第59話 勇者を真面目に議論されても困ります
農村跡地に軍を向かわせるために、貴族を集めて会議をしていた・・・のだがエドワルズの発言により風向きが変な方向へ向かおうとしていた
「話を本題に移る前に、皆様に謝らければなりません。ジョージ王様、実は私は個人的に勇者を監視しておりました」
エドワルズのはそう言って頭を下げた。それを聞いた他の貴族はざわついた、王は静かにエドワルズを見つめていた。エドワルズはそのまま話を続ける
「アマンダ殿の例があります。各貴族の助力があったとはいえ十分な儀式は行えなかった事は、ここに居る皆様のご承知の事でしょう、強引な召喚による悪影響があっては困ると思い不敬な行動をとった事を、国王陛下、勇者召喚に協力した皆様方に謝罪いたします」
王はエドワルズに頭を上げる様に言った
「頭を上げよエドワルズ卿、おぬしなりに国を思っての事であろう。皆もそれでよいな」
貴族達は王の言葉にうなずいた
「はっ、ジョージ王様、そして皆様に感謝いたします」
貴族の一人がエドワルズに質問した
「しかしエドワルズ卿、先ほど発言はどういう事だ、勇者に町が作れるとでも?」
「ええ、私の考えが間違っていなければ・・・ですが」
「ほう、聞こうではないですか」
「では、まず召喚した勇者ユートの奇妙な行動についての噂は聞いているかと思いますが、どうですかな?」
エドワルズの言葉に貴族達は頭を抱えながら答えた
「ああ、聞いた事が有るが・・・・棒一本で魔物に立ち向かったり、鍋を帽子の様にかぶっていたとか…、獣の耳をつけた魔物と思われる少女を袋に入れたまま街中を走り回った・・・のは、実際に私自身の目で見てしまったよ…何だったのだアレは」
「私も見た事が有る・・・井戸に飛び込んでいたな。あー、その、こう言っては何だが、本当に大丈夫なのかこの勇者は?」
「こら!それは言わない約束だろう!」
「そんな事は承知の上だ。しかしだな、勇者を不審に思っているのは皆も同じだろう、いい加減ハッキリさせようではないか!どうなのだエドワルズ卿」
エドワルズは姿勢をピンと正し言った
「私の調べでも、今言われた噂はほとんど事実だった。が、勇者は結果を出している、召喚されて一週間もしないうちに農村跡地を制圧し、そこに居た魔物を仲間に引き入れた。そして、今までの奇行も意味ある物だったのではないかと私は考えている」
その発言に会議室が騒然となった
「まず勇者が城を出た後井戸に飛び込んだ件についてでありますが、これは魔物への威圧が目的だったのではないかと」
「威圧?」
「はい、この井戸の前に立っていた人物、ドッペルは後に勇者が捕らえた魔物のスパイであったことが判明しました」
「なんと!では勇者はスパイに気付いていたのか!?」
「しかし何故、すぐに兵士に知らせなかったのだ?」
エドワルズは毅然とした態度で答えた
「騒ぎになり顔を変えられる事を恐れたのでしょうな。当時の勇者の実力ではドッぺルゲンガーには敵わない、それで威圧にとどめた…と。勇者が召喚された初日に城内へ魔物の侵入を許した事も考えれば妥当な判断だったと言えます」
「城への魔物の侵入を許した衛兵にドッペルゲンガーは任せられんか、万一衛兵が返り討ちに合い、入れ替わりでもされたら・・・考えるだけでも恐ろしい」
エドワルズは話を続ける
「後にドッペルの正体を暴く為に使った教会ですが、そこで勇者が書いていた探検の書、これは勇者の能力に関係しているのかと思います」
「能力、勇者に女神から与えられる特別な力の事か?」
アマンダは勇者の能力を知っているので発言した
「勇者が女神から授かったのは特殊な翻訳スキルじゃぞ、教会と何の関係があるのじゃ?」
「翻訳スキル?では私の思い違いであったのか・・・、この教会で女神の声を聞き本に記していたと読んでいたのだが」
アマンダはしばらく考えた後に真理に聞いた
「翻訳…神の声…ふむ、探検の書を無くした時の勇者は発狂せんばかりだの勢いだったな。実際どうなのだマリーよ?」
真理は”うわー、めんどくさい”と思いながらも答えた
「いや、アレは単にセーブしたつもり・・・と言っても分からないか。意味のない物だと思うわよアレは、中身見たけど意味にない文字の羅列だったし。女神とはよく合っているみたいだけど」
エドワルズは真理の話を聞いて声を荒げた
「女神と頻繁に交信をしていると!?ではやはり・・・」
「いや、だから無意味な事しか書いてなかったんだって!もう、どういえばいいのかしら」
シンシアが困った真理を見かねて発言した
「私も探検の書の中身は確認しましたが、マリー様のおしゃる通りデタラメな文字の羅列でした、教会のでお祈りをした後に掻く物ではあるようですが、はたして何の意味があるのかは私にも…」
シンシアの発言に真理は首をかしげた
「シンシア…あんた平仮名読めたの?」
「え?ヒラガナとはなんですか?」
「あたしの世界の文字だけど…読めるから意味がないと分かったんでしょ?」
「いえ?この世界の子供でもかける様なごくありふれた文字でしたが、そんな特殊な文字ではなかったはずですが」
エドワルドは二人の会話を聞いて驚愕し確信した
「それはつまり、翻訳スキルを応用し、読んだ者に意味がない文字と誤訳させるよう暗号化されていたのではないでしょうか!?」
貴族達も騒ぎ出した
「おお!」
「つまり、探検の書には女神の声を暗号化されて記されていたと!」
エドワルズは声高らかに言った
「そうです!これはつまり勇者の奇妙な行動は女神からの導きに従ったものだった証拠ではないでしょうか!でなければ勇者があの手帳に執着する理由がありません!」
「えー・・・」
真理はもうこの国駄目だと確信した
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