第64話 勇者・・・じゃない!?
農村跡地を町に発展させるため木材の採取にはげんでいた勇者
「ふう、枝は大体切り終えましたね」
「はい、親分!後はこの丸太を持って帰るだけです。おい野郎共!ここからが正念場だぞ」
「へい!いっせーのっ!」
ハイエナ達が数人がかりで丸太を担ぎ運んでいく、それを見た勇者は
「えっほ、えっほ」
「時間がかかりそうですね」
「ええ、今日中に全部運ぶのは無理ですね。残りは明日になると思います」
「そうですか、よっと」
勇者は丸太を持ち上げた
「お、凄いですね親分!親分が手伝ってくれれば今日中に運べますね」
「紋章によるレベルアップの影響でしょうね。うーん・・・そうだ。丸太をこっちに持って来てくれませんかー!」
勇者は丸太を運んでいるハイエナ達を呼んで自分の前に立たせた
「ここに立っててください、あ、手前の人は少しかがんで」
「こうですか?」
「はい、そのままの姿勢でお願いします」
ハイエナの一人が勇者の行動に疑問に思い、勇者に聞いた
「ユート親分、何をする気なんですか?」
「ちょっと試したい事が有りまして、いきますよ!」
―――その頃、農村で作業をしていたハイエナ達
「バサバサバサ・・・」
「なんか、森が騒がしくないか?」
「木材を調達しに行った連中だろ、こっちも早く柵作っちまおうぜ」
「そうだな。まず、ここら辺に杭を・・・」
ハイエナが柵に使う杭を地面に突き立てようとした、まさにその時・・・
「ボオォン!」
自身が打ち込もうとしていた杭よりも数百倍はあるかと思える大きな杭が、衝撃波と土煙と共に足元から現れた
「これは・・・一体?」
森にむかって斜めに伸びるそれは、杭と言うには余りにも長く、太く・・・・と言うより、切り倒された丸太そのものだった
「バカ!早く逃げろ!」
「え?」
放心状態になっていたハイエナは仲間の呼びかけにもうまく反応出来なかった
「…・・・ヒュゥゥゥゥゥウウウ、ボオォン!」
巨大な何かが飛んできて地面に突き刺さった衝撃で、放心状態だったハイエナは我に返る
「なッ…なんだ!?」
―――森の勇者は
「やりましたね親分!見事アジトに飛んでいきましたよ!」
「でも飛びすぎでしたね、誰かに当たってないといいんですが・・・」
「アイツらだってバカじゃありません、こんなデカいもんが飛んで来たら勝手に逃げるでしょう。さあ、この調子でバンバン飛ばしちゃってください」
「いいんですか?じゃあ、次いきますよ!」
「「へい!」」
勇者はなるべく手ごろな太さの丸太の端を両手でしっかりと掴み・・・
「チャァ・・・」
ハイエナ達が持ち上げてる丸太に向かって・・・
「シュゥ・・・」
スキル、ヘビーアタックを使用し・・・
「メン!!」
野球のバットの様に打った!
「ガァーンッッ!」
打たれた丸太は勢いよく農村に向かって風を切りながら飛んでいった
「ビュウウウウウゥゥゥゥゥ・・・……」
「良い音だ!ありゃもっと飛びますぜ親分!」
「でも、その奇妙な掛け声はなんです?」
「ゴルフなんかだとこう言ってリズムを取って打つと、球がよく飛ぶと聞いた事が有りまして」
「へー、ゴルフってのがどこの国だか知りませんが、面白い掛け声ですね」
「親分!次の準備が出来てます!いつでもどうぞ!」
「よーし、いきますよ!チャー、シュー、メン!」
勇者は再び丸太を飛ばした!
「ガァーンッッ!」
―――農村跡地は大騒ぎになっていた
「うわぁぁぁぁぁぁぁ!なんだ!?敵の襲撃か!!」
「こんな攻撃する魔物なんて聞いたことねぇぞ!どこのどいつだ!?」
逃げ惑うハイエナ達に警備担当のハイエナが駆け寄ってきて大声で叫んだ
「大変だあぁ!!」
「見りゃあ分かるよ!!!」
「…・・・ヒュゥゥゥゥゥウウウ、ボオォン!」
逃げ惑うハイエナのツッコミと共に丸太が警備担当の隣に突き刺さった
「うわ!別動隊の攻撃か!?」
警備担当のセリフにハイエナ達が反応した
「別動隊・・・やっぱり敵の襲撃か!?」
「ああ!ババルの野郎がまた仲間を連れて攻めて来たんだ!それで親分が・・・」
「…・・・ヒュゥゥゥゥゥウウウ」
―――ほんの少し前、森の勇者は
「じゃあ最後の丸太を打ちますので、僕が振ってた丸太は皆さんで運んでください。僕は飛んで帰りますから」
「御意、そう言えば飛べるんでしたね。あっちの指揮をお願いします」
「はい、いきます!」
「「へい!」」
「ガァーンッッ!」
勇者は丸太を打って飛ばし ”女神さまがデバックしてくれたおかげか、強くなった今の僕がどれくらいの能力があるのか手に取るようにわかる!” と思いながらスキル、ハヤブサで加速しながら飛ばした丸太に向かって走り
「ダダダダダダッ!」
飛行スキルを使ってジャンプし
「とう!」
飛んでる丸太の上に飛び乗った
「飛ぶってそっち!?」
勇者は下からハイエナのツッコミが聞こえたような気がしたが、あっという間に離れてしまって返事できなかった
「身体を軽くしただけだもんな、スキルが弱くて地面すれすれを飛ぶのが精いっぱいですし・・・うわ!?」
勇者が独り言を言っている間に丸太は農村にたどり着いた
「ボオォン!」
勇者に3ダメージ
「痛たた・・・着地ミスっちゃった」
勇者が落ちた場所の周りに居たハイエナ達が勇者に話しかけてきた
「親分!?どうして丸太の上に!?」
「いやぁ、一度やってみたかったので。僕の飛ばした丸太で誰か怪我しませんでしたか?」
「親分がさっきから丸太飛ばしてきてたんですか!?」
「はい、時間短縮になるかと」
警備担当のハイエナが戸惑いながら勇者に話しかける
「え?丸太・・・親分ずっと森にいらっしゃってたのですか?」
「はい、そうですが」
勇者の答えに警備担当は混乱した
「え・・・じゃあ、ババルが襲ってた人間は誰なんだ?」
「僕の他に人間が居たんですか?」
「マリーの姉御が帰って来たのか!?」
警備担当は戸惑いながらも答えた
「いや…男の体つきだったし…鍋かぶってましたよ?蓋も持ってました」
「僕の他に鍋を装備する人間が?・・・・」
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