第63話 勇者がんばる

 農村跡地を立派な町に発展させるため、ハイエナ達に指示を出した勇者は


「みんな、頑張ってるなぁ。どうしよう・・・建築スキルなんてないぞ僕」


 勇者は暇におちいっている


「あの、わしはもう行ってよいので?」


「今はそれどころじゃねえ!邪魔だからどいてろ!」


 ボランに行く手を阻まれていたババルは、急に蚊帳の外に置かれ途方に暮れている


「では、池に帰らせてもらいますぞ。ユート様また後ほど」


「はい、ババルさんお疲れ様です」


 ババルは去って行った


「とりあえず、素材だけでも集めるか。木を切り倒すくらいなら僕にもできるでしょうし」


 勇者は近くの森に移動した


「ギコギコ…」


「カンカンカンッ」


 森に行くとハイエナ達がナタやノコギリを使って木を伐採していた


「あ、親分。見回りですか?」


「いいえ、僕も木材を集めるのを手伝おうかと思いまして」


「そいつは助かります!でも、人間用の道具なんてありませんよ、大丈夫ですか?」


 ハイエナ達の道具は形がいびつで、人の手で扱えるものではなかった。作りもかなり雑でとりあえず使えればいいと言った感じだった


「僕が使えそうな物は確かにありませんね・・・そう言えば道具扱えるのに、皆さんは武器とか持たないんですか?」


「この手じゃ人間の武器は持てませんよ、作るのが面倒ですし」


 ハイエナはそう言いながら近くにあったツタに爪を引っかけて引き千切りながら説明した


「特に弓なんか弦を引っ張ったら爪で切れちまう。自分の爪や牙が頼りですわ」


「あれ?前の戦闘で矢が飛んできた様な・・・」


「そらぁ、投げ矢でしょう。俺達が狩りに使ってると投てき武器ですわ」


「なるほど。僕の事なら平気です、道具が無くてもなんとかなりますよ」


 勇者はそう言って、直径7cmほどの細い木の前に立ち


「レッツ、クラフト!おりゃ!」


 拳でへし折った


「バキィ!」


「痛ったいな」


 勇者は2ダメージうけた


「当然でしょう親分!なに素手で木を殴り倒してんですか!?」


 勇者は血のにじんだ拳を握りしめ力強く言った


「何を言ってるんです、道具が無い時は手ごろな素材を殴り倒して道具を作るのは常識でしょう。町作り系のゲームをあまりやった事が無い僕でも知ってます!」


「いやいや!聞いたことありませんよそんな事!もしかして俺達に対抗意識を燃やしてそんな事を?あまり無理しないでください」


「次はこの木をぉっ!」


 勇者はさらに太い気を連続で殴り始めた


「ガシ!ガシ!ガシ!ガシ!」


「話を聞いてくださいよ!」


 勇者は10ダメージうけた


「ふむ、このサイズの木は無理か」


「当たり前でしょう!!」


「自分の拳でどこまでの物が破壊できるか試してみたかったので。普通に道具を作るか・・・」


 勇者は大き目な石を拾い、別の石に叩きつけた


「パキン!」


「なかなか、良い感じに割れないな、もう一度!」


「パキッ!」


 勇者が作業している間、ハイエナ達がヒソヒソ話し始めた


「何してんだこの人間・・・」


「もしかして、俺達が知らないだけでこうやるのが人間の常識なんじゃないか?」


「そうなのか!?人間ってそうなのか!?」


 ハイエナ達が話している間に勇者は急に起ち上がって、何かを頭上に高く掲げた


「できた!」


 勇者は”粗悪な石斧”を作り上げた!製作基礎スキルが1上がった


「器用だな人間て・・・」


「では、さっそくこれでさっきの木を・・・ん?樹液がにじみ出ちゃってますね」


 勇者が殴った木は樹皮が剥がれ、傷から樹液がにじみ出ていた


「この臭いは松脂ですね」


「松脂!あの燃料になるヤツですよね。いろいろ使えそうですし集めましょう」


「ガッテンです、オレに任せてください。他の奴らにも集めるように命令を出しますか?」


「はい、お願いします」


「御意!おーい、親分から命令だぞ」


「へーい」


 ハイエナの一部のグループが松脂の収集をはじめた


「僕もこれで、木々を伐採するか。そい!」


「ガシン!ガシン!ガシン!」


「バキッ、バサバサバサ・・・」


 勇者は木を一本切り倒した


「よし、この調子でどんどん行くぞ!」


「ガシン!ガシン!バキ!」


 粗悪な石斧は壊れてしまった


「耐久力が低いな、また作るか」


 勇者は石斧を作り木を切り倒す、作っては切り倒すのを繰り返した。


「待って!親分!これ以上集められても捌ききれませんよ!」


 勇者はハイエナ達に止められるまでに、製作基礎スキルが10になっていた

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