第62話 開拓開始!
目覚めた勇者は朝食の亀スープを飲み、ひと息ついた
「ふう、ごちそうさまでした。スッポンスープは聞いたことありますが亀のスープなんて初めてですよ。クセがありますが中々良い味でした」
勇者の感想を聞いて調理担当のハイエナが嬉しそうに答えた
「ありがとうございます、ユート親分。苦労して煮込んだ甲斐がありましたよ」
食材にされていた亀ババルも嬉しそうにしみじみと言った
「それは何よりですユート様…うんうん」
勇者は困惑してる
「え、あ、はい、お疲れ様でしたババルさん、お身体をお大事に・・・・皆さんは飲まないんですか?」
ハイエナは腹をポンと叩きながら言った
「俺達は昨日食べましたから、あと数日は食べなくても平気です」
「肉食動物って毎日食事するわけじゃないんでしたっけ」
「ええ、後の事も考えて食糧を調達する手段を考えておきたいところですが、この辺りは狩り尽しちゃいましたからね」
「うーん、ここは農村跡なんですから畑を作りましょうか」
「親分の分はそれで良いかもしれませんが、肉しか食えませんよ俺達」
「家畜を育てる必要があるのか・・・うーん」
いかにも武闘派と言った感じのハイエナが悩んでいる勇者に話かけてきた
「親分、そんな先の事より。ここの守りを固めたいんで、指示をいただきたいんですが」
「はい、確かに今はそちらが優先ですね。じゃあ・・・ここから半径100mくらいのところに柵を作ってください」
「地下の守りじゃなく、地上に柵作っちゃうんですか?あんま目立つと他の魔物に襲われますよ」
「あれ、ダメですか。定番だと思ったんだけど・・・」
勇者が悩んでいる隙に、ハイエナ達がコソコソと勇者に聞こえない様に相談を始めた
「おい、バカ!親分の思惑ぐらい察しろ!」
「思惑って?」
「魔物に襲われるってのは言い方を変えれば・・・・獲物が寄ってくるって事にならねえか」
「おお!なるほど、襲ってくるヤツを昨日みたいに返り討ちにすればいいんだな」
「そういうことだ、エサの心配がなくなるぜ」
「へへへ…、一石二鳥だな」
ハイエナ達は不敵な笑みを浮かべている。勇者がハイエナ達の様子に気付いた
「あの、そこで何を相談してるんです?」
「いえ、親分の考えに感服しました。早速狩場を作ってきます!」
「狩場?」
「あ、いえ、守りが優先っていうのはちゃんと分ってますよ、はい」
「?・・・まあいいか。あ、柵を作り終えたら外側に深い溝を掘ってください。敵の足止めになるので」
「御意。しかし親分、溝を掘るのはいいんですが、柵の素材はどっから調達しましょうか?」
「素材か・・・近所の木を伐採して調達してください。僕も手伝いますよ」
「それは助かります、頼りにしてますぜ親分!」
勇者は拳を鳴らしながら柵をどうするか考えていた
「柵か・・・本当なら有刺鉄線が有ればいいんだけど…この世界にあるのかな・・・・」
「親分、有刺鉄線ってなんすか?」
「金属のイバラの様なトゲが付いた針金なんですが、あります?」
「ありませんが、本物のイバラならここら辺の廃墟に生えてたの見ましたよ」
「おお!じゃあ、策を作った後にそれを植えてみましょうか。アサガオみたいに柵に絡んで防御力上がりそうですし、敵が上手くイバラに絡まってくれるといいのですが・・・」
「あー、そう言った目的で使うもんなんですか、了解したっす。ボランさんに頼んで引っこ抜いてもらいますよ。なかなかエグイ事考えますね・・・」
「じゃあ、わしも一族の者に声をかけてきますかな・・・」
そう言って立ち去ろうとした大亀ババルの前を、同じく大きな巨体が立ちふさがった
「おい!こら待てジジイ!逃がすかよ。まだ生き残りが居たのか」
勇者はその巨体に挨拶した
「あ、ボス・・・じゃなくてボランさんおはようございます」
「よう、ユート親分よ。調子良さそうだな」
「ええ、おかげさまで。真理さんはどこです?」
「お前がおかしくなった時に、街に戻っちまったよ、お前を治せるヤツに心当たりがあるって言ってたな」
「アマンダさんの事かな?そう言えば皆さん、この後、兵隊さん達が前線基地を作りに来ると思いますので邪魔をしない様にお願いします」
「兵隊さんって、人間の軍隊が出てくるってのか!?」
「はい、そうです。実はもともとその人達に頼まれてここに来たので・・・」
「それを先に言え!」
ハイエナ達が騒然となった
「今日中にここを発展させたいてそういう事か・・・人間に負けねえ砦にしねえと!」
「こうしちゃいられねぇ、さっさと作業を始めるぞ!」
「縄張りの主導権は俺達にあると分からせてやれ!」
勇者は騒ぐハイエナ達をなだめようとしたが
「あの、やる気になったのは嬉しいですが落ち着いて・・・」
「親分!この寝床に使った家をお住まいにするんですか!」
「は、はい、そうしましょうか」
「じゃあ、親分の家だけでも立派にしねぇと…改築工事に取り掛かるんで下がっててください!」
「あ、はい」
「そこも大事だが柵もだ!ハッタリでもいいから見てくれだけでも立派にしろ!」
「へい!」
勇者は取り付く島もなかった。勇者は ”これくらい必死になるのが普通なのかな?” と思いながら、一言呟いた
「もっと、戦略ゲームとかやってればよかったかなぁ・・・」
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