第72話 真理、武器屋へ行く

「いたたた…クゥーぅぅ、エルフ基準で耳作りやがったわねクソ魔女、しかも猫耳と普通の耳を合わせて計4つ!冗談じゃないわよ」


 会議室を抜けだして廊下を歩く真理の前に猫が現れた


「ニャー!」


「ん?何よアマンダ」


「ニャ!ニャ!」


 猫は抗議するように暴れている


「もしかして勝手に会議室を出た事に抗議してるわけぇ?行けって言ったのはアンタでしょうに」


「ニャ!」


 猫は”そうだ”と言いたげだ


「うるさくて、居られなかったのよ!腕2つでどうやって4つの耳を塞げって言うのよ!」


「にゃ~…みっ」


 猫は”あ~”と考えた後に”てへ”と言った感じでジェスチャーした


「てへっ…ってとぼけるんじゃない!もしかしてワザと?ワザとこんな作りにしたんじゃないでしょうね!?」


「みっ!みっ!」


 猫は否定する様に首を横に振る


「はぁ…胸の前にコッチの改良が必要ね・・・」


 城から出たマリーは衛兵に声をかけられた


「お帰りですか、マリー様」


「そうよぉ、ポチィー返して」


「はっ!少々お待ちを!」


 しばらくすると兵士に連れられてポチィーが現れ、真理の元まで駆け寄って来た


「ワンワン!」


「よしよ~し、良い子にしてた?」


「ワン!」


 ポチィーは元気そうだ


「アマンダ、馬車貸してもらえる?出発する前に寄りたいところが幾つかあるから」


「みみっ!」


 猫が真理の言葉に応える様に鳴いた後、アマンダの使い魔に引かれた馬車が現れた


「ガラガラガラ…」


「ありがと、よいしょっと」


 真理とポチィーは馬車に乗った


「まず武器屋に行ってちょうだい、試したい事が有るの。その後に北門近くの道具屋へ行って、ゆうとが売ったアイテムが換金されているはずだから回収したいの」


「ヒヒ~ン!」


「ガラララッ!」


 真理は武器屋にたどり着いた


「いらっしゃい…お、あの時の嬢ちゃんか」


 中に入ると親方がカウンターに座っていた


「ど~もぉ、樽男いる?」


「樽男?」


「あたしの棒を調整した男の事なんだけど、試験場でずっと樽の中に隠れてたから」


「ブルーノ小僧の事か!ハハハハ!待ってな。おい小僧!ご指名だぞ!」


「ダタタタ・・・」


 奥から駆け寄ってくる足音がし、樽男が現れた


「は、はい親方!あ、貴女は!?」


「やっほー樽男、ブルーノって名前なんだって?ちょっと相談したい事があるんだけど」


「は、はい!なんでしょうか?まさか調整に不具合でも!?」


「ちがうわ、ちょっと変わった仕込み杖を作ってもらいたいんだけど…実際に作れる物なのか聞きたくて」


「仕込み杖ですか?どういった物なのでしょう」


「えーと、紙ある?」


「はい、こちらの物を使ってください」


 真理はブルーノにどういった構造の杖か、紙に書きながら説明した


「これは・・・」


「どう、作れそう?」


「何とも言えませんね・・・この構造でちゃんと機能するかもどうかも」


「簡単な物なら中学生の時に同級生が作ってたんだけどねぇ・・・まあ、この世界には無さそうだし。素材はこの銀の燭台と銀貨を使ってもらいたいんだけど、あまった銀はあげるわ」


 真理はひん曲がった銀の燭台と5000シルバーを渡した


「ちょっ!さきほども言ったように作れるか分かりませんから!ちゃんと機能するかテストさせてください」


「急いでるから手短にね」


「大丈夫です、銅で代用できるはずですから。先に試験場に行っててもらえますか」


「わかったわ」


 真理とブルーノは試験場で簡単な試作品を作りテストした


「バチン!」


「ポロッ…」


 電撃が流れたと同時に試作品からポロッと金属片がこぼれ落ちた


「あれ、失敗?いいアイデアだと思ったんだけど…うーん」


「電流を流す瞬発力が足りないのでしょう。電力が伝わる様もっと長いく作って・・・貴女の魔力制御が上手くいけば・・・もしかしたら」


「あたしの練度不足も関係してるのね、どうしよう」


「やめますか?」


「いえ、止めないわ、失敗しても普通に杖として使えばいいだけだし。お願いできる?今手持ちが少ないから後払いになっちゃうけど」


「ええ、構いませんよ。私もこの武器に興味が沸きましたし、理論上可能と言う事もわかりました。ぜひやらせてください」


「そう?ありがとうね」


「では、上で魔力検査をした後、依頼書に記入してください。お渡ししたいものがありますし、その調整も済ませておきます」


「渡したいモノ?」


「練習に使えそうな杖が有るので、なるべく完成品と同じサイズの物で練習してもらいたいんです」


「お、気が利くじゃない!じゃあさっそく上へ行きましょう」


「あ、まってくださいよ!」


 真理は依頼書に記入しブルーノから杖を受け取った


「はい、この杖は私からのサービスです」


「ありがと、じゃ、急いでるから」


「はい、またのお越しを」


 真理は武器屋から出て行った。疑問に思った親方がブルーノに話しかけた


「なんだ?ゴタゴタしてたが、安物の杖を買いに来ただけだったのか?」


「いえ、アレは練習用ですよ。親方、銃の資料はどこにありましたっけ?」


「銃!?銃依頼しに来たのかアノ嬢ちゃん。火薬はどっから・・・貿易はもう機能してねぇぞ」


「その辺は問題ありません。親方資料を」


「やけに嬉しそうだな。二階の3番書庫にあるはずだ、作るのはなんだ?マッチロック、フリントロック、ホイールロック…なさかパーカッションか?」


「いえ、できるだけ撃ちやすいデザインにしたいだけなので発火装置は関係ありませんよ。それに火薬は使いませんし」


「火薬を使わない?なんじゃそりゃ、空気銃か何かか?」


「電気が生み出す磁場で弾を加速させ発射する・・・電磁投射式銃レールガンって言うそうですよ」

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