第57話 王の寝室

 城で爆発騒ぎがあり、自室に退避した王の元に向かう異端の勇者真理とその他達、シンシアは王の部屋の前に立つメイドに話しかけた


「ジョージ王様のご様子は!?」


「シンシア様、一先ず皆様中へ・・・」


 真理達は王の部屋の中に入ったが肝心の王の姿が見当たらない


「ジョージア様はどこに?」


「それが先ほどまでお元気だったのですが・・・何故か寝室に籠ってしまわれて」


「寝室に?お怪我はされていなかったのでは」


「それが事件直前に何をされていたかお聞きしているうちに、恥ずかしがるように顔を真っ赤にした後、急に顔を青くされて・・・どうしていいのか困り果てていたところです」


「まさか毒物…呪いの類では?」


「私共もそれを疑い検査したのですが、そのような類では無いようです。恐らく心因性のものかと」


 長話がじれったかったので真理はシンシア達に話しかけた


「ねぇ、とりあえず寝室に入いらない?こっちも王様に用があるんだけど」


「そうでした。失礼します」


「トントン」


 シンシアが寝室の扉をノックしてから、真理達は寝室の中に入った。そこには布団にくるまって独り言を言っている王の姿があった


「あー・・・…、何故わたくしは、あのようにはしゃいでしまったのでしょう・・・はぁ…虚しいですわ」


「ジョージアどうしたの?」


「い、いえなんでもないの」


 心配して話しかけるシンシアに生気の無い顔で答えるジョージア、真理は王の様子に心当たりがあった


「あの顔は…」


「どうした真理?まさか勇者と同じ症状と言うまいな…」


「いいえ、アレは賢者タイムよ」


 シンシアは真理の言葉を上手く理解できずに聞き返した


「ケンジャタ・・・なんですかそれ?」


「分かりやすく言うと。自分の欲望のまま突っ走った後に冷静になって虚しくなっちゃうみたいな。そんな経験ない?」


「ピクッ」


 ジョージアはピクリと反応した。シンシアは理解した様な態度を取った後に何か感づいてジョージアに聞いた


「あぁー…って、待ってください。ジョージア様、召喚の間で何を祈ってたんです」


「なにって、ユート様達の安全を・・・」


「それだけ?」


「えーと・・・」


 ジョージアは気まずそうに眼をそらした


「まさか寂しいからってユート様を召喚の間に呼び戻そうとしたんじゃないでしょうね?」


 シンシアの言葉に真理は驚き、アマンダに聞いた


「え、そんな事できるのアマンダ?」


「あの場所なら勇者とパスが繋がっているだろうし、理論的にはできない事もないが・・・かなり難度が高いぞ転送系魔術は、専門外と言う事もあるが私でも難しいな」


「やれない事もないんだ…ゆうとが欲しがりそうね」


 シンシアはジョージアに説教している


「ジョージア、またそんな無茶をして!」


「ち、違うわよ!ちょっと…そのただ・・・・」


「ただ?」


 ジョージアはシンシアの視線に耐えきれなくなり、指をモジモジとツンツン合わせながら白状した


「ただ、その・・・将来結婚式を挙げるとしたらどんなのが、いいのか、なんて・・・あの」


 ジョージアはそう言い終わると顔を真っ赤にし布団の中に丸まって悶えた


「忘れてください!忘れさせてください!あーもう!良いじゃないですか、女性なら一度はそんなこと考え事が有るでしょう!?」


 真理は素っ気なく返答した後、表情を変えた


「あたしはないわよ?誰かを結婚させる事はよく考えるけど、どっちにドレスを着せるかとか、ふふふふ・・・・」


「ドレスをどちらかに着せるか?え??」


 真理は不敵な笑みを浮かべている┌(┌^o^)┐


「マリー様の世界では男性用のドレスが存在するのかもしれません。スカートも男性用の軍服から発展したものですし逆もありうるのでは?」


「なるほど、異世界には色んな物があるのですね」


 シンシアとジョージアは勘違いしている。だが真理は妄想していて気づかない


「こらマリー、さっさと妄想から帰ってこんか!勇者が危険なのであろう」


「ふわ!?、あ、そうだったわね」


 真理は正気に戻った


「ユート様が何ですって!?」


 ジョージアも我に返り、真理を問いただした


「ちょっ、慌てないでよジョージア王様!今話すから!」

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