第55話 勇者、休養中

 倒れた勇者をハイエナ達に預けて街に戻った真理


「帰ったわよー、通してぇ」


「ワン!ワン!」


 真理はポチィーと一緒に北門の中に入った。中に入るとゴードンが出迎えに来た


「お帰んなさい、勇者さ…おや、マリーさんだけですかい?勇者さんはどうしたんです、その犬は?」


「ワン、ワン」


 ポチィーは機嫌が様さそうに吠えた


「道中で拾ったのよ。ゆうとはまだ農村跡地に居るわ、無茶したから少し休んでいくって」


「あー、また何かやらかしたんですね。でも勇者さんを一人にして大丈夫なんで?」


「その点は大丈夫でしょ、丈夫だから」


「あ、いえ、勇者さんの体調の事も心配なんですが、野放しになってると何するか・・・」


「まっ、そこら辺は諦めるしかないでしょ」


 ゴードンは引きつった笑い浮かべている


「ハ、ハハハ…大丈夫とは言ってくれないんですね…。あ、頼まれていた鍵、マリーさんのだけでも渡しておきますね、高価なもんなんで無くさないでくださいよ」


「ありがと」


 真理は箱の鍵を手に入れた


「ねえ、アマンダから受けた仕事が終わったから報告したいんだけど、使い魔居る?」


「ワウ、ワウン?」


 ポチィーは何故か首をかしげている


「威力偵察任務の事ですね。俺が聞きますよ、どうでしたか」


「アマンダに直接報告したいのよ。ちょっと事情があってね」


 ゴードンは硬い表情で真理に質問した


「・・・・それは、勇者さんが居ない事と関係があるで?」


「はぁ、流石に分かっちゃうか、その通りよ」


 ゴードンは頭をかきしばらく考えた後、返事をした


「・・・・わかりました。使い魔を一匹捕まえてきます」


「おねがい、出来るだけ早くね」


「了解です」


 ゴードンが去りしばらくすると猫を一匹抱いて真理の元まで連れて来た


「にゃあ、ニャニャ」


 アマンダの使い魔の猫はゴードンの手から離れると、真理に手招きするような動作をした


「話はつけてあるんで、そのまま猫について行ってください」


「あるがと、ゴードン。案内してアマンダ」


「にゃ」


 猫は返事をすると走っていき、真理は猫を追っていった


「ゴードン隊長、威力偵察の報告内容はどうでしたか」


「ん、ああ、それがな・・・」


 真理が去った後、部下が勇者が戻って来たことを知り威力偵察の内容をゴードンに聞いてきた。歯切れの悪い返事のゴードンに部下は再び聞き返す、ゴードンは誤魔化すことにした


「どうしたんです?勇者が帰って来たのでは?」


「そうなんだが、報告内容が抽象的でな…らちが明かないからアマンダ様の所に行かせたんだよ」


 部下はゴードンの説明に納得した様だった


「あー、勇者さん達は軍人や冒険者って感じじゃなかったですからね」


「そうそう、報告任務は初めてなんだとさ」


「ハハハ、それは仕方ないですね。やっと故郷の村を解放できるかもと思ったんですが・・・」


「そうクヨクヨするな、詳しい話は後で上から来るだろ。それよりもコック長をどうにかいないと・・・」


 ゴードンが暗い顔の部下の肩を叩き慰めてながら一緒に持ち場に戻ろうとしたその時、独房の方から衛兵の叫び声がした


「大変だぁー!独房のコック長が中で料理し始めたぞー!げほげほ!」


 独房から黒い煙が上がっている


「ネズミでも捕まえたのかぁ!?どんな料理が出来るか分からん、止めに行くぞ!」


「了解!」


 ゴードンは部下と共に独房の鎮圧に向かった

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る