第58話 会議って退屈
翌朝・・・
「皆の者、余の急な呼びかけに良く集まってくれた!」
クプウルム城、作戦会議室。そこにこの国の有力貴族たちを王は呼び集めた
「皆に集まってもらったのは他でもない。これより農村跡地の前線基地構築及び勇者救出の為の作戦会議を行う!」
「おお!」
王の言葉に貴族達は驚きの声を上げた
「前線基地の構成、ついに我々も攻勢に出る時が来たのですな!」
「しかし勇者の救出とはどういう…それに城内で爆破騒ぎがあったばかりだというのに」
「静粛に!これからシンシアから詳しい説明をする!シンシア」
「はい、ジョージ王様。皆さま、今知りえた情報をまとめた資料をお配りいたします、事態は急を要しますので資料を見ながらお聞きください」
メイド達が各貴族達に、真理や偵察兵からの情報を基に作られた資料が配られた
「まず北の森の状況ですが、ここ数日の間に大きく変化しておりまして・・・・」
シンシアが貴族達に説明している間、真理は退屈そうにその状況を見ていた
「会議かぁ、王の一存で兵隊を直ぐ出せる訳じゃないのね」
真理の独り言を聞き、アマンダは真理に退屈しのぎに説明した
「ジョージ王も私兵なら直ぐに使えるであろうが、城外の土地を任せていた元領主達を差し置いてその土地を荒らすわけにはいかないからな」
「この貴族たち領主なの?でも元って事は」
「魔物からの攻撃で領地から王の元へ泣く泣く逃げて来た者達じゃな。今のクプウルム王国はそういった権力者達が城下の街にすし詰め状態になっとる」
「うわー、魔物達だけじゃなくて人間関係もヤバそうね」
シンシアの説明が終わり、貴族達からの意見が飛び交った
「グリフォンの暴走により弱い魔物達は散り散りに…確かに、攻勢に出るには今しかありませんな」
「しかし、農村を制圧したとしてその後は?戦線を維持するだけの兵力や物資を回せば街の防御が薄くなる、敵は北だけではないのだぞ」
「本来なら威力偵察の結果を見て、補給路を確保しながら進み前線基地を作るはずだったが。今の情報を聞く限り、ハイエナ達の様な弱い群れがグリフォンから逃げる為に小規模な地下ダンジョンを作っている可能性が大いにある!」
「うむ・・・その様なダンジョンからの待ち伏せを受ける可能性がありますな。そういった攻撃から身を守りつつ補給路を作るとなると・・・」
議論が飛び交ってる中、一人の貴族が手を上げ立ち上がった
「補給路の話をする前に、一つ確認したい事が有る。アマンダ殿」
「お、なんじゃ?」
自分が話題に上がるとは思っていなかったアマンダは、起ち上がって質問を受ける姿勢をとった
「ある噂を小耳に挟んだのだが、アマンダ殿、勇者に威力偵察を依頼したさいに勇者はある条件を出したそうですな…”魔物殲滅できたらそこに町を作る”と、事実ですかな?」
その貴族の質問に他の貴族達がざわついた。アマンダはまずいと思いながらも正直に答えた
「ああ、確かに言っておった」
アマンダの答えに一気にざわつきが騒ぎとなった
「なんと!その提案をアマンダ様の一存で受け入れたのですか!?」
「初めは工房を作るだけのハズじゃったのじゃ!軍の邪魔にならないという条件付きで!私だって止めたが聞かずに行ってしまったのじゃ!」
「だとしても、我々に一言も連絡が無いのはどいう事だ!いまだに狂っておるのか!狂乱の魔女め!」
「やかましい!100歳も超えとらん若造が!私は魔術師で政治屋ではないわ!!」
大混乱となった会議の中、アマンダに初めに質問した貴族が大声を上げた
「静かに!!私が議論したいのはそんな事ではない!!」
「しかし…エドワルズ卿、これはあまりにも…」
「自らの領地をもち領主の座を取り戻す事は我々の悲願、それは痛いほど理解している。だが冷静になって考えてほしい、”町を作る”だぞ、”農村跡から町だ”、村の残骸からどうやって町と呼べる規模まで発展させるのだ?勇者の発言だとしてもバカバカしい話ではないか」
「軍の物資おこぼれ・・・いや、王国からの支援を当てにしたのでは?」
「そうなれば自然と我々にも話が回ってくるだろう、何を騒ぐ必要がある?」
「た、確かに…」
「アマンダ殿もあまりにもバカな話ゆへ、我々に話さなかったのではないかな?町を作るのに必要な物資、そこで働く人、飢えさせないための食糧、それらをどうやって集める?今は農村跡が解放され、皆気が焦っているが、当時の我々なら鼻で笑ったのではないかね。どうなのですかなアマンダ殿」
「うむ、そうじゃ」
アマンダに初めに質問した貴族エドワルズの話に事態が収束した、のだが
「だがもし・・・勇者自身に町を作るための物を集める当てがあるとしたら、話が変わりますな」
「なんじゃと?」
「つまり、勇者様には何か考えが・・・いや、我々の知らない情報を持っていると?」
真理は話が変な方向に流れて行った気配を感じ
「うーん・・・」
この国、本格的にダメなんじゃないかと思い始めていた
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