第52話 恋路を神頼み?自力でやってください!By女神

 レベルの上げ過ぎで倒れてしまった勇者は女神の助けにより一命を取り留め、今自身のデバック作業をしていた・・・・のだが


「わたくしと教会に行きますか?」


「あれ、さっきの呟きに反応しちゃったのか。じゃあ今度は…最初いいえを選んだから、はいで」


 > はい

  いいえ


「カーン・・・カーン・・・・」


 どこからか教会の鐘の音が響いた


「そうそう、確かあの時も教会にセーブしに行こうと、王様に案内してもらおうとしたら、正午を告げる鐘が鳴って・・・・」


 辺りはは、まばゆい光に包まれた、そして・・・


「ぉ…と、おめ・・・でとーーー!」


「え?・・・ええ!?」


「パチパチパチパチ!」


 歓声と拍手が響き、勇者はいつの間にか教会の中に居た


「どうしたのです?ユート様」


「え?ジョージアさん??え」


 ジョージアがウェディングドレスを着て勇者の隣に立っていた


「さあ行きましょう」


「ちょっとっ待ってください!え!?」


 ジョージアが勇者と腕を組み、神父が待つ教会の祭壇の前にむかってゆっくりと歩きだす、勇者は逆らえなかった


「あ、くそっ、イベント中だから自由に動けない。女神さま!なんかデバック中に没になったイベントが始まって動けなくなってるんですけど!どうなってるんです!?」


「申し訳ありません勇者よ、ひとがデリケートな作業をやってるというのに、下界から強い祈りを飛ばしてくる不敬の輩がいまして、その祈りの影響を受けている様です」


「祈り!?」


 ――――下界の不敬の輩ことジョージア王の様子は・・・


「ムフ・・・ムフフフフ・・・・」


「ど、どうされました!?ジョージ王様!」


 ニヤついているジョージアを不審に思い、神官は祈っている王に声をかけた


「ムッ…いや、すまない。祈りにタダならぬ手ごたえを感じてな」


「祈りに手ごたえ…でございますか?」


 ――――精神世界の勇者はどうにか抵抗しようと足掻いている


「いやだー!まだボスを一体しか倒して無いのに次の世代に託すなんて!僕はもっと冒険したいんだー!」


「落ち着いてください勇者よ!いま何とかしに行きますので」


 女神は頭上に”離席中”とアイコンを出してから動かなくなった


――――勇者の精神世界から出た女神はバキバキと拳を鳴らす


「神の邪魔をした罪は重いですよ・・・」


「パキ…バキ・・・」


――――下界の王は、祈りに違和感を感じ


「む!手ごたえが弱まったか…ええい!させんぞ!」


 ジョージアは高ぶった煩悩を祈りに乗せ、力いっぱい祈った


――――精神世界の勇者は、動かなくなった教会イベントの世界で立ち尽くしていた


「女神さまが離席中になってしばらくしてから、みんな動かなくなったな・・・女神さまが上手くやったのかな?このまま待っていればその内に・・・・」


「さ、あ、イキましょう、ユート様っ」


 世界はまた、ぎこちなく動き出した


「また動き出した!?」


――――天界の女神は苦戦していた


「くっ!恐るべきは人の煩悩ですか。ええい!汚らわしい!」


 女神は息を切らせながらもジョージアの祈りの妨害を行っている


――――下界の王が祈りを捧げている女神像がある召喚の間に強烈な圧迫感が広がっていた


「ゴゴゴゴゴゴゴ・・・・・」


「うぐっ!まさか何者かが余の祈りの邪魔をしているのか!?」


「何ですと!?まさか魔物が・・・」


「負けんっ、負けんぞ!余はこの祈りを成就させるのじゃぁあ!!」


「ジョージ王様!お手伝いいたします!」


 神官は王と一緒に祈りを捧げた


―――――天界の女神はさらに苦戦する


「うっ、何をするのだ神官げぼくの分際で!貴様はそこで寝とれ!」


――――下界の神官の腰に激痛が走る


「うぶぅっつ!神の祝福で治ったはずの持病の腰痛があ!!」


 神官は倒れた


「神官!おのれぇ、なんて強力な魔力だ…だが!」


 ジョージアは負けじと強く祈りを捧げる


「フォオオオオオオオオおおおう!」


――――精神世界の勇者は・・・イベントが進んで神父の前まで来てしまっていた


「なんじ勇者ユートはジョージア・クプウルムを愛すると誓いますか?」


 >はい

  いいえ


「いいえ」


 勇者は迷いなくいいえを選択したのだが・・・


 > いいえ


「なんじ勇者ユートはジョージア・クプウルムを愛すると誓いますか?」


 >はい

  いいえ


「いいえ!」


 > いいえ


「なんじ・・・・」


 > いいえ

 …> いいえ

 ・・・> いいえ


「あ、ダメだ、ループしてる」


 勇者に選択肢はなかった


「なんじ勇者ユートはジョージア・クプウルムを愛すると誓いますか?」


「仕方ないですね、はい」


 > はい


――――下界の王は祈りに手ごたえを感じ歓喜の声を上げる


「キタアアアアアアアア!」


「ピシッ」


 女神像にヒビが入り神官は絶句した


「女神像にヒビが!?」


――――天界の女神は舌打ちをし魔力をさらに高めようとしている


「ちっ!貢ぎ物すらまともに用意できない王に勇者を渡すものかぁああ!!」


――――下界の王の前のあるヒビの入った女神像が神々しい光を放ち始めた


「おお!女神像が光を!神が応えてくださっているのか!?」


「ピカアアアァァァァァァッッ」


 神官は喜んでいるが、女神が力を使っているのはもちろん王の妨害のためである


――――精神世界の勇者は・・・


「では、誓いのキスを・・・」


「ユート様・・・」


「ジョージアさん・・・」


 結婚式がキスする所まで進み、勇者は”ああ、このままエンディングまで直行か”と下からテロップが流れるのを覚悟したその時


「…・・・ヒュッ!」


 上から何かが落ちてくる気配を感じ


「あ」


 顔が赤くなり、キスを待っているジョージアの頭の上に


「どうかなさいましたか?ユート様…ぐぅ!」


「ゴォン!」


 タライが落ちた。ジョージアはそのまま気絶してしまった


「ふぅ・・・間一髪でしたね勇者よ」


 女神がまた動き出して勇者の前まで歩いてきた


「あ、女神さま。まだ離席中のアイコンが出たままですよ」


「あら、いけない」


 女神はアイコンを消した


「さあ、早くここを出ましょう勇者よ」


「はい」


――――その頃、下界の王達は・・・・


「ピカァァァァッ・・・・・ドオォォォォォォン!!!」


「うっ・・・うう…」


「お、おのれぇ・・・」


 女神像の謎の爆発によって倒れた


「わたくしは絶対・・・絶対にあきらめませんからねぇーー!!」


 素に戻ったジョージアの叫びが城に虚しく響いたのだった


「ニタァ」


 爆発して粉々になった女神像の顔は、こころなしか笑ってる様に見えた

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