの組み合わせで出来てるそうですから、松明の火ぐらいではビクともしないのでしょう」


「壁の厚みが1メートルあるって事か!?分厚すぎだろ」


「爆破する悪霊がうろついているぐらいですから、それぐらいは普通なんでしょう」


「なんて恐ろしい世界なんだ・・・勇者さんがタフな理由が分かったぜ。まあこの辺りの魔物にそんな奴は居ないだろうが」


「そうですね。よいしょっと、ボウリン」


 アレクシスは水を入れた鍋に魔法で火にかけた


「熱っち!急に何しやがる!」


「身体を洗おうかと思いまして、水じゃ冷たいので湯を沸かそうかと。トーマスも使います?」


「あー、結界で落ちる汚れじゃないもんな、と言うか結界がある感じはしないよな・・・」


「ですね・・・当分湯を浴びて汚れを落とす事になりますね」


「魔術の恩恵がないとか、なんて原始的な・・・。いざとなったらマリー隊長に回復魔法で汚れを落としてもらうか」


「ユート様も回復魔法を扱えますよ♪」


「へー、二人とも回復呪文持ちだったのか、そりゃ結界いらんわな」


「グツグツ・・・」


「湯が沸きましたよトーマス」


「お、早いな。じゃあちょっと使わせてもらうぜ」


 通りすがりのハイエナがトーマス達に話しかけて来た


「おい人間共、身体洗ってるのか?」


「ああ、見ての通りだ」


「風呂ならマリーの姉御が土器使って作らせてたぜ。今頃もう沸いてんじゃないかな。ほら、あそこに湯煙上がってるだろ、借りてきたらどうだ」


「ほう、見に行ってみるか」


 湯煙の方を目指し歩いて行くと火にかけられた巨大な土器があった


「ハイエナ達も使っていますねぇ」


「そうだな。おい!俺達も使っていいのか?」


 トーマスはそこら辺に居たハイエナに話しかけた


「ウン、大丈夫ダ、一緒ニ、入ロウ。別ノ人間、付キ合イガ、悪イ」


「別?アッシュの事か」


「炉ノ調整ヲ、シテカラ行ク、ト言ッテ、誘イ断ワラレタ」


「元職人さんだからな、そう言うところは頑固って事か。じゃあ俺達もさっさと服脱いで入ろうや」


「ボクはもう脱ぎましたよ♪」


 全裸に鍋を被ったアレクシスが仁王立ちしている!良く鍛えられて締まった肉体だ!トーマスは動揺している


「うわ!鍋も取れ!鍋も!」


「嫌です!どこにあの女の目があるか分かりませんからね・・・」


「そんなに直接顔を合わせたくないのかよ…」


 トーマス達は土器に立てかけられた梯子を上って湯に入った、トーマスはため息をもらした


「ふぅ~、たまには風呂も悪くないな」


「そうですね♪少し独特な香りがしますが・・・はて?どこかで嗅いだことがあるような」


「コレ、オヤブンノ、朝食ヲ、作ルノニ、使ッタヤツ、仕方ナイ」


「げぇ!大丈夫なのかよ」


「でも、疲れが一気に取れる感じがしませんか?」


「言われてみれば確かに・・・ふぅ~」


 トーマスとアレクシスはババルの残り湯の効果で治癒力が上がった、お肌がツルツルになった


「はぁ~♡極楽よねぇ~…」


 何処かから聞いた事が有る声がして、トーマスが青ざめた


「この声は・・・マリー隊長ぅ!?」


「ほ?」


 真理と思われる湯煙の向こうの人影が動いた。サービス精神のかけらもない、貞操を守護する謎の光すら凌駕する湯煙の壁だった・・・輪郭すらよく見えない


「え?、ちょっとアンタ達なんで入ってるのよ!?」


「オレ誘ッタ、マズカッタカ?姉御?」


「アンタの仕業!?犬畜生と人間と一緒に入るのは違うでしょうが!」


「イヤ…俺達ハイエナ・・・」


「お黙り!」


 真理がハイエナと言い争っている間にトーマスはひと声かけて出ようとした


「大丈夫です!直ぐ出ますから!湯煙で何も見えてないですし!」


「誰のぉ?何がぁ?小さくって見えないだってぇぇ?」


「バチバチ」


 トーマスは湯にピリピリと電流が流れ、真理の怒りを感じ取った


「え?なにをそんなに怒ってッ。こらアレクシスさっさと出ろぉ!」


 アレクシスはボーっとしている


「ほほ…引っ張らないでください。鍋の中に熱が溜まってしまってのぼせてしまいました」


「だから外せって言っただろッ!」


「ライニール!」


 真理の反に攻撃がトーマス達を襲った!


「「ぎゃーぁぁああああああ!」」


 トーマス達とハイエナ達は18ダメージ受けた

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