―――勇者に集いし者達―――

第79話 合流

 農村跡地で繰り広げられた猫追いにもひと段落付き、勇者を触診していた猫は勇者に語り掛けた


「みゅう…ま、問題ないみたいだにゃ。ところでコイツらが例の魔物か、信用できるのかユーシャにゃん?」


「はい、みんなよく働いてますよ」


 ボランは勇者に話しかけて来た


「おい、オメェそいつが何言ってるのか?」


「はい、スキル持ってますから」


「え、じゃああの犬の事も・・・?」


「いいえ、ポチィーの言ってる事はわかりませんよ。アマンダさんの猫は普通じゃないでしょうし…。何でアマンダさんの言葉は分かるんでしょう?」


 猫は首を何度も捻りながら考えた後、勇者に聞いた


「ふみゅみゅ…ユーシャよ、次に私が言った事も翻訳できるかにゃ?」


「え?はい」


「ではいくぞ。ニャーニャーニャー」


「ダメです。猫が鳴いている様にしか聞こえません」


「にゃるほど、今猫の鳴き声を出すつもりで言ったのじゃが、恐らく意味のある言葉として声を発しないと効果が現れないのではにゃいかにゃ?」


「つまり、言葉をもともと持ってない動物なんかだと翻訳されないのか」


「多分にゃ」


 勇者と猫が雑談していると、もう一人の勇者、真理も勇者達に合流した


「やっほー♪犬モドキ達、元気してた」


「はっ!あねさんお帰りなせぇ」


 ハイエナ達は真理を出迎えた、それを見たアッシュは少し戸惑っている


「姉さん?あー、オレらも姉さんって呼んだ方がいいですかね?」


「んー…じゃあ、せっかく軍人を部下にしたんだから隊長で!」


「はっ!了解しましたマリー隊長」


「うむ、くるしゅうない」


「なんか、その受け答えは違うんじゃないですか隊長…」


「そう?まあいいじゃない、細かい事は・・・」


キサニャー!貴様!よくも、私を吹き飛ばしおって!」


 猫は真理に飛び蹴りを入れた


「ガシン!」


「痛ったい、何するのよ!」


「シィ!」


 猫はゴーレムを錬成し、真理と猫の戦いがまた始まった、ハイエナ達が集まって見物しだしている


「あの猫、本当に味方かぁ?」


「さあ?それよりどっちに賭ける?」


「お、いいね」


 賭けが始まる中、アッシュが大声を出していた


「トーマスー!おい!誰かオレの連れを知らないかぁー!?トーマスどこ行ったぁ!」


「あわわわ・・・・」


「トーマス!そこに居たのか。どした?」


 トーマスは勇者の屋敷を眺めながらワナワナと震え、叫んだ


「お、俺の家が怪しげな魔窟になってやがるぅ!!」


 勇者はトーマスにに気付いて話しかけた


「あー、貴方の家だったんですか。すみません、状態が良かったので本部として改築してしまいました」


「だからって、このデザインは無いでしょう!」


 アッシュはトーマスをなだめた


「こらこらトーマス、気持ちは分かるが勇者に当たるなよ」


「魔物に作業を任せていたので…なんかすみません。あ、でもまだ作業したばかりだから、もしかしたら元に戻せるかも」


「そうか!内装がまだ無事なら外装がこんなんでもどうにかなるかも!」


「じゃあ、中に入りましょうか・・・」


 勇者は屋敷の扉を開けた


「ギィィ…」


「モクモクモク・・・・」


 中はモクモクと紫色の甘い香りのするお香が立ち込めていて・・・


「フフフ…、ヨク来タ、人間ヨ。サア、世界ヲ賭ケテ、雌雄ヲ決ッシヨウデハナイカ…」


 奥の玉座に座った魔物が不敵な笑みを浮かべていた


「おい、そこ親分の椅子だぞ。遊んでねぇで降りて来いよ」


「ゴメン、モウスコシ。マオウゴッコ、タノシイ」


「まったく…もしこんな所を誰かに見られたら・・・・あっ」


 中でサボっていた魔物達は、中に入って来ようとしていた勇者達と目が合い固まっている


「・・・・・」


「バタン!」


 勇者は無言で扉を閉めた


「なんか、ごめんなさい」


「いいえ、勇者様…おかげでスッパリと諦めがつきましたよ」


 勇者は話を切り替えた


「ところで、貴方たちが王国から派兵された兵士さんですか?随分少人数なんですね」

 

「いえ、俺達はその…脱走兵でして。危ない所をマリー様に助けられてここに」


「ああ、アレクシスさんと同じですか」


「アレクシスの野郎が先に来てるんで?」


「はい。あれ?どこ行っちゃったんでしょう…すぐそばに居たのに」


 勇者は辺りをキョロキョロしていると戦っている真理達が目に留まった


「なに?ぶっ飛ばされたこと怒ってんの?おかげで早く目的地に着いたでしょうが!」


「ニャアァ!」


 真理は猫の操るゴーレムと殴り合っていた。そこに・・・


「この泥棒ネコ!この場で亡き者にしてくれる!」


 アレクシスが飛び込んでいた


「あ!北門のゆうとの部屋番!」


「にゃう?」


「加勢しますよアマンダ様、あの時の借りはきっちりと返させてもらいま・・・」


「えい!」


 真理の杖による突きがアレクシスに決まった、アレクシスに21ダメージ


「ごふ!また強くなっ…て・・・がくり」


 アレクシスは倒れた


「おい、誰かこの馬鹿を運び出してくれ!」


「御意!」


 アレクシスはハイエナ達に回収された、それを見た勇者は一言


「賑やかになったなぁ、ずいぶんと」


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