第61話 勇者、生きのいい朝食に出会う

 バグから回復し農村跡地で目覚める勇者


「う、うう・・・ふう、あー、しんどかった」


「あ!親分、おはようございます」


「おはようございます」


 目覚めた勇者はそばに居たハイエナと挨拶を交わした


「ユート親分、お身体の方はもう大丈夫ですか?」


「はい、でもしばらくは戦闘は出来ないですけど、一週間もすれば回復するそうです」


「そうですか、昨日は俺達が至らないばっかりに無理させちゃいましたからね」


「いいえ、気にしないでください・・・・?」


 勇者は ”グリフォン戦の時かな?でもハイエナ達、至らないどころか戦う気すらなかった様な…賭け事まで始めちゃってたし” と考えていると、ハイエナが勇者に話しかけた


「それじゃあ、少しでも回復を早める為に朝飯にしましょう!一晩じっくり煮込んでおきましたから今頃できているころ合いですよ、あの亀」


「?、はい・・・亀?」


 勇者はハイエナに連れられて外に出た・・・そこには


「グツグツ・・・」


「ウ~…ゥウ~…」


 巨大な土器の中に入れられ釜茹でにされている同じく巨大な亀の姿があった


「あ、親分!おはようございます」


 案内したハイエナが亀を煮込んでいるハイエナ達に怒りの声をあげた


「おはようじゃねえ、ソイツまだ生きてるじゃねえか。親分の朝食はどうする!」

 

「すいやせん!コイツ中々しぶとくて。ほら!もっと火力を上げろ!」


「へい、ふー!ふー!」


「ウッ!ウ~!!」


 火の担当をしているハイエナが炎の中に息を吹き込み、煮込まれている亀がさらに苦しみだした。その光景を見て勇者はハイエナ達に質問した


「あの、その亀は一体?」


「親分の命令でスープにしてる亀ですよ。提案したのはボランですが」


「僕の命令!?」


「ええ、昨日攻め込んで来た亀共を親分の力で返り討ちにしたんじゃないですか。憶えてないんですか?」


「まったく身に覚えが無いんですが・・・えーと」


「ウウゥ~!!タスケテクレー・・・!」


 苦しんでいる亀を見て流石に可哀そうだと勇者は思い、ハイエナ達に命令した


「とりあえず、その亀を出してあげてくれませんか」


「コイツを許すんですか!?」


「はい、事情がさっぱり飲み込めないので・・・しゃべれるみたいですし話を聞こうかと」


「御意。オラ!親分の命令だ、そいつを今すぐ引き上げろ!」


「へい!」


「ゴロン」


 土器の中から亀が引き上げられた。その甲羅に籠った亀をハイエナがどつく


「オラ、親分が話をしたいとよ!甲羅からさっさと出てきやがれ!」


「お、おお~・・・ワシの聞く気になられましたか。ありがたあや、ありがたや・・・」


 亀はそう言うと甲羅から四肢を出し起ち上がり、ゆっくりと頭を出した


「ハイエナを束ねる長よ、改めて名乗らせていただきます。ここより西の池を縄張りとする亀の魔物ボス、ババルです」


 弱々しく細い骨格にシワだらけでたるんだ皮膚のババルと名乗った亀の魔物に勇者も戸惑いながら名乗った


「あ、どうもユートです」


 亀の老人ババルの姿を見てしばらく黙っていたハイエナ達が変な声で叫び出す


「「「お、老いてるぅうーん!?」」」


 ハイエナ達は混乱している


「おい!コイツ本当にババルか!?替え玉と入れ替わってるんじゃないだろうな!!」


「いやいやいや!こんなデカいのが入れ替わったら流石に気づくって!」


「恐怖のあまり急激に老化したのか・・・」


「はぁ!?だからってこんなに変わるもんか?煮込まれる前の面影が全然ねぇぞ!」


 混乱しているハイエナ達に勇者はキョトンとした顔で聞いた


「煮込む前はこんな見た目じゃなかったんですか?」


「ボランと殴り合えるガタイでしたよ!」


 ボランと言う名を聞いて勇者は再び聞き返した


「あの、さっきから言ってるボランってもしかしてボスの事ですか?」


「え?あ、はい前のボスの事です。そう言えば名乗ってませんでしたねアイツ」


「と言うか、まだ本調子じゃなんじゃないですか親分?休まれた方が」


 心配するハイエナの提案を断わり、勇者は今日の目標えおハイエナ達に伝えた


「いいえ、今日中にここを発展させておきたいので。みんなにも色々と手伝ってもらうつもりですがいいですか?」


「おお!ここを本拠地にするんですね。立派な砦にしましょうや」


「将来的には町にするつもりです」


 勇者の話を聞いてババルは勇者にすがりついた


「おお!でしたら、でしたら!我が一族にも手伝わさせてください!ですから命だけは…命だけはっ!」


「は、はい、わかりましたから離れてください!」


「おお!感謝…感謝いたしますぞ。うう」


 ババルは勇者から離れ泣き崩れた。勇者は困惑している


「はぁ…僕は一体何をしたのだろう・・・・」


 困惑する勇者にハイエナの一人がスープを差し出していった


「まあ、働く前に飯にしましょう。腹が減っては戦は出来ませんし」


「朝食ってこのスープですか、ババルさんが入ってた・・・」


「まあ、今は老いててマズそうですが栄養はあると思いますし・・・捨てますか?」


「キョロ」


 勇者はババルが ”捨てないよね?” と目で訴えてきた気がした


「うーん、今まで飲んでた下級兵のスープも得体の知れないものでしたし・・・飲んじゃいましょう!」


「そうですか、ささ、どうぞ」

 

 勇者は戸惑いながらもスープを受け取り・・・


「う、うう」


 勇気を出し一気に・・・


「ゴクッ!」


 飲んだ


「美味い!」


 勇者の全ステータスが一時的に上がった!回復力が強化された

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