第60話 勇者、目覚めの時

 ――――城で会議を行なっている頃、精神世界の勇者達は


「あははは!またっく下等な人間は…アハハハハ」


「女神さま、何を笑ってるんです?」


「ああ、ちょっと下界を見て回っているときに面白い物を見つけまして」


「暇なんですね・・・ちなみに何を見てたんです?」


「プライバシー保護の為、発言は控えさせていただきます。お、そろそろ修復が終わりそうですよ、分割した魂も統合しますね」


「やっと、終わりか…うわ!?」


「グルウウウウウウウゥゥゥ」


 勇者の周りの景色がグルグルと歪み、勇者の中に吸い込まれるように入って行った


「うわわわっわあ!?」


「チン!」


 昔の電子レンジの様な音がして、周りの空間は何時もの何もない女神空間になった


「おお!元に戻った」


「これでもう、起きても大丈夫なはずですよ」


「ありがとうございます、女神さま」


 勇者は女神に頭を下げた・・・つもりだったが精神体なので身体は無かった。女神は笑って答える


「いえいえ、ただまた不具合が起きる危険があるのでしばらく戦闘は控えてくださいね」


「具体的にはどれくらいでしょうか?」


「最低でも一週間ですね」


「一週間!?7日は戦闘禁止!?そんな!」


 狼狽える勇者に、女神は苦笑いしながら言った


「落ちていてください勇者よ、今までが異常だったのです。まあ、今は魔物ですが部下も居るのですし勇者ご自身で戦わなくてもどうにかなるでしょう。しばらく町づくりにはげんでください」


「はぁ…町づくりか、シュミレーションゲームは得意じゃないんだよなぁ」


「まあ、そう言わずに。無事に町を作りあげる事が出来たら私から良い物を上げましょう」


「良い物?」


「パパラッパパー♪」


 ラッパの音が鳴り響き、女神が通販番組の司会の様に語り始めた


「そう、無事に私も納得できる規模の町を作りあげた暁には、この私の聖なる女神像を与えましょう!町に置くだけで、人間の作った物より上質な結界を広範囲に張る事が出来、回復力もアップ!更に悪意ある者のの侵入を探知し攻撃する自動迎撃システム付き!」


「「ワー!ワー!」」


 どこからか謎の歓声が上がった。勇者はきっと天使がサクラをやっているのだろうと思い ”大変だなぁ” と考えながらも実際便利そうなので素直に喜んだ


「おお!でも、それだと仲間にした魔物も引っかかりませんか?」


「町に対する悪意が無ければ大丈夫ですよ。逆に言えば悪意があれば人間だろうが魔物だろうが無差別に攻撃します!まあ、ビリッてくる程度の攻撃なので不慮の事故でお亡くなりになり事は無いのでご安心を、安全装置を解除すれば高火力が出ますが」


「それは良いですね!、使いかっても良さそうですし」


「そしてなんと!全長105mのビックサイズ!」


「「オオー!」」


 また歓声が上がったが今回は勇者も突っ込んだ


「全長105m!?デカすぎでしょう!」


「安心てください勇者よ、下から覗いても下着が見えない様にデザインされています」


「いいえ、そういう事ではなく・・・」


「冗談です勇者よ。ダンジョン攻略に使われるのを防止するために運搬不可能な大きさにしました、迎撃システムフル稼働時の射線を確保するためでもあります。配置する場所はちゃんと確保してくださいね」


「確保してと言われても、大きすぎてどれくらい確保すればいいのか」


「これくらいです」


「「オー!」」


 女神は実物をドーンと召喚し、召喚と同時に歓声も上がった


「これ程ですか・・・これだけの土地を開けておくと町を作る時に不便ですね」


「まあ、そのあたりはうまくやってください勇者よ」


「んー、どうにかやってみます。でも女神さま、随分と気前がいいですね」


「ええ、私への信仰を集めるチャンスかと思いまして。貴方を召喚する際の貢ぎ物の不足分を回収できるかもしれませんし、先行投資ですよ」


「現金ですねー」


「ははは。さあ勇者よ、そろそろ目覚めの時です。目覚めましたらその日の内にある程度町を発展させる事をオススメします、なんでしたらボーナスを出しますよ」


「それってチャレンジクエストって事ですか?」


「ええ、そう考えてもらってかまいません。さあ行きなさい勇者よ!」


 女神は女神像と共に光り輝き消えて行った

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